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THINK PIECE

Daisuke"DSK"Kojima

小島"DSK"大介による「ウィンタースポーツミュージック」。

11 12/2 UP

photo:Neil Hartmann text:Tetsuya Suzuki

Port of Notes、AURORA ACOUSTICのメンバーとして、そしてプロデューサーとして活躍するギタリスト、小島"DSK"大介。彼のニューアルバム「Trace」は写真・映像作家/スノーボーダーであるニール・ハートマンとのコラボレーションによる「アウトドアな冬のサウンドトラック」。新たなテーマのもと、さらなる飛躍を遂げたDSKのエモーショナルでスムースなウィンターミュージックは必聴なのだ。

小島"DSK"大介(ギタリスト、ソングライター、プロデューサー)

96年、畠山美由紀とユニット"Port of Notes"でデビュー、現在までに4枚のオリジナルアルバムを発表。08年に活動10周年を記念してベスト盤"Blue Arpeggio"を、09年には最新アルバム"Luminous Halo"をジェシー・ハリスのプロデュースによりニューヨーク・レコーディングで発表した。01年、chari chari(井上薫)のアルバム"in time"に収録の"Aurora"を井上薫と共作およびギターで参加。これをきっかけに井上とのギター・デュオ"Aurora Acoustic"を結成し、現在までに3枚のアルバムを発表している。自身のソロ、小島"DSK"大介として5枚目のアルバム"Trace"を11年11月11日に発表した。ソロ、Port of Notes、Aurora Acousticでの活動の他、多くのアーティストとコラボレートや客演、またプロデュースや楽曲提供など幅広く行っている。
http://jp.myspace.com/daisukekojima


──
前作同様ギターを中心としたインストアルバムなのですが、今作では、より各曲の表情がハッキリしているというか、ひとつひとつの曲が独立している印象を受けます。
「このアルバムは、ちょっと不思議な作り方をしているというか、実は5、6年前から作り貯めていたけ曲が半分くらいで、もう半分が前作のリリース後、ちょうど1年くらい前から作っていた曲なんですよね。なので、結構昔の曲もあるんですよ。その時は良い曲だなとは思ったものの何かピンとこなかったけど、今年聴き直したら、いい頃合いに寝かしが効いていたような。服にもあるじゃないですか。買ったときは、それほどでもなかったけれど数年してちょっと丈とか直したら、すごく気に入ったみたいな(笑)。そんな感じの曲が半分あるんです」

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一般にギターインストというと、どうしてもイージーリスニング的というか、アンビエントっぽいというか、そういうレイドバックしたサウンドを思い起こしがちだし、実際、このアルバムにもそういう側面はあると思うのですが、それでも、小島さんの曲には活き活きとしたビートとグルーヴが他のギタリストのソロとは違うレベルで印象に残るように思います。さらに、今作ではメロディが耳に残るよう強調されていると感じるのですが。
「そうですか」
──
そうです(笑)。だから、ギタリストのソロでもあるけれど、やっぱり小島さんはソングライターなんだな、と思ったんです。
「ああ、確かに。どの曲もヴォーカルを載せようと思えば載せられるかもしれませんね。その一方で、アコースティックギターの曲も良くないですか?(笑)。その辺は井上薫くんとのユニットのオーロラで培ってきたものを持ってきたんですが」
──
もちろん、そういうのもいいですが、でも、そもそもギター以外のサウンドも自分で作ってるんですよね。
「女性コーラスと既発表曲のドラムを生に差し替えたものがそれぞれ1曲づつあるくらいで、ギターはもちろん、ベース、キーボード、それにプログラミングを含めて、すべてのパートを自分一人で作ってます。こうしたいわゆる宅録的なやり方は前作からの延長ですが、自分でも突き詰めつつあるなと思いますね」

 

──
そう、だからもうそんなにギターにこだわんなくてもいいんじゃないかと思ったり(笑)。ヴォーカルのフィーチャリングはもちろんですが、例えばピアノソロの曲とかも書けるんじゃないですか?
「なるほど(笑)。プロデューサー的な視点から曲を作るみたいな感じでね。その手もありますね。確かに。ただ、今回はやっぱりストックしていた曲から選んだというのが大きかったし、あと、フォトグラファーのニール・ハートマンからのオファーとうか、彼の映像作品に音楽を提供するというところから始まっているというのが大前提だったので。そのニールの作品に使われた曲というのも結構前に彼に渡していたもので、『そういえば、そんな曲あったな』っていう感じだったんですけど、完成した映像を観たら、『あ、こんなハマり方するんだ』って思って。それが『Great Dimension』っていう曲なんですが、その映像を観て、今までは特定のテーマやイメージのようなものは持たずに作ってきたけれど、アウトドアやスポーツ、なかでもスノーボードとか、そうしたシチュエーションを念頭に置いてアルバムを1枚作ってみたくなったんです。そうすれば、僕の音楽ももう少し理解してもらいやすくなるかなと思って。実際、ニールのおかげで、自然の風景と自分の曲のマッチングの良さに気づいたんですよね」
──
今までそういうアイディアというか、ライフスタイルとともにあるなにかのシーンに合わせるような曲作りというのはなかったんですね。
「制作中にはないですね。でも、リリースしてしばらくしてから、サーフムービーのサントラに使われたりというのは結構あるんですよ。それって自分では意外な気もしていたんですが、多分、僕の音楽に僕が気づいていない部分があって、そこが評価されているんだろうなって思うようになって。それで、今回は、言い方はちょっと違うかもしれませんが、音楽に機能性をもたせるというか、あるイメージを想起させるものを作って、そのイメージに共感する人たちに届けるというところからはじめてみようと」