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ダブステップを始めとするベース・ミュージックは本来、クラブなど音響設備が整った場所でプレイされた時に始めてその威力を発揮するものであり、イヤフォンやベッドルームなどで聴いてもその良さは半減してしまうものだ。しかし、ウェスト・ロンドン出身の若手アーティスト、シルキーが作り上げた「City Limits Volume 2」はその既成事実を見事に打ち破っている。
スクリームやベンガといったシーンの代表アーティストとの交流が深く、アルバムでも全編通してダブステップ・マナーに乗っ取ったリズムで構成されているものの、シルキーの音楽が彼らや他のダブステップ・アーティストのものと決定的に異なるのは、その多彩な上音にある。現在のクラブ・ミュージックの世界では音数が少なくメロディを持たないトラックを良しとする風潮があるが、シルキーはそのような固定概念にとらわれず、自身の多様な音楽性を惜しみなく披露している。
アーバンなリズムにジャジーでコスミックなシンセサウンド、と表現するとフライング・ロータスを想像されるだろうが、シルキーの音楽はよりタイトでスタイリッシュだ。よれることなくクオンタイズされたリズム、また耳障りとなる一切の音が排除された艶やかな楽曲はどこかスマートさまで感じられ、クラブよりもむしろラウンジやベッドルームなど、リラックスした空間で映えるものだろう。
ジェイムス・ブレイクは自らの歌声を乗せることで、ダークでヘビーというダブステップの印象を根底から覆したが、シルキーはインストゥルメンタルでそれを成し遂げている。今作「City Limits Volume 2」は進化し続けるベースミュージックの新たな側面を提示しているようだ。
text: honeyee.com
Silkie「City Limits Volume 2」
2,415円[税込]
PCD-93418
発売中
P-VINE.Inc