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稀代のベーシスト、ジャコ・パストリアスのデビュー・アルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」は、それまでリズム楽器としてしか認識されていなかったベース・ギターにソロ楽器としての可能性を新たに見出し、当時のジャズ/フュージョン・シーンに多大な影響を与えた、音楽史に毅然と輝く大名盤である。その後、直接的、間接的にジャコの影響を受けたベーシストは後を絶たなかったが、誰しもその卓越した技術、オリジナリティを超克することはできなかった。しかし、20年以上の時を経て遂にそれを凌駕し得る才能が現れたのだ。
"サンダーキャット"、ステファン・ブルーナーは超エリート音楽家族のもとに生まれ育ち、15歳から本格的にそのキャリアをスタートさせると、スヌープ・ドッグやエリック・ベネイといったトップ・アーティストのツアーやレコーディングに参加。現在は西海岸のカリスマ的ハードコア・バンド、スイサイダル・テンデンシーのベーシストとしてその手腕を見せつけている。
満を持してというべきだろう。サンダーキャットがリリースするファースト・アルバム、"ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプス"はまさに衝撃的な作品だ。まず驚かされたのは、その超人的な演奏技術。手数が多く、音の粒が立ったベース・ラインは、まさにジャコ・パストリアスの系譜を受け継いだかのようなスタイルだ。さらにそれが、フライング・ロータスがプロデュースを手がけたコズミックなトラックと相まって、かつて体感したことのない唯一無二の世界観を醸し出している。
エリカ・バドゥやオースティン・ペラルタ、ドリアン・コンセプト、ミゲル・アトウッド・ファーガソンらも彼の才能に惚れ込み、客演として参加している本作。またソウル・ジャズの伝説的キーボーディスト、ジョージ・デュークのカバー「For Love I Come」は既に各地で話題となっており、この作品への注目度の高さが伺える。長らく停滞したニュー・ジャズ/フュージョン・シーンに新たな潮流を作り出す大傑作アルバムだ。
text:honeyee.com
THUNDERCAT「The Golden Age Of Apocalypse」
2,000円[税込]
BRC-302
Brainfeeder/Beat Records
8月6日発売