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THINK PIECE

YO-KING

YO-KINGの「生の声」が詰まった
『スペース 〜拝啓、ジェリー・ガルシア〜』

10 8/10 UP

photo: Shoichi Kajino text: Tetsuya Suzuki

昨年、真心ブラザーズとしてデビュー20周年を迎え、藤原ヒロシとのユニットAOEQを結成したYO-KING、
ついに約3年ぶりのソロ作となるミニ・アルバム『スペース 〜拝啓、ジェリー・ガルシア〜』をリリース。
真心ブラザーズの『拝啓、ジョン・レノン』を彷彿とさせるタイトル曲にはじまり、
ボーナストラック『Hey! みんな元気かい?』のラジオライブまで、どの曲も気負いなく、
けれど、とことんストレートに自身の日々の思いをフォーク、ロック、
ファンクを自在にアレンジした楽曲に乗せた意欲作ぞろいの傑作である。

 

──
先日、リリースされたミニ・アルバム『スペース 〜拝啓、ジェリー・ガルシア〜』は、どのような作品だとご自身では位置づけていますか?
「今は、やっぱり自分が聴きたいものをつくる、というのがテーマですね。2000〜2002年くらい、ゼロ年代の前半って言えばいいのかな、そのときは止むに止まれぬ気持ち、これを出さないと前に進めない、っていう気分でやっていたんですけれど、今は自分自身が聴いて楽しめる音楽を作っている感じです。もちろん、この作品もそう。それにしちゃ、やや濃すぎる面もありますが(笑)」

──
自分が聴きたい音楽を、ということですが、ここに収録された曲からはYO-KINGさんが、「今考えていること」がすごくストレートに伝わってくる印象です。つまり、他人の楽曲であっても、そうしたストレートな言葉で歌われた音楽が今は聴きたいということでしょうか?
「それは、あるかもしれませんね。その人がどんなことを思い、何を考えているのかというのが、わかる曲は音楽のジャンルを問わずに面白いなと感じますね。デビュー前の学生が作った自主制作の作品でも、あるいは、小田和正さんみたいなベテランの方であっても、その人の考えや意見を歌っているものは、それに賛同するかはともかく『面白い!』って感じます」
──
そうしたアーティストの一人が、CDのタイトルにもなった曲で歌われている、ジェリー・ガルシアである、ということなのでしょうか。
「やっぱりずっと気になっている人なんです、ジェリー・ガルシアって。今、僕の好きな人って、鋭くなろうとしてない人なんですよ。もちろん、ジョン・レノンも好きですけれど、ジョンの場合はアタマの良さとを押し出しているところを感じますよね。そういうのを押し出さない人。言い方を変えると純粋で穏やかな人。ジェリー・ガルシアって、ただ毎日毎日ライブを楽しく続けていたら、いつの間にか周りに人が集まって共同体ができちゃったみたいな、ね。そのうちに当時のフラワームーブメントなんかがズルズルーっと付いて来ちゃったみたいな感じがカッコいいなあ、と」

 

──
タイトルを見れば一目瞭然というか、どうしても『拝啓、ジョン・レノン』を彷彿とさせますが、アプローチは少し違うようにも感じます。
「そうかもしれませんね。辛辣なジョンには、こっちも辛辣にならないと負けちゃう部分があったのかも。でも、ジェリー・ガルシアは穏やかな人だから、こっちも自然に穏やかになるのかも」
──
そして、穏やかであっても優しいだけでなく、骨太なファンクネスが楽曲から伝わります。
「そこも、ジェリー・ガルシアって人のイメージからだと思います。それで、こういう優しいファンクロックになっていったのかもしれないですね」

──
『拝啓、ジョン・レノン』が向こうから突き刺さってくる曲であるのに対し、『スペース 〜拝啓、ジェリー・ガルシア〜』は音楽のなる方に僕らが引き寄せられるような曲に感じます。
「オープンな雰囲気がある曲になりましたね。やっぱり、『ジョン・レノン』の頃は僕も若かったので、自分の中の批評性というか、少しシニカルでとんがった部分があったと思うんです。でも、最近はもうそいう気分はなくなって、もっと自然に自分を出せるようになったんじゃないですかね。防護服を脱いで人前に出られるようになったというか」