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THINK PIECE

SATURDAYS SURF NYC

NYのサーフカルチャーを牽引する
ライフスタイルショップ

11 11/22 UP

photo:Kentaro Matsumoto text:Misho Matsue

ニューヨークはソーホー地区のはずれ、クロスビー・ストリートに一風変わった"サーフショップ"がある。その名も「SATURDAYS SURF NYC」。厳選されたサーフボードやサーフギアはもちろん、アパレルを中心としたオリジナルライン、雑貨やアートブックも展開、さらにはコーヒーバーも併設している。2009年のオープン後まもなく、NYのサーファーだけでなく、ファッションやストリートカルチャーに敏感な人々にも口コミで噂が広がり、その人気や影響力はあっという間に世界レベルに。なんと来年の春には東京にもショップがオープンすることが決まったが、その準備のため来日したオーナー兼デザイナーの3人に話を聞くことができた。

SATURDAYS SURF NYC

2009年8月、ファッションやデザインの仕事をしながらサーフィンを愛するニューヨーク在住のジョシュ・ローゼン、モーガン・コレット、コリン・タンストールによってオープン。サーフィンとNYのライフスタイルを絶妙に融合したセンスから瞬く間に街の人気スポットとなり、日本でも今年の春、アダム エ ロペ ビオトープにオープンしたポップアップストアは大きな反響を呼んだ。2011-12秋冬シーズンでは、アウターも含めたフルコレクションを発表し、今後ますますの成長が期待されている。
http://www.saturdaysnyc.com/

 

──
SATURDAYS SURF NYC(以下SATURDAYS)は従来のサーフショップとは一線を画すようなオープンでスタイリッシュな雰囲気が印象的で、さらにそれが外側から編集されたものではなく、ご自身がサーファーでもある皆さんから発信されているのが面白いと思います。オープンのいきさつを教えてもらえますか。
ジョシュ・ローゼン(以下: J )
「僕たちは3人ともニューヨークで暮らし、ファッションやデザインの仕事に身を置き、海やサーフィンを愛していたから、そんなライフスタイルがダイレクトに反映されたショップを作りたいと思ったんだ」
──
ちなみにそれまではどんな仕事をしていたのですか?
モーガン・コレット(以下: M )
「僕はアクネ、ジョシュはヌーディージーンズやJ・リンドバーグのセールス部門で働いていて、コリンは『GQ』や『エスクワイア』のデザインに携わっていたよ」
──
なるほど。NYは大都市のライフスタイルとサーフィンのどちらも楽しめる街なんですね。NYのサーフシーンについて教えてもらえますか?
M
「もちろん。NYのサーフコミュニティはここ5~10年でどんどん拡大しているんだ。世間の目にもこの成長は明らかなんじゃないかな。僕たちはSATURDAYSをオープンする前から一緒にサーフィンに行っていたんだけど、マンハッタンから1時間も電車に乗ればビーチにたどり着けるから、時には仕事の前や後に向かうこともあるよ」

──
SATURDAYSのオープンは、そのコミュニティのありかたにも影響を与えたのではないでしょうか。
M
「サーフギアを手に入れる場としてはもちろん、サーフィンに興味を持つ人が同じような多くの人と知り合ったり意見を交わす場として、サーフィンをより身近に感じられるようになったんじゃないかな。それから、僕たちの個人的なスタイルをベースにしたSATURDAYSオリジナルのアパレルラインがJクルーのリカーストアやコレットなどのハイエンドなショップでも扱われていることからも、ファッションにおいてもNYのカルチャーの存在感を示せていると思うよ」
──
スタイルもバックグラウンドもまったく異なるのを承知でお尋ねします。NYのカルチャーを色濃く反映するブランドとしてはSupremeを思い出す人もいると思いますが、Supremeに対してはどんな印象を持っていますか?
コリン・タンストール(以下: C )
「Supremeがある意味でNYの街をキュレートしているのに対して、サーフィン自体がカリフォルニア、ハワイ、オーストラリアなど別の多くの場所の影響も受けているから直接比べることはできないけれど、同じようにNYを拠点として選び、どこか似た感覚を共有しているのは感じるし、憧れの存在ではあるね」
J
「それに3人ともSupremeは大好きなんだ。ずっとクールであり続けているし、素晴らしいクリエイターともコラボレートしているしね。僕たちはそれぞれにNYのファッションやライフスタイルにおける別の側面を表現しているんだと思う。なにしろ、NYには何だってあるんだから。Supremeもそうだと思うけれど、僕たちも面白くてユニークなプロジェクトを発信し続けていきたいね」

 

──
SATURDAYSがユニークであるポイントについてはこれからお聞きしていきたいのですが、併設のコーヒーバーもその一つだと思います。コーヒーはサーフィンとNYとを見事につなげていますよね。
M
「ニューヨーカーにとってはコーヒーはもはや社会的なものだし、海に出かけて波を読む時にもコーヒーはぴったりだ。それにコーヒーは、人々がやってきてサーフィンはもちろんアートやビジネスなどさまざまなことについて話し合える環境を作ってくれるしね」
──
コーヒーがアクセシブルな雰囲気を作っているのに加え、Tシャツから始まったオリジナルのアパレルラインはすでにフルコレクションと言えるラインナップになっています。そして、ボードショーツのようにサーフィンとリンクしたアイテムはありつつも、ベーシックなデザインでシルエットもすっきりしていて、多くの人が手に取りやすいものばかりですよね。
C
「まず第一に、今のコーディネートを見てもわかるように、僕たちはたとえば大きなグラフィックが前面に打ち出されているようなTシャツは着ないんだ。だから僕たちのスタイルを反映したSATURDAYSはたくさんの人にとってウェアラブルなコレクションになっているんじゃないかな。それから、僕はニューヨークエリア、ジョシュはシアトル、モーガンは南カリフォルニア、と3人とも別々の場所で育ったから、同じ感性を持っているとはいえ、それぞれのスタイルがミックスされているかもしれないね」
J
「これまで、サーフブランドはビーチコミュニティに根ざした若者向けのアイテムを作っていたけれど、SATURDAYSはファッションやアートに従事しているNYのサーファーの生き方を反映しているから、もっとモダンなんだと思う」

──
ちなみに肝心のサーフボードやギアを仕入れる際は、どんな観点で選んでいるのですか?
M
「僕たちの考えるベスト、だね。ボードについては、ほとんどが南カリフォルニアの僕の友人のシェイパーが作ったものなんだ。マテュースやパタゴニアのウェットスーツは個人的にも愛用しているんだけれどすごくクオリティが高くて、他のサーフアクセサリーも同じようにセレクトしているよ」
J
「使っているものは経験で良さがわかっているしね。僕たち自身がサーファーとして20年以上、ベストなリーシュ、ワックス、トラックパッドは何か、ってリサーチ、開拓してきたんだから」
C
「話は変わるけどそういえば面白いことがあって、ジョシュの子どもの頃の隣人が僕たちのためにバッグを作ってくれたんだ。リサイクルした帆船の素材を使ったもので、それがいまも扱っているバークリー・サウンドなんだよ」
J
「デヴィッドは優秀な建築家だったんだけど、リタイア後に趣味でバッグの制作を始めたんだ。僕のママがひとつクリスマスに手に入れたんだけど、それを見て『なんてクールなんだ!』と僕たちみんな驚いて、彼にSATURDAYSのためにバッグを作ってくれるようお願いしたよ。そしていまでは世界中で彼のバッグを買うことができる。隣人が作ったクリスマスプレゼントだとしても、気に入ったものを取り入れて、そのクリエイティヴなエナジーを提供する、僕たちの有機的な成長を表す一例と言えるんじゃないかな」