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THINK PIECE

The Elder Statesman

現代のラグジュアリーを体現する新進気鋭のニットブランド。

13 12/18 UP

photo: Yayoi Arimoto interview: Tetsuya Suzuki

最上級のカシミアやコットン素材のみを使用して、
ウエアからアクセサリーまでを展開するニットブランドThe Elder Statesman。
素材から製法まですべて自分たちで選定、管理し、
その素材を最大限活かしたコレクションは世界中から注目を集めている。
「最上質であること」を追求し現代のラグジュアリーを体現するブランドの哲学を、
デザイナーのGREG CHAIT氏が語る。

 

──
The Elder Statesmanのプロダクトはその価格帯からラグジュアリーブランドとして捉えられることが多いと思いますが、今の時代におけるラグジュアリーをどのように捉えていますか?
「まず、私が作っているコレクションは身近なスタッフはもちろん、工場の方、またこうしてインタビューをしてくださるジャーナリストの方々とのやり取りを通して完成した、非常に構造的なものなのです。これまでのラグジュアリーはマーケティングやブランディングによって作られていた部分が大きかったと思いますが、今はより個々の内面に訴えかけるような、本来の意味でのラグジュアリーが必要とされているのではないでしょうか。The Elder Statesmanでは、そういった原点に立ち返ったラグジュアリーを表現していきたいのです」

──
The Elder Statesmanのコレクションはあなたのライフスタイルやフィロソフィーが、そのままプロダクトに落とし込まれているように感じます。
「プロダクトを見ただけでそう感じていただけるのは何より嬉しいですね。まさにこうやってお話をしていること、普段の生活の中で目にするもの、考えること、そういったものすべてがコレクションに生かされています。私はモノ作りに対してオープンマインドなので、ファッション業界のルールやしがらみなどからは無縁な場所で非常に自由なクリエイションを続けていますが、The Elder Statesmanにおいてキーワードとなっている“最上質であること”は常に心がけています」

 

──
ファッションの世界でラグジュアリーというとコマーシャルかつインダストリアルなものをイメージしますが、The Elder Statesmanのコレクションはまるで一つのアートピースを作っているかのようですね。
「もし今のやり方から逸脱してしまったら、50年後にはThe Elder Statesmanもそういったコマーシャルなラグジュアリーブランドの一つになってしまうかもしれません。そうならないために、アトリエの近くに自社の工場を持つなど、今まさに環境を整えているところです。もちろん、ビッグメゾンのブランドに対してリスペクトはありますが、私とは方向性が異なるのです。自分の目の届く範囲でクオリティをコントロールすることで、自分なりのラグジュアリーを追求したいと考えていますし、アートやライフスタイルとの関わりなど、ファッションの文脈だけでは語ることのできないクリエイションが私には適しているのです。かといって、もはや自分のためだけにブランドを続けているわけではないので、それぞれの国や地域で私のクリエイションに共感してくれる方を増やしていきたいという気持ちはあります。それが結果、グローバルな規模にまで広がってくれたら幸いですね」
──
無理にマーケットを広げるよりも、価値観を共感する方に最高の品質で正しい伝え方をすることが、あなたにとっては重要なのですね。
「その通りです。ビジネスである以上、売らなくてはならないプレッシャーが全く無いといえば嘘になりますが、できるかぎりオーガニックな方法でそれを実現できるように意識しています。ビジネスライクなクリエイションになってしまうことを避けるために、需要と供給のバランスを注意深く観察して、生産数と在庫の管理は徹底していますね」