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THINK PIECE

Aurora Acoustic 「Harmony of the Spheres」

井上薫+小島大介によるAurora Acousticが、ニューアルバムとベスト盤を同時リリース。

12 10/19 UP

photo: Lica text: yk

2002年にChari Chari名義でリリースし大ヒットを記録した「Aurora」でのコラボレーションを機に結成された、
井上薫+小島大介によるアコースティックギターユニット・Aurora Acoustic。
前作「Feast」から実に5年振りとなる新作「Harmony of the Spheres」が、
これまでの音源を編纂したベスト盤と同時リリースされるとのことで、
結成から現在まで唯一無二のサウンドを放つ二人にインタビューを敢行。

 

──
今回、ニューアルバムとベストを同時にリリースされたことにはどのような経緯があったのですか?
井上薫(以下: I )
「もともと、新作はできた時にリリースしようという計画がありました。ベストは以前、Crue-L傘下でレーベルをやっていた時にリリースしたアルバムが全て廃盤になっていて、そのままにしておくにはもったいないような音源もたくさんあったので、それを改めて発表しようと。2~3年前にAurora Acousticという名義に変えたので、かつてAuroraとして作っていた楽曲を編纂するのもいいかなと思ったんです」
──
アルバムのタイトル「Harmony of the Spheres」にはどんな意味合いがあるのですか?
I
「始めは天上の音楽という意味でつけたのですが、調べてみるとギリシャ時代の哲学者ピタゴラスが執筆した著書に同様のタイトルがあったんです。引力や重力が分かっていない天動説の時代に、天体が独自の周波数の音を発していて、その音がハーモニーを描いて天体の軌道を確保しているという理論だったんです」
小島大介(以下: K )
「ロマンティックですよね(笑)。偶然見つけた言葉ですが、音で間合いをとるという意味合いや天体の偶発性みたいなものも含めて、この作品にピッタリのタイトルだと思ったんです」
──
新作の制作はどのように進めていったのですか?
K
「最初はパーカッションやSEを使わず、2本のギターだけのアルバムにしようと思っていて、去年の暮れにレコーディングを始めたんです。ちょうどライブ明けの時期で二人の息も合っていたので、良いタイミングだったんですよ。ただレコーディングを進めるうちに、試しにSEや他の楽器を足してみたらそれがすごく良い出来だったので、結局は今の構成になりました」
──
レコーディングを始める段階で既に曲は完成していたのですか?
K
「そうですね。ずっとライブを続けていたので、新曲はたくさんあったんです。結成当初からライブではキーだけを決めて全てアドリブで演奏するというスタイルを続けてきて、当初はそれが新鮮だったのですが、徐々にその方法に違和感を抱くようになってきたんです。それからは、曲として成立しているものの間にインタープレイを混ぜるにようなったので、どうしても新曲が必要だったんです。Aurora Acousticは譜面を一切書かないので、忘れた曲はその程度のものとして、生き残ったものだけを今回のアルバムに収録しました」
──
アルバムを作るために身構えて制作を進めたというよりは、ライブ活動を続けるうちに自然発生的にできていった曲をコンパイルしたアルバムなのですね。
K
「そうですね。”Winter Solstice”という曲は冬至という意味なのですが、まさに冬に作った曲で、そのように曲が出来上がった季節ごとの雰囲気が感じられるアルバムだと思います」

 

──
お二人の間ではどのようなやり取りがあって曲が完成していくのですか?
I
「コードの運行やリフのように曲のベースとなるものをどちらかが持ってきて、そのアイディアをお互いに投げ合って詰めていく感じですね。このユニットのコンセプトは、僕がDJをやっていることもあって、テクノの反復性やスティーブライヒのミニマリズムをレイドバックしたアコースティックサウンドに当てはめるということなのですが、その視点を常にベーシックに置いています。一方でこれまでのライブでは、先程小島が言ったように30分ノンストップでアドリブの演奏をして、その中に偶発的に生まれたハーモニーやポリリズミックなタイミングの取り方などの瞬間を重視していたのですが、最近はより曲として成立したものをライブでも再現したいと考えるようになったんです。その意識が今回のアルバムに収録されている楽曲にも生かされていると思いますね」

──
お二人がユニットを結成されたのは、薫さんの楽曲“Aurora”に小島さんが参加されたことがきっかけになっているんですよね?
I
「僕がChari Chariという名義で制作している時に、小島大介のギターを録りたいとオファーしたのが始まりですね。僕の方でビートとシンセやアコギのリフをシーケンスしたものを聴かせて、その上にギターソロを入れてもらったんです。そもそもはブラジリアンなテイストのあるディープハウス的なものを作っていたつもりなのですが、アコースティックなハウスミュージックの響きがすごく新鮮に感じたんです。そしてそれが着想となって、ユニット結成に至りました」
──
小島さんは“Aurora”の制作時、どのように感じていましたか?
K
「僕が演奏している時はスタジオで聴いていたトラックの印象しかないので、それがその後エディットされて、全く別のものになっているというのが面白かったですね。”Aurora”ではそれほど長い尺は弾いていなかったのですが、結果として9分の曲になりましたから。井上君のDJ的な感覚が僕としては新鮮でした」
──
そしてニューアルバムではその”Aurora”がリアレンジされて収録されていますね。
I
「もともとあの曲をリアレンジしたものをライブで演奏していたんです。フル尺で演奏するわけではなく、メインとなっているリフを抽出して、ギター二本で再現できるようにしたものをアルバム用にレコーディングしました」