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THINK PIECE

Kenji Takimi ✕ Hiroshi Fujiwara

瀧見憲司 ✕ 藤原ヒロシ

12 12/11 UP

photo: Shoichi Kajino interview: Tetsuya Suzuki

「今年のベスト」との声も高い瀧見憲司と神田朋樹によるユニットBeing Boringsによる『ESPRIT』。
この傑作アルバムを聴いた藤原ヒロシが「瀧見くんと久しぶりに話したい」となり、実現した特別対談。
2人の考える「音楽の現在」とは。

 

瀧見憲司(以下: T )
「じゃあ、Being Boringsのアルバムの感想からお願いします(笑)」
藤原ヒロシ(以下: F )
「ちょうど引っ越しの時に届いて、まだリヴィングルームにテレビもなく暇だったので、とりあえず、聴いてみようと。でも、結局、何度も聴きっぱなしだった」
──
で、どうでした?
F
「わかったことは、BGMって言葉は悪いかも知れないけど、集中して聴きこむものではなく存在する音楽っていうのが、割と今必要なものなのかなって。歌とか意味を持つメッセージとはまた別物で。そういう音楽もすごく必要なんだな、と。そのうえで、瀧見くんのアルバムは上質なBGMだと思った。少なくとも僕にはダンスミュージックに聴こえなかったですね」
T
「うん、実際にダンスミュージックを作ってるつもりはそんなになかったから。ただ、メッセージ性が全くない訳ではなくて、でもそれって言葉で上手く表せないものなんですよ。ただ音には示唆されているっていう」
──
逆に瀧見さんはヒロシさんの今のライブ活動とか、この間のシングル(『この先に』)についてどういう印象をお持ちですか?
T
「それこそ、逆に今、あえて歌で、言葉で何かを伝えようと思った理由を知りたいなって。もともと言葉で“明言”をしないタイプだったじゃないですか」
F
「あえて歌うという感じではではないんですけどね。ただ、年齢のせいっていうのはあるかな。こういうことをやっても、そろそろ、いいかのなって。あと、やっているうちに楽しくなってきたってという方が大きいかも」

 

T
「それは歌うことが、ですよね」
F
「そう。やっぱり、伝わりやすいよね。インストよりも歌詞があったほうが伝わりやすいし、英語より日本語の方が伝わりやすいから」
T
「何かを伝えたいっていう意識があるのかな」
F
「伝えたいっていう意識よりも、偶然、自分の目や耳に入ってくる現実とか、何かしら興味を引くものとか、そういうことを一緒に面白いと思ってもらえればいい。そういう意味では本当にメッセージ性があるものを歌っているわけではないので。だから、瀧見くんたちの音楽がインストであってもメッセージ性があるっていうのと一緒かもね。曲のフックで、オッと思わせるというのと同じかも」
T
「まあ、メッセージ以前に、自分の音楽を聴いて、それがどういうもので構成されているか、音楽にはどういうものがあるのかというのを意識してもらいたい。幅とか深みとか奥行きとかバックグラウンドとか。最初はBGMとして聴いてもらっても構わないけれど、何か引っかかるところを感じて欲しいというか。それって、人によって、あるいは曲によって違うじゃないですか。その幅が広い方が良いかなって。と言いつつ、そんなに広い訳でもないんですけど(笑)」
F
「でも、瀧見くんぽいけどね。サンプルの使い方とか。瀧見くんが手がけるリミックスからヴォーカルを取った感じ。あんまり変わってないよ(笑)。ただ、コード感が増したっていうか。音楽として聴きやすくなった。BGMっぽいっていうのは、むしろ、そういう意味かも。悪い意味でなく、逆に音楽的になっているということ」
T
「そこはバランスを取るというか、いわゆる“曲”っぽくなりすぎないようにした部分もあるんですけどね」
F
「そうかもね、そんな気もする」
T
「歌を歌うのとは違う演出をしたつもり。曲ではなくトラックとして成り立たせているっていうか」
F
「でも、全部キレイに曲になってるよ。その辺はやっぱり、神田(朋樹)くんの手腕なのかな?」