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ONWARD

スターバックスが日本上陸して15年。
藤原ヒロシが米スターバックス会長Howard Schultzを迎え、その未来を探る。

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photo:Kentaro Matsumoto(portrait) text:honeyee.com

銀座に日本第一号となるスターバックスがオープンして今年で15周年を迎える。折しも来日中の米スターバックス会長Howard Schultzを、自他ともに認めるスターバックス好きの藤原ヒロシが自らディレクションした表参道B-SIDE店に迎え、日本上陸15年の歴史と今後のビジョンを探る。

Howard Schultz

米スターバックス コーポレーション会長兼CEO。1971年シアトルで創業し、独自の文化とスタイルを持つ世界的なコーヒーストアの創業者。タイム誌の「世界でもっとも影響力のある100人」にも選ばれるなど、一企業の経営者にとどまらない世界的なビジョナリーとして知られる。10月の来日では東日本大震災の被災地・仙台を訪問し、また被災したパートナー(=従業員)を支援するための一般財団法人「CUPファンドジャパン」に妻と共に100万ドル拠出した。

 

──
ヒロシさんがディレクションした表参道B-SIDE店をご覧になってどのような感想をお持ちになりましたか?
Howard Schultz(以下: HS )
「今日ここに来る前に写真では見ていたのですが、実際に見ると本当に美しいお店ですね。ヒロシとは出会って一年程しか経っていないのですが、出会った瞬間から私たちの間には共通のセンスがあることに気付きました。言うまでもなくヒロシの才能やユニークな視点は素晴らしいですし、彼のスターバックスへの理解は私達にとって大きな自信になりました。最も重要なのはお客様にこのスペースを楽しんでいただくことですが、お客様だけでなく、私たち自身も楽しむことができるこの場所を誇りに思っています」
藤原ヒロシ(以下: HF )
「僕もよくここでコーヒーを飲んだり、ミーティングをしたりしているんですよ」
HS
「そうなんですか?ではここはもうヒロシのプライベートオフィスなんですね(笑)」
HF
「今のオフィスを引き払ってこっちに引っ越してきたいくらい気に入っています(笑)。2階ではよく昼寝をしている人もいるし、本当に居心地の良い場所なんですよ」
──
スターバックス好きの科学者のアイデアがきっかけとなって開発されたスターバックス ヴィアなど、これまでも直感的な人との出会いから幾多のヒット商品を生み出してこられたと思うのですが、ヒロシさんとの出会いにはどのようなものを感じられましたか?
HS
「私はグラスの水が半分の時、半分空っぽなのではなく、半分入っていると考えるようにしています。今日のように非常に複雑に入り組んでいる世界の中で、グローバルに物事を考え、チャレンジを恐れず新しいものを創り上げようとする人に出会った時に私は運命を感じますし、その人と一緒にグラスの水を満たしたいと思います。ヒロシは世界中を旅して回っていて、そして私たちのお店も世界中にあります。彼と、世界で今何が起きているのかを話し合うことは非常に有意義ですし、何かを学べる人との出会いは素晴らしいと思います」

 

──
今年で15年目を迎える銀座の日本第一号店は、スターバックス初の(北米以外の)海外店舗でもあったという事ですが、海外進出の第一号店を日本にしたのは何故でしょうか?
HS
「ちょうど今日、日本での第一号店に行ってきたのですが、もう15年も前のこととはとても信じられませんでしたね。なぜ海外進出第一号に日本を選んだかとのことですが、それは角田雄二という一人の男性にもらった手紙がきっかけでした。手紙には、彼がロサンゼルスのスターバックスで体験した、いいことも悪いことも書かれていました。彼を信用した結果、私たちは日本においてこの15年で大きな成功を収めましたし、現在も素晴らしいパートナーシップを持ち続けています。1996年当時、スターバックスには誰一人として国際的なビジネス経験のある者はいなかったのですが、日本での成功を皮切りに、現在ではアメリカ以外の57カ国に6000店舗以上を構えるまでに成長しました」
HF
「世界情勢的にも海外進出には良いタイミングだったのかもしれないですね」
──
ヒロシさんも日本に上陸する前からスターバックスがかなり好きだったんですよね?
HF
「アメリカの街でよく見かけた"スターバックスのカップを持って歩いている姿"が僕にとってはすごく新鮮だったんですよ」
──
スターバックスはイタリアのバールを発想の源としながらも、全く新しいコーヒーカルチャーを確立し世界に浸透させてきたと思います。"新しいものと伝統的なもの”そして“グローバルなものとローカルなもの"のバランスはどのように意識してこられましたか?
HS
「あなたの会社が大きくても小さくても、またどんなビジネスをしていたとしても、常に消費者の行動の変化に注視していなくてはなりません。企業のブランドとクオリティーを維持ながらもイノベーションを続けなければ、成功することはできないでしょう。今日躍進を続ける素晴らしい企業は、カスタマーと金銭的な関係よりも強固な気持ちの繋がりを持っていて、それはプロダクト以上に価値のあるものです。そして今私が何より感じているのが、今日の成功は明日の成功では決してないということです。成功し続けるためにはこのお店のように、常に新しいことに挑戦的でなくてはなりません。また、一人のクリエーターにお店のディレクションを任せるというのは、スターバックス40年の歴史の中で今回が初めてで、人によっては理解できないことかもしれません。常に新しいことを学ぼうという姿勢を崩してはいけないのです」
HF
「それは光栄ですね。いくつか新しいアイデアが浮かんだので是非またやりましょう。そういえば先週、僕はパリにいたのですが、友人がパリで出される飲み物には氷が入っていないと嘆いていたんです。それで唯一氷入りの飲み物が飲めるのがスターバックスだけだと。言われるまで気付かなかったのですが、世界中のどこでも同様のサービスが受けられるというのはすごいことですよね」