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THINK PIECE

BREAKBOT “BY YOUR SIDE”

『By Your Side』でディスコ・ポップを再定義したBreakbot、間もなく来日!

12 12/27 UP

photo & text: Shoichi Kajino

ぼっさり伸びたロングヘアに飄々としたキャラクターがニクめない
ティボー・ベルランによるソロ・プロジェクト、Breakbot。
2012年にED bangerよりドロップした待望の『By Your Side』は
新たなディスコ・ポップを再定義した感もある。
単独での来日ツアーを前に、アルバムのこと、独自のポップ観を語ってくれた。

 

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まずはデビュー・アルバムとなる『By Your Side』のプロダクションについて教えて下さい。
「シングルの「Baby I'm Yours」をリリースしてすぐ後、2010年頃からスタートしたんだけど、自分では歌えないから、自分の好きな3人のヴォーカリスト―Ruckazoid、スウェーデンのバンドPacific!のビヨルン、Irfane―をゲストに迎えて、ポップなアルバムを作ろうと思ったんだ」
──
「Baby I'm Yours」のヒットがターニング・ポイントになりましたね? それ以前のBreakbotにはより強いエレクトロのサウンドの印象がありました。
「ターニング・ポイントであると同時にスターティング・ポイントでもあったんだ。ED bangerとサインして最初のシングルだったし、ペドロ(Busy P)からすぐにアルバムを作ることを提案されたのもいいきっかけになったね。確かにそれ以前は2000年代のフレンチ・エレクトロの影響は大きかったよ。当時は自分でも大量のエレクトロニックの音楽ばかり聞いていた。例えば、JACKSON & HIS COMPUTER BAND, MR. OIZO、LFO、APHEX TWIN、DAFT PUNK、CASSIUS…それからもちろんJUSTICE、SURKIN、PARA ONEといった友人たちの音楽を聴いていて、それらの音楽は僕に自分でも音楽を作ってみようというきっかけになったし、どのようなツールをどのように使えばどんな音が出来るというようなことを学ぶスクールだったんだ。今は聴くものも作るものも、よりソフトでポップで、スウィートなものになったと思う。レイ・パーカー Jr.、ホール&オーツ、マイケル・ジャクソン、プリンス…それから多くのファンク・ミュージックを聴くようになったのだけど、ある日から突然というわけではなくて、徐々に傾いてきた感じ。作るトラックやリミックスも必然的にそうで、例えば今でも初期に作ったトラックを聴いて、その端々にファンキーな要素が入り込んでいるのを聴くことが出来ると思うよ」
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子どもの時代からMTVポップの影響が大きかった世代ですよね?
「まさに。でもそれと同時にヒップホップの影響も大きかったよ。ファンキーなブラック・ミュージックのサウンドに、例えばビーチ・ボーイズのような白人的なポップ・ミュージックのソング・ライティングが出会ったようなトラックを作りたかったんだ。このアルバムではその二者が出会えたように思うよ」
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ED bangerとサイン以降、ファースト・シングルからずっとジャケットにはSO-MEのイラストのキャラクターが使われていて、シャイなあなたは、まるでそのキャラクターの裏に隠れているように感じます。
「実はあのキャラクターを初めて見たとき、ショートパンツに白いハイソックスをという出で立ちで、不器用そうになんかぼーっと立っている彼を、自分のようには思えなかったんだ。でも確かにロングヘアのあの顔は自分の様でもあるし、面白いから採用することにした。まさかそれ以降も使う予定ではなかったのだけど、『自分のようで、自分じゃない』まるでドッペルゲンガーのような、そのキャラクターをだんだん好きになってしまってね…(笑)」

 

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さらにアルバムではその彼がチョコレートになって登場しましたね。Chicagoのあの有名なジャケットへのトリビュートですね。
「ずっと考えていたアイデアだったんだ。チョコレートの「スィート」なイメージと、「少年時代」のイメージがこのアルバムにはぴったり当てはまると思ってね。それから「女の子はみんなチョコレートが好き」というのもポイントで」

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今回のアルバムを聴いた多くの人は「ポップ・ミュージック」という言葉で表しました。確かにBreakbotのスタイルは大きくポップへと向かったと思うのですが、あなたにとってポップとはどういうものでしょう?
「アートには2つの方向があると思うんだ。自分に向かうもの、そして他人に向かうもの。他人へ、というのは最大限多数の人々に向かうものでありながら、同時に自分の信念を妥協しなくていいもの。時に、自己に向かった表現は、より自分を満足させることに反比例して、他人を喜ばせられなくなるかもしれない。逆に強いパーソナリティを反映させながら、より自分に満足をさせながらも、それに比例してより多くの人を喜ばすことのできる表現もあると思う。僕が好きなアーティストは、とても強いアーティストのヴィジョンを保ちながらも、同時にそれを多くの人のもとに降りていって、誰もの琴線に触れることのできるアーティスト。例えばマイケル・ジャクソンやダフト・パンクのような。強いヴィジョンながらより多くの人にシェア出来るユニバーサルな表現がポップということなんだと思う。多分ね」