10 5/20 UPDATE
The Neptunesと決別して制作された前作『Kelis Was Here』(06年)もそこそこの成功を収めたKelisが、今度はWill.i.am主宰のレーベルから、最新アルバム『Flesh Tone』をリリースした。
99年にリリースされた、The Neptunesプロデュースによる1stアルバム『Kaleidoscope』から前作『Kelis Was Here』まで、毎回毎回、当時最先端のプロデューサーと上手いことタッグを組んで、万華鏡のごとく自身の音楽性を変化させてきた彼女だが、今作でも、Boys NoizeやBenny Benassiなど、現在「旬」のプロデューサーをラインアップ。当初はDiploやSwitchも参加予定だったらしく、今作のプロデューサーの顔ぶれを見渡してみると、エグゼクティブ・プロデューサーWill.i.amの最近の音楽的嗜好が作品に色濃く反映されていることが創造出来る。で、本作は、プロデューサー陣を見ての通り「エレクトロ・ハウス色強め」ではあるのだが、単にエレクトロを持ち込んだやや時代遅れのエレクトロ・ポップではなく、最先端のダンスミュージックとしても充分機能し得る曲が本作には収められている。
Boys Noizeプロデュースによる2曲目"22nd Century"では、Boys Noizeだけに攻撃なエレクトロ・サウンドで仕掛けてくると思いきや、淡々としたドラムを下敷きに徐々にシンセ音を被せてビルドアップしていくプログレッシブ・ハウス風のトラックとKelisのクールで癖のある歌声が融合。またDavid Guettaプロデュースによる6曲目"Scream"では、現在のダンスミュージック・シーンを席巻しているダーティ・ダッチ風のトラックとKelisの淡々とした歌が見事にシンクロ。
人によっては、『The Fame』でエレクトロ・サウンドを取り込み、商業的にも大成功を収めたLady Gagaの路線にKelisも乗っかるのか、と考える人も確かにいると思う。しかしながら、本作をよくよく聴いてみた時に、音楽的にはKelisの方がエッジでクール、と感じる音楽ファンは意外と数多くいるのでは。
先見の明に富んだ、というか世渡り上手なKelis。常に実験的なサウンドと自身の歌との融合を追求してきた、実に彼女らしい作品である。
Text:Kohei Onuki
KELIS『FLESH TONE』
2,200円[税込]
レーベル:UNIVERSAL INTERNATIONAL
発売中