honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

KIRI × BREAKBOT × IRFANE

ED BANGER RECORDS 10周年。フレンチ・ダンスミュージック・シーンの今。

13 4/15 UP

photo: Kentaro Matsumoto text: yk

DAFT PUNKという絶対的なアイコンの下、世界的な大ムーブメントとなったエレクトロ以降も
常にフレッシュで個性的なアーティストが排出され続けているフレンチ・ダンスミュージック・シーン。
中でもその中心として存在するBUSY P主宰のED BANGER RECORDSが今年で10周年を迎えることを機に、
ジャンルは異なれどお互いの感性に共鳴する盟友三人に、その現状を訊いた。

 

──
エレクトロムーブメント以降、世界的にはEDMと呼ばれるコマーシャルなダンスミュージックと、ミニマルなテクノやディープハウスが主流となっていますが、現在のフランスのダンスミュージックシーンはどういった状況ですか?
BREAKBOT(以下: B )
「Brodinskiが主宰しているレーベル“Bromance”はとても調子がいいみたいだし、Surkin、Para One、Bobmoの“Marble”、Teki Latexの“Sound Pellegrino”もすごくクールなレーベルだよ。それからClub Chevalという4人組のチームも面白いし、Boston Bunというクレイジーなハウスを作るアーティストもいる。今のフランスは若いアーティスト達が自分たちのビジネスを自分たちでコントロールしようとしていて、とてもクリエイティブだと思う。本当にたくさんのことが同時に起きていて、すごくエキサイティングだね」
KIRI(以下: K )
「Boston Bunはペドロ(=Busy P)が最近Ed Bangerでサインしたアーティストだよね。彼が言ったように、今フランスにはすごくたくさんの新しいアーティストが出てきていて、来年頃にはもっと大きなムーブメントとして世界に知られるようになるんじゃないかな」
B
「去年のクリスマス前に開催したMarbleとBromanceのパーティなんて、2000人ものお客さんが集まったからね。まだまだアンダーグラウンドかもしれないけど、確実に盛り上がり始めているよ」
──
フランスのダンスミュージックはヨーロッパの中でも異質な雰囲気があると思うのですが、KIRIさんはどういった部分に魅力を感じていますか?
K
「ロマンティシズムと暴力性のバランスや、アーティストのキャラクターがはっきりしているところですね。ただ音楽を作っているだけではなく、ヴィジュアル面のイメージコントロールもしっかりとしていて、他の国よりも作家性が強い気がします。音楽をビデオやアートワークと合わせてトータルで打ち出している人たちが多いですね。Boston BunやClub ChevalのMydとPanteros666はビデオの監督としても素晴らしいし。それは僕もブランドをやる人間として大事にしているところで、服だけを作ればいいのではなく、お店の内装やBGMも含めて一つの世界観を作り出すように意識しています」

 

IRFANE(以下: I )
「確かにフランスのアーティストは音楽とヴィジュアルのトータルでイメージをコントロールしている人が多いね。全てはDAFT PUNKのおかげなんだけれど。彼らは僕らの先生のような存在だから、僕らも自然とヴィジュアルのコントロールに熱心なんだと思うな。それに、皆が同じことをしているのではなく、それぞれのスタイルで自分たちの世界観を作り出しているのが面白いよね」
B
「スタイルは皆違うのに、アーティスト同士がとても仲が良くて、お互いがお互いをサポートしているのがいいと思う。新しく作った曲を聴かせ合って、刺激し合っているんだ」
I
「ペドロという絶対的なボスもいるしね。彼を中心として、今の僕らのコミュニティーができているんだ」

──
やはり現在のフランスのシーンはDAFT PUNKから受け継いだDNAがペドロを経由して、どんどん若い世代に受け継がれているのですね。
B
「そうだね。そしてそのルーツはマイケル・ジャクソンなんだと思う。音楽はもちろん、彼のアーティストとしての見せ方というものは今だに学ぶべきところが多いよ」
I
「彼のイメージのパワーはものすごいよね。レコード一枚にしても、真っ黒なジャケットでリリースするのではなくて、アートワークやビデオをこだわり抜くというのは彼から学んでいる部分も大きいと思う。僕らの周りにはSO-MEという最高のアーティストもいるしね。そういえば、彼はもうすぐ自分の写真集を発売するんだよ」
──
自分たちのイメージをコントロールするという部分は、今の日本の若いアーティストに少し足りない部分かもしれませんね。
K
「日本人は基本的に右向け右な性格の人が多いので、情報が溢れている今、色々なところから影響を受けすぎてしまって、好き嫌いがはっきりしなくなっているんだと思います。毎日新しい物に触れることで、逆に自分のスタイルが定まらない人が多いんじゃないでしょうか」
B
「僕たちにとってはすごく意外だけどね。日本にはアニメや漫画もあって、ヴィジュアル的にもすごくクリエイティブだと思うけれど」