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THINK PIECE

マイケル・アリアス × PLAID

映像のための音楽、音楽のための映像。

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photo: Kentaro Matsumoto text: honeyee.com

松本大洋原作のアニメ―ション・ムービー「鉄コン筋クリート」の監督を務めたことで一躍脚光を浴び、
続く長瀬智也主演の「ヘブンズ・ドア」でも多くの賞賛を得たマイケル・アリアス。
そして、その両作品において全編サウンド・トラックを手がけ、2011年9月にはニュー・アルバムもリリースした、
テクノ/IDMシーンのリビング・レジェンドPLAID。映像と音楽が織りなす相乗効果を最大限にまで発揮させる両者が語る、
優れた映像と音楽の融合とは。

 

マイケル・アリアス

カリフォルニア出身のCGクリエーター、映画監督。
コーエン兄弟や、ポール・バーホーベン、スパイク・リー、デヴィッド・クローネンバーグなど、
名立たる映画監督の下でスペシャルエフェクトやコンピュータグラフィックス制作に携わった後、
2002年にアニメ『アニマトリックス』の製作を担当、2006年には日本のアニメ映画『鉄コン筋クリート』で初監督を務めた。
続いて2009年に日本の実写映画『ヘブンズ・ドア』、2010年にはチームドラゴンfrom AKB48「心の羽根」のPVを、
それぞれ手がけている。

PLAID(プラッド)

LFOと共に Warp Records の活動を初期から支え、イギリスのテクノ/IDM・シーンにおいて重要な影響を及ぼした
Black Dog productionsのメンバーにより結成。91年に自身のレーベルBlack Dog Producitonsよりデビューアルバム
"Mbuki Mvuki"をリリースして以降、数々の歴史的名作を発表。また、マイケル・アリアス監督の『鉄コン筋クリート』、
『ヘブンズ・ドア』では、それぞれ全編に渡るサウンド・トラックを手がけ話題となった。
2011年9月には8年振りとなる新作「Scintilli」をリリース。
http://www.plaid.co.uk/

 

──
PLAIDは昨年の9月に、実に8年振りとなるニュー・アルバム「Scintilli」をリリースされましたが、ファンの反応はいかがでしたか?
Andy Turner(以下: A )
「オリジナル・アルバムとしては8年振りだけど、その間ずっとさぼっていたわけではなくて、”Greedey Baby”というDVDプロジェクトや、映画のサウンド・トラックを手がけていたんだ。”Scintilli”は世界中から良いリアクションをもらっているし、僕たち自身すごく満足している作品だよ」
──
これまでのアルバムの中でも、特にエスニックな要素が強い作品だと感じました。
A
「今作ではシンセサイズされたエスニックサウンドにフィーチャーしたんだ。単純なオーガニックサウンドではなくて、独自のエフェクトをかけることで、今まで誰も聴いた事がないような音を作り上げたんだよ」
Ed Handley(以下: E )
「今回のアルバムを制作するにあたって、インドネシアのガムラン・グループと何ヶ月かロンドンのスタジオで過ごしたんだけど、彼らのベルやパーカッションのサウンドにはすごく大きな影響を受けたね。ヒューマンエラーという、人が演奏した時に生じる微妙なズレが独特のグルーヴを生むことを学んで、それを細かく計算したプログラミングをしたんだ」
──
マイケルさんは”Scintilli”を聴いてどう感じましたか?
マイケル・アリアス(以下: M )
「素晴らしかったですね。今までのアルバムの中でも、作品全体としてのメリハリが効いていると感じました。聴いてすぐにPLAIDの音楽だと分かるくらい、彼ららしい作品だと思います」
──
マイケルさんはPLAIDの音楽のどういった部分に魅力を感じるのでしょうか?
M
「確固たる世界観を持っているところですね。彼らにしか作り出せない、こだわり抜かれた一音一音を基に、曲やアルバムを一つのストーリーとして築き上げている点が、PLAIDの魅力だと思います。僕の映像のサウンド・トラックをお願いした時も、単調な構成ではなく、画にリンクするために様々な要素やアレンジを加えて、素晴らしい作品を作ってくれました」

 

──
マイケルさんが監督を務めた「鉄コン筋クリート」や「ヘブンズ・ドア」では、PLAIDが全編サウンド・トラックを手がけていますが、そこにはどういった経緯があったのですか?
M
「もともと、僕が彼らのストーカーだったんです(笑)。98年か99年頃、僕のオフィスの改装を手伝ってくれていた大工さんが、作業中にPLAIDの”Not for Threes”というアルバムをかけていて、僕がそれを気に入ったことが始まりです。彼にコピーをもらってからは、ずっとそればかり聴いていいて、実際に彼らのライブを東京で観た時は、本当に感動しました。その2,3年後、鉄コン筋クリートの制作が具体的に進み始めた時に、僕の方から彼らにアプローチしたというわけです」
──
PLAIDのお二人はマイケルさんのオファーを受けて、どう感じましたか?
A
「まず、マイケルや鉄コン筋クリートについてのリサーチをして、それがとても魅力的なプロジェクトであると感じたんだ。すごく光栄なオファーだと思ったから、具体的に話を進めるために、もう少しインフォメーションをもらえるように頼んだんだよ」
M
「それで僕がプロデュースした”アニマトリックス”のDVDや鉄コンの英語版コミック、映画のスクリプトなんかを送ったんです。その後、彼らに会うためにニューヨークに行って、彼らのショーを観たり、ディスカッションを重ねたりしながら、関係を深めていったんです」
E
「その当時、ショートフィルムの音楽を制作したことはあったけど、フル・ムービーのサウンド・トラックは手がけたことがなかったから、PLAIDにとってもエキサイティングなオファーだったね。観せてもらったマイケルの作品も素晴らしかったし、契約書を見る前にOKの返事をしてしまったんだ」
──
そこから、マイケルさんの映像とPLAIDの音楽のコラボレーションが始まっていくわけですが、実際の制作はどのようなプロセスで進行していったのですか?
M
「鉄コンもヘブンズ・ドアも、まずは彼らに映像のラフ・エディットを見せることからスタートしたんです。映像も音楽も、言葉で伝えるよりも実際に観て、聴いてもらった方が理解が深まるので、一度それぞれのシーンの大まかなコンセプトを説明して、僕の中にある音楽のイメージをPLAIDの過去の曲や、他のアーティストの曲をサンプルに伝えていきました」
A
「マイケルから具体的なイメージを伝えてもらったから、シーンに込められたエモーションの理解を深めることができたし、制作も進めやすかったよ。もちろん、もらったサンプルをコピーするのではなくて、そこからイメージを膨らませて、僕らのアイディアを込めたオリジナルのトラックを作ったんだ」
M
「コラボレーションをする上で、自分と相手との間に正しい理解と信頼関係を築くことは最も重要なことです。それがベースとなって、お互いにアイディアを出し合ったり、影響し合ったりすることで、優れた作品が生まれるのだと思います。それはPLAIDだけでなく、制作に携わる全てのスタッフも同じです。出来上がったPLAIDの音楽を俳優、声優、アニメーターにも聴かせて共通の言語とすることで、作品のイメージをスタッフ皆で共有することができました」
E
「出来合いの音楽を適当に映像に当てはめても、あそこまでうまくはいかなかったと思う。自分たちの作品よりも締め切りに厳しかったことが大変だったけど(笑)、出来上がった作品はとても美しく、映像と音楽が完璧にマッチしたものだったから、とても満足しているよ」

©2006 松本大洋/小学館、アニプレックス、アスミック・エース、Beyond C.、電通、TOKYO MX   ©2006 Taiyo Matsumoto/Shogakukan、Aniplex、Asmik Ace、Beyond C.、dentsu、TOKYO MX