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英ブレイクビーツ・シーンのパイオニア、COLD CUTが1990年に設立したインディペンデント・レーベルNINJA TUNE。自在に姿を消したり現したりする忍者や、至るところに仕掛けが用意された忍者屋敷にインスパイアされ名付けられたこのレーベルは、セカンド・サマー・オブ・ラブの勢いが失速し始めた当時の音楽シーンに、サンプリング・ビートという新たな価値観で旋風を巻き起こし、20年以上が経過した現在も、老舗としてその圧倒的な地位を保ち続けている。
所属アーティストには主催のCOLD CUTはもちろん、Roots Manuva、Spank Rock、Hexstatic、日本人ではDJ KENTAROなど、挙げ始めればきりがないほどの錚々たるメンツが勢揃いしているが、中でもDJ FOODはその長いレーベル活動の中で最古参であり、レーベルスタートの年にリリースされ後にシリーズ化された「Jazz Brakes Vol.1」は、テクノの遊戯精神でヒップホップの手法を用いた先鋭的で斬新なサウンドとして、NINJA TUNEを世に知らしめる大きな原動力となった。
2000年にリリースされたオリジナル・アルバム「Kaleidoscope」もまた、その卓越したサンプリング・スキルとセンスで、カットアップという手法を芸術の域にまで昇華させた名作として評価されており、DJ FOODはNINJA TUNE、さらにはサンプリング/ブレイクビーツ・シーンを牽引する存在となった。その後も現在に至るまで数多くのMix CDやリミックス作品を手がけてきたが、今回リリースされる「The Search Engine」は、前作「Kaleidoscope」からは実に11年振りとなる待望のオリジナル・アルバムだ。
今作で特に特徴的なのは、その荒々しいドラムサウンド。ヒップホップよりもむしろ、サイケデリック・ロックに近いほどのダイナミズムで、確実に進化を遂げたFOODサウンドを展開している。Natural SelfやMatt Johnson、JG Thirlwellといった豪華客演ボーカル陣も多く参加しており、ビートのみならず、メロディアスな"聴きやすさ"にもフィーチャーした本作。土着的ながらも、どこか洗練されたフューチャリスティックな世界感で、往年のファンはもちろん、DJ FOODの名を初めて聞く世代にとってもフレッシュなサウンドとして受け入れられることだろう。
text:honeyee.com