09 9/11 UPDATE
歌手として、女優として、そして母親として、現在フランスで最も有名で最も愛されている女性といえばこのジェーン・バーキンだろう。
1960年代末のスウィンギン・ロンドンから映画のオーディションのためにパリにやってきて、その街にすっかり愛されてしまったファム・ファタル。今となってはその知名度を例えるために、かつてエルメスが彼女のために"バーキン・バッグ"を作ったというエピソードを持ち出すまでもないだろう。
あらゆる点において常に自然体で考え、行動する彼女は、今や歌手や女優、監督という活動の一方で、人権活動家として世界に知られるようになった。ミャンマー軍事政権下で軟禁されているアウンサンスーチー女史にかつて接見したジェーンは、彼女のために『アウンサンスーチー』という曲を作詞した。この曲は2年前のコンサートのステージで初めて披露され、「アウンサンスーチーさんは亡くなって、彼女の肖像はよく売れるTシャツのデザインになることでしょう...」という鮮烈なメッセージは大きな衝撃と共感を呼んだのである。
この曲だけにとどまらず、昨年末に発表されたアルバム『冬の子供たち』では、全ての曲を自ら作詞をしたジェーン、これは彼女の新しい音楽との向き合い方かもしれない。今回のコンサートで披露されるのはもちろんこのアルバムの曲が中心ではあるが、それ以外のほとんどは彼女にとっての最愛のパートナーにして、プロデューサーであったセルジュ・ゲンスブールそのものである。彼を亡くしてからもう18年の歳月が経ち、今やセルジュの歌と精神を歌い継ぐただひとりの歌手となったジェーン・バーキン。
この春、彼女の口から出た「私のそばにはいつもゴーストが見守っている」という言葉が印象的だった。そんな彼女の久しぶりの東京でのステージに、どうぞ足を運んでほしいと思う。
Text:Shoichi Kajino
ジェーン・バーキン来日公演
「冬の子どもたち」
Bunkamura オーチャードホール
2009年9月17日(木)、18日(金)
開場18:30 / 開演19:00
[問]チケットスペース
Tel.03-3234-9999
© Kate Barry