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エレクトロに始まりシンセ・コア、チル・ウェイヴ、ウィッチハウス等々を経たうえでニューウェーヴ・ディスコ/インディ・ダンスに接近するかのようなサウンド志向がコンテポラリーなロック、ポップスの「世界標準スタイル」のひとつとなりつつある2012年、ようやく日本からもそうしたエッジ感を意識的に掴みながら、なおかつオリジナルな表現を完成させることのできるアーティストが登場した。それがCrue-L期待の新人・The Beauty。主に打ち込みとサンプリングから構成される一人プロジェクトとして制作されたこのデビュー・アルバム『Love In The Heart of The World Shout』では、極めて現在的なダンスミュージックのフィーリングを的確に捉えたドラム/ベースのアレンジ、ドラマチックな余韻の残るダビーなディレイ感、そして、その何層にも重なる「音の響き」自体で紡ぎだす壮大でメランコリックなメロディ、これらがアルバム全体を通して一部の隙もなく融合し、なおかつ各曲とも断片的な「トラック」ではなく、ひとつの「楽曲」として高度に完成されている。
世界的な「シーンの最先端」が、そのあまりに早いトレンドと過度に重層化したコンテクストのもとにあるため、そうしたカッティングエッジな「場所」で凌ぎを削ることを意図的に放棄した(かのような)アーティスト/ミュージシャンが多く感じられる国内ミュージックシーンにおいて、堂々とワールドクラスのトップランナーたらんとするThe Beautyのピュアで不敵なアティチュードは、今こうしてコンテポラリーかつタイムレスな「時代のポップ」を完成させた。傑作デビュー・アルバムである。
text: Tetsuya Suzuki
The Beauty
debut album
"Love In The Heart of The World Shout"
May 25 2012 release
14tracks CD Album
KYTHMAK141DA
¥2310(tax in) 2200(tax off)