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THINK PIECE

BOYS NOIZE “Out of the Black”

BOYS NOIZEが最新作で見出した新たなスタイル。

12 9/21 UP

photo: Kentaro Matsumoto text: yk

DJ/プロデューサー/リミキサーとしてこれまでに多数のシングルとリミックスの他、
「Oi Oi Oi」「Power」といったアルバムをリリースし、
そのどれもが絶賛を受けるダンスミュージック界の窮児BOYS NOIZE。
遂に完成させた3rdアルバム「Out of the Black」では、BOYS NOIZEらしい破壊的なサウンドを展開。
Snoop Doggが参加するというセンセーショナルなニュースの他、自身が抱えていたシーンに対する疑問、
またそこから見出した新たなスタイルを語る。

 

──
アルバムのリリースを目前に控えて、今どのような心境ですか?
「とてもわくわくしているよ。アルバムとしては今回が3作目になるんだけど、これまでの中でもベストな作品だと思っているからね。毎回アルバムを作る時には新しい機材を買って、制作の方法もその都度変えるようにしているんだけど、今作ではそれと同時に僕が曲を作り始めた頃に持っていたアティチュードを思い出しながら作ったんだ。プロデュースすることに慣れてくると、自分の中で制作のセオリーのようなものができてしまうけど、純粋に鳴らしている音と向き合って、一音ずつクールな音を作ることを心がけたよ」

──
多種多様なサウンドが一度破壊され、再構築されることでBOYS NOIZE独自の音楽が作られていると思うのですが、そもそもBOYS NOIZEの音楽的原点はどこにあるのでしょうか?
「僕は楽器を習ったこともないし、プログラミングもエンジニアリングも全て独学で学んだんだ。15歳くらいの頃からレコードを買い始めてDJをするようになって、クラブシーンにのめり込んでいったんだけど、初めて2many DJsのプレイを観た時のインパクトは今でも覚えているよ。The Stoogesの後にテクノをプレイして観客を盛り上げるなんて、それまでの僕の価値観にはないものだったから本当に衝撃だった。それから自分でマッシュアップを作るようになって、ロックやハウス、ヒップホップなど様々なジャンルの音楽をミックスするようになったんだ。だからそれがBOYS NOIZEの原点になるのかな。そこから今までの僕の成長を収めた集大成が今回のアルバムなんだ」
──
DJとして世界中をツアーされていますが、その多忙な毎日の中でどのように制作を進めていったのですか?
「このアルバムの制作のために少しオフを取って、今年は月に一回程度しかギグをしていないんだ。夏の間もフェスティバルには一つも出演しないでかなり時間に余裕が持てたから、スタジオで有意義に過ごしていたよ。これまではツアー中に制作もして本当に大変な思いをしていたから、今回はこのアルバムに集中したかったんだ」

 

──
ツアー続きであまりにもギグが続いてしまうと、好きでやっていたはずのDJや音楽そのものに嫌気が差してしまうことがあるでしょうし、アイディアがあっても制作する時間がないことをストレスに感じることもあると思うのですが、その辺りのメンタルのケアはご自身でも意識的にされていたのですね。
「それはまさに、僕がここ数年で感じていたことなんだ。これまで僕は年間100以上のギグをこなしていてそれだけでも限界を感じていたのに、ある日友達のDJにそのことを話したら、彼は300ものギグをやっていると言ったんだ。その時に、これは僕のスタイルじゃないと気付いたね。やっぱりショーのオファーを受けると嬉しいし、できる限り行きたいと思ってしまうんだけど、そのことが体力的、精神的に自分のことを追いつめてしまっていたんだと思う。僕は今の自分を取り巻く環境に満足しているし、ビッグスターになりたいとも、たくさんのお金を稼ぎたいとも思っていないんだ。だから自分自身がもっと音楽を楽しむためにも、自分のペースに合わせてツアーを組むようにしたのさ。自分は何がしたいのか、何がしたくないのかを理解することが大切なんだと気付いたね」

──
今作「Out of the Black」では破壊的でエネルギッシュなBOYS NOIZEサウンドがアルバム全編を通して展開されていますが、特に目を引くのはSnoop Doggをフィーチャリングした「Got It」ですね。
「レーベルを通して連絡をもらって、彼の曲をリミックスしたことが始まりなんだ。Snoopは僕が一番好きなヒップホップアーティストだったから、オファーをもらった時は本当に興奮したよ。その時は彼から直接コンタクトはなかったんだけど、Twitterで彼のアカウントにメンションを飛ばして、リミックスがどうたったか聞いてみたんだ。そしたらすぐに返信がきて、すごく良かったからもっと曲を送ってくれと言ってくれたのさ。それから連絡を取り合うようになって、ついに今年LAの彼の家でレコーディングをすることができたんだ。何年か前、あるインタビューでSnoop Doggと曲を作ることができたら音楽をやめてもいいと答えたくらい、僕にとっては大きな夢が叶ったんだよ」
──
今回はSnoop Doggとの共作ということでしたが、今後もメジャーなアーティストとの共作やプロデュースを手がけることに興味はありますか?
「Snoop Doggはメジャーアーティストだけど、長年僕のヒーローだったから別格なんだ。今回のアルバムで、たくさんのメジャーシンガーをフィーチャーしたものを期待していた人も多かったかもしれないけど、BOYS NOIZE名義でそういう作品を作ることに興味はない。そういう作品が嫌いな訳ではないんだけど、それよりもステージでプレイした時に自分自身が興奮できる曲を作りたいと思っているんだ。ただ、プロデューサーとして他のアーティストに楽曲を提供するということであれば、是非やってみたいと思っているよ。ラッパーでもシンガーでも、そのアーティストが僕にとってインスピレーショナルである限りね」