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THINK PIECE

The Sartorialist

超人気ファッションブロガー、スコット・シューマンが見た東京。

11 11/7 UP

text:honeyee.com

世界中から1日に35万以上のアクセスを誇る超人気ファッションブログ"The Sartorialist"。
著者でありカメラマンのスコット・シューマンが撮影したファッションスナップ、
また自己表現としてのスタイリングという一貫したコンセプトは、
ファッションの枠を越えあらゆるシーンに多大な影響を与えている。
そしてこの度、プリンターメーカー、ブラザーが製作するドキュメンタリー映像への出演のため、待望の来日が実現。
世界中を飛び回る氏の眼には、現在の東京のファッションはどのように映ったのだろうか。

 

──
スコットさんが運営されているThe Sartorialistは、日本にも男性を中心に熱心なファンが多くいますが、今回東京のストリートで撮影をされた際、ご自身の活動が東京のシーンにも影響を与え始めているという実感はありましたか?
「私が撮ってきた写真が、彼らの服のチョイスに直接影響しているとは思いませんでしたが、自己表現としてのスタイリングという意味では、インスピレーションになっているのではないかと感じました。自分を表現することにはリスクがつきものですが、それぞれが自分の個性を生かしたスタイリングをするようになったと思いますね」
──
スコットさんの写真の被写体となる人たちは、トレンドを追いかけているのではなく、自分自身のベーシックを突き詰めていると感じるのですが、現在はその姿勢自体がトレンドになりつつあるのではないでしょうか?
「私はファッションを愛していますし、ショーにもよく出かけているので、個人的には常にトレンドにも敏感でいるつもりです。しかしそれが、私が撮る写真にも通じることかと言えば、そうではありません。おっしゃられた通り、私がフィルムに収めるのは、自分だけの一貫したスタイルを持っている人たちです。彼らも流行やファッションの移り変わりには敏感ですが、それに左右されない、揺るぎない自分のスタイルがあるのです。彼らにとって、トレンドは既に確立された自分のスタイルに取り入れる、エッセンスの一つでしかありません。そういった人たちは誰の目から見ても魅力的ですから、その姿勢に影響を受ける人は多いでしょうね」
──
シーズン毎のトレンドばかりを取り上げるファッションメディアが多い中で、The Sartorialistでは流行に左右されない、オリジナルのスタイルを持つことの良さにフォーカスしている点が、世界中で支持されていることの理由だと思います。事実、日本、特に東京ではThe Sartorialistの姿勢を目指し始めている人が増えてきているんです。
「そう言っていただけて光栄です。日本人のスタイルは本当に素晴らしいので、毎回日本に来るのが楽しみなんです。特にメンズはブレスレットやベルト、スカーフといったアクセサリーのチョイスや服のディテールにもこだわりを感じます。個人的に、オーバーサイズのストリートスタイルよりも、落ち着きのある洗練されたスタイルに魅力を感じるので、今の東京の雰囲気はすごく好きですね。それから昨日知人からいただいた、昔の日本の街を収めた写真集が素晴らしかったです。70〜80年近く前の写真だと思うのですが、着こなしがとてもスタイリッシュで、日本の文化の奥深さを知りました。現在の日本人のスタイルが優れているのは、そうした歴史があってこそなのですね」

 

──
日本のファッションは西洋の影響を受けながら成長してきたのですが、現在、ウェスタンカルチャーのフォロワーであったからこその日本のユニークさが、逆にヨーロッパやアメリカに新しい世代として評価され始めていると感じます。
「あらゆる文化の洗練された要素をキャッチアップ、ミックスして生まれた日本のスタイルには世界が注目していると思います。さらに私は、日本人はまた次のステップに進み始めているように感じています。今はまだ、例えばラルフローレンならラルフローレン、ジュンヤワタナベならジュンヤワタナベと、全身同じブランドでスタイリングしている人が多いようですが、コムデギャルソンとラルフローレン、プラダとリーバイスのように、一見異なるテイストのものをミックスする着こなしが次の日本のスタイルであり、事実それに近づいているのではないでしょうか」
──
スタイルだけでなく物作りにおいても、例えばジーンズにおいて、デコラティブなものではなくクラフトマンシップやヴィンテージを再現することによって付加価値を上げるという手法も、日本人がウェスタンカルチャーのフォロワーだからこそ生まれたものだと思います。
「オリジナルであるはずのアメリカやイタリアの人たちは見映えだけを重視して、ジーンズのディテールや歴史の価値をそれほど意識していないにも関わらず、そのフォロワーであるはずの日本人がそこに価値を見出しているというのは興味深いですね」
──
それがここ数年、アメリカやイタリアの人も日本人的なディテールを評価し始めているように思います。その一方で、日本人もそれを維持しながらも、モノだけではなくスタイルで魅せる西洋的なスタンスも加わってきていて、アメリカ、イタリア、日本のメンズファッションが同じ価値観を持ち始めているように感じます。
「それは現状、ごく限られたトップレベルの人たちにおいて言えることですね。とはいえ、私のブログに多くの日本人が掲載されているように、東京には感度の高い方が多く、確かにそういった価値観を持った人たちが増えているように感じます。私は現在のメンズファッションにおいて最も重要な場所はイタリアで、次に東京だと考えているのですが、東京のスタイルに色気、セクシーさが加わった時、東京はイタリアと並んで世界のファッションシーンをリードする存在になるでしょう」