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1982年にブリストルで結成されたDJ集団ワイルド・バンチの準メンバーとして活動し、その後はMassive Attackの「Blue Lines」や「Protection」、Portisheadの「Dummy」といったブリストル・サウンドを代表する超名盤たちと並ぶ「Maxinquaye」で鮮烈のデビューを果たしたTRICKY。1stアルバムでありながら、ヒップホップからソウル、パンク、レゲエまでを融合したオリジナリティ溢れる音楽性が高い評価を得て、全英アルバム・チャートで3位まで上昇、同年のマーキュリー・プライズへのノミネートや「メロディ・メイカー」誌の年間ベストアルバムに選出されるなど絶賛を浴びた。
しかし、その後90年代のうちに4枚のアルバムを発表するが、「Maxinquaye」のあまりのインパクトのせいか、どれも鳴かず飛ばず。2000年代に入ってからはツアー生活の疲弊から徐々に音楽活動への情熱を失っていき、2004年には音楽活動を休止。かわりに以前から楽曲提供などで関わり合いのあった映画業界をはじめとした映像分野への関心を強め、ショート・フィルムやPV製作などのサイド・プロジェクトに専念する。2008年に音楽活動を再開させたものの、かつてのような輝きは完全に失っていた。
そして前作「Mixed Race」から3年、自らのレーベル"False Idols"を立ちあげ、ドイツの名門!K7 Recordsの協力のもとにリリースされるニュー・アルバム「FALSE IDOLS」で、彷徨い続けたかつてのカリスマが遂に帰還を果たす。False Idolsと契約を結んだロンドン在中のフィメール・シンガーFrancesca BelmonteとFifi Rong、ナイジェリアが生んだ次世代のスターNneka、また、ブルックリンのインディー・ロック・バンドThe AntlersのフロントマンPeter Silbermanといったアーティストをフィーチャーして完成した本作。
自ら「長いこと自分を見失っていたんだ。俺は何かを証明しようと、躍起になってきた。−これは、再び自分を取り戻した、まさしく俺のアルバムだ」と語るように、今作はTRICKYが最もTRICKYらしく輝きを放っていた「Maxinquaye」を想起させる、ダークで呪術的な傑作アルバムとなっている。
text: yk
TRICKY「FALSE IDOLS」
False Idols /!K7
2,490円[税込]
発売中