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THINK PIECE

KARL HYDE OF UNDERWORLD

非の打ち所のないニュー・アルバムを引っ提げ、
アンダーワールドが音楽シーンにカムバック

10 8/25 UP

photo&text: Kohei Onuki

アンダーワールドが3年ぶりとなるニュー・アルバム『バーキング』を引っ提げ、音楽シーンにカムバックした。彼らとしては珍しく外部プロデューサーを多数迎えて制作された本作は彼らの尽きることのない音楽への探究心を感じる傑作である。その新作リリースを記念し来日したフロントマン、カール・ハイドにインタビューを敢行。カールが明かすアンダーワールドの、そしてソロのアーティストとして進化し続ける自身の創造性とは。

カール・ハイド(アンダーワールド)

カーディフ芸術大学でサウンド&インスタレーションを学ぶ。1985年、リック・スミスと共にエレクトロニック・ミュージック・グループ、アンダーワールドを結成。クリエイティブ・カンパニー、TOMATOのメンバーとして、アーティスト活動も行い、音楽、アートなど幅広いフィールドで表現活動を展開する。

http://trafficjpn.com/underworld/
http://www.underworldlive.com/

 

──
まず、3年ぶりとなるニュー・アルバム『バーキング』のテーマについて教えて下さい。
「明確なコンセプトやテーマは無いんだけど、自分たちが元々持っていたダンスミュージックに対する情熱、ダンスミュージックから得られる喜びを原点に立ち返って表現した作品になっているよ」
──
活動を開始した80年代中期への原点回帰ということですね。とはいえ、ニュー・アルバムのサンプル音源をいくつか聴かせてもらいましたが、いずれも新鮮な曲でした。アンダーワールドは何故、常にシーンの第一線で活躍出来るのでしょうか。
「とにかく『今』の音を意識的に聴き続けているからかな。それを自分たちなりに吸収して、過去に僕たちが影響を受けてきたものと融合してアウトプットしている。特に最近のポピュラー・ミージックからは、バンドを結成して間もない頃に強く影響された70年代のジャーマン・エレクトロに共通するものを感じるんだ。だからニュー・アルバムの制作では、バンド結成当時の気持ちを振り返ることが出来たし、音楽への愛情を再確認出来たよ」
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新作では、ハイ・コントラスト(ドラムンベース界の人気アーティスト)やマーク・ナイト(テック・ハウス界の人気アーティスト)など、様々な音楽ジャンルのプロデューサーを共同制作者として迎えていますね。
「既に出来上がった曲をリミックスしてもらうことはこれまでにもあったけど、今回は制作の初期段階から外部のプロデューサーに参加してもらったんだ。トラックのデータを互いに何度もやり取りしながら、編集やプログラミングに少しずつ手を加えて出来た曲もあれば、マーク・ナイト&D.ラミレスのように、一緒にエセックスにあるスタジオ(ザ・ピッグシェッド)でレコーディングした曲もある。どの曲も上手くまとまって、自分たちとしては手応えを感じているよ」

 

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どの曲もある個性の強いトラックですが、ボーカルが上手く引き立っていて、バックトラックとボーカルのバランスが絶妙でした。
「当初このアルバムのほとんどの曲はインストになる予定だったんだよ。けれど、リック(・スミス)が『もっとボーカルを入れよう』って言ったんだよね。今までにない色々な歌い方を試したよ。結果、最近のライブではずっと歌いっぱなしだね(笑)。これまでのアルバムには自分自身納得しているお気に入りの曲もあれば、そうじゃない曲もあったんだけど、新作は全ての曲に納得出来てる。自分で聴いていて本当にハッピーな気持ちになれるんだ。そういうことは今作が初めてかもしれないね」

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カールさんは最近、ブライアン・イーノと共に『ピュア・シーニアス・プロジェクト』というプロジェクトで活動していますが、このプロジェクトを始めるに至ったきっかけを教えて下さい。
「彼と出会ったのは90年代半ば、『ウォー・チャイルド』(戦争被災地の子どもを支援するチャリテー企画)のキャンペーンでのことなんだけど、以来彼と連絡を取り合うようになったんだ。そして、ブライアンから『ピュア・シーニアス・プロジェクトというのをやらない?』と誘いを受けて、シドニーのオペラハウスやブライトン・フェスで即興を多く取り入れたギグをやるようになったんだ。ブライアンが内に秘めている哲学はすごく興味深いし、このプロジェクトは今後も続いていく予定だよ」