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THINK PIECE

TEAMLAB presents『COORDINATION』

ファッション界の常識を覆す、TEAMLABが生み出した新しい価値観

10 7/29 UP

photo:Kentaro Matsumoto text:Kensuke Yamamoto(Sumally.com)

"TEAMLAB"という会社を聞いたことはあるだろうか。猪子寿之という一風変わった天才が率いるウルトラテクノロジスト集団である。
そのTEAMLABが、池尻のギャラリースペース、PUBLIC/IMAGE.3Dで、COORDINATIONと名付けられたエキシビションを開催。
洋服をハンガーラックから手に取ると、目の前のディスプレイに手にとった洋服のコーディネートのスチールや映像が投影される……。
耳で聞くとシンプルな仕組みなようにも思えるのが、そのインタラクティブ感を実際に体験してみると、これが何とも新鮮な経験なのだ。
TEAMLAB代表の猪子寿之がこのプレゼンテーションに秘めた思いとは。

チームラボハンガー制作チーム。左から、広報/編集・工藤岳、テクニカルエンジニア・穴井佑樹、マーケティングプランナー・鈴木健太郎
代表・猪子寿之、東京大学大学院工学系研究科・吉本英樹、チーフUIアーキテクト・河北啓史。

 

──
今回のエキシビション"COORDINATION"を実施することとなった経緯を教えてください。
「最初、針谷さん(ANSWR代表)から、このスペースで何か展覧会をやってほしいとオファーをいただいたんですよね。何をやってもいいよ、と言われていたんです。ちょうどその頃ハンガーを使って何かをやりたいなと思っていて、場所柄ファッション的なものだとちょうどいいかな、というのもあって、今回のエキシビションの開催に至りました」
──
洋服に連動したかたちで、その洋服を使ったコーディネートをプレゼンテーションするという、このコンセプトを思い浮かべたきっかけとはなんだったんでしょうか。
「チームラボでは某百貨店のECサイトの運営を実際にやっているんですが、アイテム単体の写真だけより、コーディネート写真があわせて掲載されている洋服のほうがよく売れるんですよね。そして、空間的に制約のあるリアルな店舗でも、そのシチュエーションが実現できればいいな、と思ったのが最初のきっかけです」

──
バーコードタグなど、ハンガー以外のものをセンサーとして使う選択肢もあったと思うのですが、どうしてハンガーになったんでしょうか。
「ハンガーって一見価値がないようなものじゃないですか。でも、物理的な範疇では一見そんなに価値のなさそうなものでも、ネットワークにのせてあげることで、別の価値が付加されるんです。今回であればハンガーを、ディスプレイに投影する”スイッチ”として機能させているんですが、既存のモノ・アクション自体を、その先のネットワーク上にあるものと連動させるインターフェイスとして機能させる。それが今回やりたかった大きなテーマです。チームラボが掲げる”New Value in Behavior”というコンセプトの具現化のひとつですね。そういう視点ではARで試着が体験できる……という類とは、少し方向性が違うかもしれません」

 

──
既存のモノをそういう風に進化させていくという取り組みの背景を教えてください。
「その点では、電子工作のブームが、このプロジェクトの実現を後押ししたかもしれませんね。「MAKE」というコミケの電子工作版みたいなイベントがあって、みんな思いつきで作ったものをどんどん展示したり売ったりしているんですよ。流行ってます。チームラボの社員も会社でよく工作しています。コンピューターの進化と同じで、部品の値段もどんどん下がっている。こういったものが、以前よりはるかに作り易くはなっていますよ」
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今回のシステムは実際に店舗で使おうと思うと、導入可能なものなのでしょうか?
「いま、ディスプレイも安いですし、ハンガー自体の単価もそれほど高くないので、すでに実用化レベルといってもいいと思います。実際、レセプションのあとにラグジュアリーブランドからファストファッションまで20社以上から問い合わせがあったんですよね。ただしそういうビジネス的な問い合わせには、なかなか素早く対応できないという部分もチームラボらしさでもあるんですが。どこの会社も得意不得意があって、それができてりゃ、TEAMLABは今頃もっと大きい会社になってる(笑)」

※チームラボハンガー(インタラクティブハンガー)は特許出願中。