honeyee.com｜Web Magazine「ハニカム」

コミック・マニアで趣味はウィキペディア。伝説のネオレイヴ・バンド、テスト・アイシクルズやライトスピード・チャンピオンといった名義で活動を続けてきたデヴォンテ・ハインズは、そのユニークなキャラクターと、清々しいまでのナードぶりで、あらゆるメディアに登場しては話題となってきた。

ビリー・アイドルやYMOといったアーティストからインスパイアされスタートした新たなプロジェクト、"ブラッド・オレンジ"のデビューアルバム「コースタル・グルーヴス」では持ち前のソング・ライティング力とユーモアを存分に活かし、メルヘンチックでグルーヴ感のある独自の世界観を切り開いている。

ナード・ロック全開の一曲目「Forget It」でスタートしたかと思えば、続く二曲目「Sutphin Boulevard」ではファットなベースと荒々しいドラムスが効いたダウンビート・ディスコな楽曲を披露。奇想天外な展開を見せるアルバムだが、どこか気の抜けたテンションと浮遊感溢れるメロディ、そしてファンキーなグルーヴが一貫してアルバム全体を包み込んでおり、ハインズの底知れぬ音楽的な懐の深さとセンスの高さを感じさせる。

ロンドンの超名門インディー・レーベル、ドミノ・レコーズからリリースされるということからも、一筋縄ではいかない、ただのオタクが作った音楽で終わるはずがないことがうかがえる今作。強烈な個性が光る良作デビュー・アルバムだ。


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