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ティナリウェンというバンドの存在を知ったのは、2005年にUKでリリースされた"Help: A Day In The Life"というチャリティーコンピレーションアルバムがきっかけだ。当時はレディオヘッドやブロック・パーティーの新曲を目当てに購入したのだが、収録されていた"Cler Achel"という楽曲にはまさに度肝を抜かれる思いだった。独特のグルーヴを醸し出すギター・リフとパーカッション、そして癖のある呪術的なヴォーカルが絡み合うこの楽曲は、他バンドとは似ても似つかない唯一無二のもので、豪華アーティストが参加したアルバムの中でも明らかにベスト・トラックだったのだ。
西アフリカのマリ共和国で暮らす遊牧民であり、民族衣装に身を包む彼らは「砂漠のブルース」とも称される、マリの伝統音楽にポップ・ミュージックを融合させたユニークなサウンドで、世界中の音楽ファンの間で高い人気を誇っている。また2009年にリリースした「Imidiwan」は、UKの音楽賞でボブ・ディランやアニマル・コレクティブらを押さえ最優秀賞を受賞するなど、ワールド・ミュージックという概念を覆す大ヒットとなった。
トム・ヨークやブライアン・イーノ、さらにはレッド・ツェッペリンのロバート・プラントまでもが彼らのファンであることを公言しているが、とはいえ一般的にはまだまだカルト的な存在のティナリウェン。しかし今回リリースされる5thアルバム「タッシリ」はおそらく、彼らのシーンでの存在感を一段階も二段階も押し上げる作品となるだろう。
今作では、トレードマークであったエレキ・ギターをアコースティック・ギターに持ち替え、よりプリミティブな魅力を追求しながらも、アメリカのロック・アーティストやブラスバンドをゲストに迎え、これまでの作品の中でも特にポップで、新たなアプローチを試みている。中でも、TV ON THE RADIOのヴォーカル、トゥンデ・アデビンペとキップ・マーロンが参加した"Tenere Taqhim Tossam"はティナリウェンの生々しいサウンドにアデビンペの都会的なハイトーン・ヴォーカルが絶妙にマッチしており、今回のアルバムを象徴するにふさわしい楽曲となっている。
2005年のLIVE 8でのパフォーマンスはもはや伝説と化しており、先日行われたFUJI ROCK FESTIVAL 2011でもベスト・アクトとの呼び声が高く、ライブにも定評があるティナリウェン。今作のリリースを起爆剤に、現在最高のロック・バンドとも評されるアフリカの旋風が、ここ日本でも吹き荒れる。
text:honeyee.com