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THINK PIECE

KENGO KORA × SHIN SUZUKI

俳優・高良健吾と写真家・鈴木心が挑戦する、新しい形の写真集

11 2/25 UP

photo:Shin Suzuki, Kengo Kora text:honeyee.com

映画「ノルウェイの森」や「白夜行」など、話題の映画に次々と出演し注目を集めている俳優・高良健吾。
そして広告や雑誌のみならず、自身の制作活動にも意欲的に取り組む写真家・鈴木心。
ともに、それぞれの分野で先鋭的な活躍をしている両者が、
表現者として一対一で向き合った写真集「高良健吾 海 鈴木心」が完成した。
鈴木の発案により、既存の枠組みに捕われず最小限のスタッフで製作。
インタビューではお互いを撮影し合うなど、深い絆と信頼関係を垣間見せた二人。
「死」をも感じたという、夜の海での撮影秘話とは―。

 

高良健吾(こうら・けんご)

俳優。1987年、熊本県生まれ。2006年、『ハリヨの夏』で映画初出演。
翌年『M』で第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門特別賞を受賞。
昨年は7本の映画に出演し、第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞を受賞。
現在、『白夜行』が公開中。今後は、NHK連続テレビ小説『おひさま』(3/28スタート・NHK総合ほか)、
『まほろ駅前多田便利軒』(4/23公開)、『軽蔑』(6/4公開)に出演する。
http://www.kengo-fc.com/

鈴木心(すずき・しん)

写真家。1980年、福島県生まれ。 2005年、東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。
第24回『ひとつぼ展』グランプリ受賞、第28回写真新世紀佳作。スタジオに勤務後、2008年に独立。
広告/雑誌の写真制作とCMのムービー撮影をする傍ら、自身の作品の制作を行っている。
http://suzukishin.jp/
http://suzukishin.wipe.vc/

 

──
写真集「高良健吾 海 鈴木心」を制作することになったきっかけは?
鈴木心(以下: S )
「以前から写真家として仕事をしていて、そのプロセスの中で公にできない写真というものについて考えていました。例えば、編集の方や被写体の事務所の方が使えないという判断をする写真の中にも、自分はいい写真があると思っている。でも自分がいいと思う写真ではないものが、自分のクレジットで公になり、他人の目に触れてしまうことに疑問がありました。実感として、雑誌や出版社が企画する写真集では、自由な表現ができない。であれば、どのようにすれば役者の人と一緒に、まるで映画を作るみたいに突き詰めた表現ができるのかと思っていたんです。そういう疑問を赤々舎の姫野さんに相談をしたら、ぜひうちでやろうといってくれて。姫野さんは出版社としてコントロールすることは何もないので、好きなようにやっていいとおっしゃってくれました」
──
なるほど。それから高良さんに声をかけたのですね。
S
「高良くんとは、何度か雑誌の撮影で会っていたのと、事務所の社長さんとも面識があったので打診してみました。高良くんのスタイリングをよくやっている、スタイリストの澤田石和寛くんとも仲が良かったので、高良くんと3人で恵比寿の居酒屋で会って、こういう写真集を作りたいという話をしたんです」
高良健吾(以下: K )
「その時、宇宙の話をしたんですよ。その…宇宙みたいな写真集を作りたいねって」
S
「大分、ざっくりしてるけど(笑)。僕の話を聞いて、高良くんも日頃同じように感じることはあると話してくれたんです。それで、高良くんが僕に身を預けて何かやってみようということになりました。とはいえ、本人のOKがでても、事務所に許可を出してもらわなければいけないので、社長に会いに行ったんです。社長は『最初に電話をもらった時から、この企画は面白くなると思っているからやりたいようにやっていい』と二つ返事でOKをしてくれました。それで、僕が最初にやりたいと思っていた“夜の海で写真を撮る”という企画を、誰にも止められることがなく、高良くんと二人で決めることができたんです」

 

──
高良さんは鈴木さんからオファーをされた時、どんな写真集をつくりたいと思ったのですか?
K
「フォトブックを出したばかりだったし、心さんとは雑誌でファッションの撮影をしていたので、オシャレな写真集は作りたくなかったんです。オシャレなことをして、ポーズを決めて、という作品は嫌で。だったら、何も着なくていいんじゃん!と」
S
「色んな写真集を見ても、服を着た時点でファッション的になってしまう。高良くんがオシャレとかカッコいいとかではなく“高良健吾”を見せようと。ヘアメイクさんやスタイリストさんもなしで、高良くんと海だけを写真で撮ることで、今までに見た事のない新しいモノが成立するのではないかと。なぜなら、誰にもやらせてもらえないからです。高良くんがNGを出すかもしれないし、出版社もNGかもしれない。間に色んな人が入ることで、平均的なルールに捕われてできなくなってしまう表現だと思ったんです」

K
「僕の中で心さんは"ブッとんでる人"なので、その人が作るならば絶対に面白いと思っていました。映画の場合、より多くの人に観てもらう為には一日に何回も上映したほうが良いという考えから、作品の長さがある程度決められてきます。だから、泣く泣くカットされてしまう部分も多くあります。演じる側からしてみれば、作品が一番いい形で観てもらえることが幸せなんですけど、まずは観てもらわないとその人にとっては無いものになってしまう。心さんも写真の中で、同じような葛藤を感じているのだなと思いました」
S
「僕が感じている写真家としてルールを変えられないもどかしさを、高良くんも役者として感じていて。自分資本であれば関係ないのですが、他人の資本でモノを作っていて、その中の1プレイヤーであるならば、変えることができない。そのことを踏まえて、僕たちは新しい挑戦をしたんです」
──
鈴木さんが高良さんを選んだ理由は?
S
「何度も撮影で会う人というのは限られています。だから何度も会っていると、自分の写真集を見てもらったり、自分がどういう撮り方をするのか、どういう人間なのかというのを理解してもらえていると思っていて。何人かの候補の中でも、イメージが強い人というのは、すでに写真集もいくつも出されていますよね。僕は"二人でやる意味"に重きをおきたいなと。お互いに自分の両分があり、対等に成立する関係がいい。もちろん親和性もあります。話をしていて食い違う人もいますし、でも高良くんはそんなに食い違うことがない。僕のことをある程度は理解してくれているかなと感じていました」