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THINK PIECE

RYOTA AOKI × SHIN SUZUKI

陶芸家・青木良太と写真家・鈴木心が問いかける、新しい価値観。

11 12/21 UP

photo:Shin Suzuki, Ryota Aoki text:Madoka Hattori

現代美術作家・村上隆氏の紹介をきっかけに、
互いの作品を通して交流を続けている、陶芸家の青木良太と写真家の鈴木心。
六本木ヒルズで開催されている展覧会に合わせ、完全自主制作の作品集を制作した。
媚びることのないふたりが、ものづくりの未来を語る。

 

青木良太(あおき・りょうた)

陶芸家。1978年、富山県生まれ。
現在は、岐阜県土岐市に工房を構えている。岐阜県多治見市陶磁器意匠研究所卒業。
2004年、スイスにあるEcole de arts decoratiftsに研修生として留学。
05年高岡クラフト展グランプリ、08年台湾国際陶芸ビエンナーレ特別賞など多数受賞。
http://www.ryotaaoki.com/

鈴木心(すずき・しん)

写真家。1980年、福島県生まれ。
広告、雑誌の写真制作、CM、PV などの映像制作をする傍ら、自身の作品の制作発表を行っている。
写真集に「写真」(ブルーマーク)、「高良健吾 海 鈴木心」(赤々舎)など。
10月から、J-WAVE 81.3FM (毎週土曜20:00〜放送)「DREAMERS ACADEMY」でラジオパーソナリティも務めている。
http://suzukishin.jp/

 

──
今回、六本木ヒルズA/Dギャラリーで開催されている青木さんの個展『RYOTA AOKI Exhibition』では、どのような作品を展示しているのですか?
青木良太(以下: A )
「今回は柚薬だけで魅せる展示がしたくて、ロサンゼルスで発表した新作の器を中心に構成しています。日本各地で個展をしているのですが、やはり販売する器を多く持って行くために、スペースを贅沢に使うことが難しい。だからあえて今回は、点数を減らしアート作品のように並べてみました」
──
展示に合わせて制作されたのが、初の作品集『a Potter』ですよね。
A
「今まで作品集をつくる話はいくつかあったのですが、タイミングやテーマがなかなかしっくりいく企画がなくて。やっぱり、何かものを作るには人が重要なんです。心くんから提案された時、ようやくすんなりと作品集をつくろうと思えたんです」

──
なるほど。そもそも、おふたりの出会いは?
鈴木心(以下: S )
「1年半くらい前、村上隆さんに頼まれてイベントの撮影をしていたら、青木くんがゲストで来ていたんです。陶芸家ですって紹介されたのですが、こんな見た目だし(笑)全く興味が持てなくて。でもその後に行った打ち上げで、僕が撮った国立新美術館の『ルーシー・リー展』のポスターを青木くんがすごく好きだという話になったんです」
A
「そう。今までルーシー・リーの器を撮った写真は山ほど見てきましたが、そのポスターを見た時、こんなかっこいい撮り方をする人がいるんだ!とビックリしました。証明写真のような写真が多い中、心くんの写真は器の一部分だけが切り取られていてすごくオシャレに見えたんです。それからずっと気になっていたので会えて嬉しかったですね」
S
「しばらくして、青木くんから器が届いたんです。けっこうな量があったので、もらってばかりじゃ悪いかなと思い、その器の写真を撮って青木くんに送りました。それが一番最初の青木くんの作品との出会いですね」

 

──
それまで、器に対しての知識や興味はあったのですか?
S
「以前、NHKの『美の壷』という本で、国宝や重要文化財などを1000点以上撮影しました。器を撮影するときは図録的な見せ方のポイントがあるのですが、既存の図録ではありえない方法で撮影したいというオファーでした。白バックだけ持って、そのモノが作られた当時のライティングですべて撮影したんです。ピントを浅めにし、器の縁や柚薬の垂れている所など、ディティールを追っていました。それが糧となり、知識はなくてもモノを見ていいものかどうかが見分けがつくようになった。理屈がないので、いつの時代とか、誰が作ったとかで判断せずに見ることができるんです。だから、青木くんの器を見た時にもすんなりと受け入れられました」

──
青木さんの器はどのように撮影したのですか?
S
「『美の壷』で撮影していた器はもう亡くなっている人たちの作品です。生きている人の器を撮ったことがなかったので、青木くんの器を撮ることは挑戦でした。青木くんが見せたい所ではなくて、自分が見ていいと思う所を撮る。青木くんは立体として器をみていると思うのですが、僕なりの視点で返したいなと。それは、本人が撮って欲しい所ではないかもしれないけど」
A
「心くんの写真は、自分でいいと思っているラインとは違う部分の美しい所が写っているので、器の新たな魅力を教えてもらう感じです」