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THINK PIECE

DIPLO OF MAJOR LAZER

メジャー・レーザー、ディプロによる、
ヒップホップ・メンタリティに根ざした奇想天外なサウンド

10 9/2 UP

photo: Great The Kabukicho text: Kohei Onuki

昨年、奇想天外なサウンドてんこ盛りのファースト・アルバム『Guns Don't Kill People, Lazers Do』をドロップ、ダンスミュージック・シーンの台風の目と化したメジャー・レーザー。そのメジャー・レーザーが先頃、メジャー・レーザー・サウンド・システム名義で来日。残念ながらスイッチの来日は無かったものの、ディプロとMCスカーリット・ボーイが熱いライブを繰り広げた。2010年になってから、さらに勢いづくメジャー・レーザー。この変態ユニットを統率するディプロにインタビューを敢行。

ディプロ

音楽プロデューサー/DJ。レーベルMAD DECENT主宰。イギリスの人気DJ/音楽プロデューサー、スイッチとのユニット、メジャー・レーザーのファースト・アルバム『Guns Don't Kill People, Lazers Do』を2009年にリリース。同アルバムの収録曲“Pon de Floor”はフロア・アンセムと化した。現在、メジャー・レーザーのセカンド・アルバムを制作中。

http://www.maddecent.com/

 

──
まずお聞きしたいのですが、メジャー・レーザーはなぜ、ダンスホールをひとつの軸として活動をするようになったんですか。
「ダンスホールは多様性があって、クレイジー、色々なジャンルの音楽と融合出来る。それでメジャー・レーザーでは、ダンスホールをひとつの軸にして曲作りをするようになったんだよ」
──
去年出たファースト・アルバムの収録曲、例えば“Pon de Floor”などは、これまでに聴いたこともないような斬新なトラックで、フロア・アンセムと化したわけですが、トラックを作る際にディプロさんとスイッチさんの間に役割分担みたいなものはあるんですか。
「ファースト・アルバムの収録曲は、4年くらい前に既にスイッチが完成させていたトラックもあれば、彼と一緒にジャマイカのスタジオで作ったものなど、色々だね。制作をする上での役割分担は特には無いかな。メジャー・レーザーは、僕とスイッチがコアの部分にいるんだけど、今回一緒に来日したスカーリット・ボーイや、ミスター・レックスなど、クルー全員がいてこそのプロジェクトなんだ。ツアー・マネージャーにもメジャー・レーザーのタトゥーが入っているんだよ!! ヴァイブズ・カーテルやT.O.K.などのダンスホール勢にM.I.A.、曲のリミックスを手掛けてくれたトム・ヨーク……大きなファミリーによるプロジェクトがメジャー・レーザーだと僕は思っている。大きなファミリーでやることで、僕とスウィッチだけでは成し得ない、幅広いパフォーマンスを発揮出来るんだよ」
──
確かに、メジャー・レーザーには一言では言い表せない多様性があります。音楽そのものもそうですが、ミュージック・ヴィデオもバラエティに富んでいますよね。驚く程ブサイクな特殊メイクをした女性が踊ってたり、チープなアニメ仕立てだったり……あのバラエティに富んで、なおかつ変なアイディアはどこから出てきたんですか。
「“Keep it Going Louder”や“Pon de Floor”のヴィデオのことだよね。あれはエリック・ウェアハイム(カルト・コメディ・デュオ、ティム&エリックの一人)のディレクションによるものなんだ。エリックは僕がフィラデルフィアにいる時からの友人なんだけど、彼がディレクションしたら、あんなヴィデオが出来たんだ(笑)。彼はメジャー・レーザーの不思議な世界観をよく理解してくれていて、そんな彼と一緒にヴィデオを作り上げたんだ。今、彼と一緒に映画の制作もしているんだよ。それはメジャー・レーザーとは別のプロジェクトなんだけどね」

 

──
メジャー・レーザーとは別に、ディプロさんはひとりのトラックメイカー/DJとしても、ダンスミュージック・シーンの第一線で活躍しています。そのあなたがいま注目している音楽やアーティストを教えて下さい。
「ジェシー・ローズ、クルカッーズにリヴァ・スター、自分のレーベルだとL-VIS 1990が好きだね。彼らのトラックはエンジニアリングの部分に深みを感じるんだ。それと、好きなアーティストに共通して言えるのは、バックボーンにヒップホップをはじめとした、ブラックミュージックの存在があること。僕がかつてJ・ディラなどのヒップホップのトラックメイカーに強い影響を受けたから、ヒップホップからの影響が感じられるアーティストや音楽に共感を覚えるのかもしれないな。そういう意味では、ドイツのシュラクター・ブロンクスやフランスのドゥースターというアーティストも好きだよ」

──
アフロジャックやシドニー・サムソンに代表されるようなダッチ・ハウス勢の曲も最近のクラブではよくかかりますけど、その辺のアーティストや曲は好きですか。
「そうだね。アメリカ以外でヒップホップとハウスやテクノのエッセンスが美味くミックスされているのはオランダのミュージック・シーンだと思う。ヒップホップ・メンタリティに根ざしたダンスミュージック、とでも言うか。ただ、ヒップホップのサウンド自体は既に死んでいるから、あくまでヒップホップ・メンタリティに根ざしたダンスミュージック、というカタチでね。アメリカはもちろんだけど、世界的にもそういうサウンドが流行していると思う」