honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

MARK McNAIRY for Heather Grey Wall
CUPSULE COLLECTION

MARK McNAIRY × KAZUKI KURAISHI

12 10/10 UP

photo: Kentaro Matsumoto interview & text: Jun Namekata

これまでスポットアイテムとして不定期に展開されていたコラボレーション企画、
〈MARK McNAIRY for Heather Grey Wall〉が、2013春夏から遂に新レーベルとしてスタートする。
マーク・マックネイリーといえば、今季からファレル・ウィリアムスが手がける〈Billionaire Boys Club〉の
ラグジュアリーライン〈BEE LINE〉をスタートさせ、また自身のブランドでは初のランウェイショーを成功させるなど、
今最も注目を集めるデザイナーのひとり。年二回発表されるカプセルコレクションは、
そんな彼から生まれるアイデアをベースに、倉石一樹がプロダクト面を監修するという格好だ。
今回はそのお披露目のために来日したマックネイリー本人と倉石氏にインタビュー。
ブランドのアイデンティティを探った。

 

──
ではまず、この不定期のコラボ企画を新レーベルとして始動させることになったいきさつを教えてください。
倉石一樹(以下: K )
「なんでだったのかな……。ちょっとあんまり覚えてないんですが(笑)、そもそもこのコラボレーション自体は、単純に僕がマックネイリーさんの作る服が好きだということから始まったことなんですね。これまでいろいろと単発でやらせてもらっていく中で自然と作りたいものが増えてきて、だったら、ということでまとめて発表することになったという感じでしょうか」
MARK McNAIRY(以下: M )
「確か、一番はじめはシューズだったね。あとは『FUCK IVY』のTシャツとか。このコラボレーションのひとつの側面としては、私が作りたくてもアメリカの生産背景などの問題でなかなか実現できないものがあって、それを一樹の生産背景などを使わせてもらいながら実現させるという意味もあったと思う」

K
「特にオリジナルの生地やパターンを作る場合そうなのですが、アメリカでは工場がかなり限られてくるんですよね、クオリティ的に」
M
「そういったものを作りたいという欲求が私の中にあって、一樹と一緒に取り組むことで実現した。そしてそれが自然とカプセルコレクションに成長したというかんじかな」
K
「どうせ一緒にやるんだったら、今まで作りたかったけどうまく形にならなかったものをやろうと。いろんな利害が一致したという感じですね」
──
最初に倉石さんからオファーがあった時はどう思いましたか?
M
「とてもクールなことだと思ったよ。私はアメリカのスポーツウエアを主体にしたブランドに携わりながら、その中に英国の要素を組み込んでいくスタイル。そこには洋服と音楽の関係もあるのだけど、それと似たようなものを彼にも感じた。もちろん、彼の場合はスポーツというよりも英国的な背景が強いけど、成り立ち方が近い。だから最初からスムーズに取り組めたんだ」
K
「僕はオファーをするまでマックネイリーさんには会ったことがなかったし、ほんとに引き受けてくれるのかなと半信半疑でした。でも、SOHOのショールームにお願いに行ったら、その場ですぐに引き受けてくれたんです。しかも具体的なプロダクトの話にまでなって。そのスピード感には驚きましたね」
M
「彼を見た瞬間に一緒に仕事ができるということが直感的に分かったよ。もともとそういうやり方で仕事をしてきたし、そこに躊躇する理由はなかったね」

 

──
どういうプロセスでコレクションは出来上がっていくのでしょうか?
K
「まずマックネイリーさんからアイデアがどんどん出てくるんです。それを僕の方で整理しながら、さらにそこに付随するものを作って、相談しながら組み立てていく。彼は本当に突拍子もないアイデアが急に浮かんでくるタイプなんですよね。普通のデザイナーでは考えつかないものも多いし、それがすごくおもしろい」
──
ということは、このコレクションはテーマやコンセプトにそって進む形ではなく、プロダクトありきで進んで行くという感じなんですね。
K
「僕はある程度トータルイメージを考えながら進めていますが、マクネリーさんはプロダクトありきでリクエストが来る感じですね。思いついた時点で随時連絡がくる。それを僕がパッケージしてという感じです」
M
「コレクションの全体感は一樹に任せて、わたしはプロダクトのアイデアを常に考える。そんな感じで進んでいるね」
──
ちなみにお二人は他のブランドのディレクションも手がけていますが、その中でもこのカプセルコレクションはどのようなポジションにあって、そしてどんなことをここで表現しようとしているのでしょうか?
M
「私は常にノートブックを持ち歩いていて、なにかいい発見やアイデアが沸いてきたら、それを書きとめて、あとでそれを自分が抱えているそれぞれのプロジェクトに当てはめていくんだ。これはウールリッチに、あれはBEEラインに、もの凄くいいアイデアが生まれればそれは自分のブランドにってね(笑)。だからあらかじめこのブランドで何を表現しようとかを考えながら進めているわけではないんだよ」
K
「僕も特に何かを表現しようと意識しているわけではありません。むしろこのコレクションに関しては、マックネイリーさんの世界観を膨らませていくのが一番いいんだろうなと思っています。スタンスとしては凄くかみ合っていると思いますね」
──
逆に倉石さんからリクエストすることは?
K
「もちろんありますよ。例えばインディビデュアライズドシャツのシリーズなんかは、僕からのリクエストです。マックネイリーさんが日本の生産背景を使うだけでなく、僕が彼の背景を使わせてもらうこともある。イーストランドの靴などもそうです」
M
「コンセプトメイキングやパッケージは一樹、アイデアは私ということが多いけど、もちろん逆のこともある。お互いに世界観の共有、交換をしながら、プロダクトを展開しているんだ」
K
「僕らはマーケティングも特に考えていないし、やりたいことを感覚的にやっている。すごく直感的にプロジェクトを進めているのも特徴かもしれません」
M
「まさにその通り。私のアイデアは本当に突発的で、まるで事故のようなもの。深い意味や背景があるのではなく、毎回、急に沸いて出てくるからね」