「ただ、その一方で、 “現在のシーンに無いものを作ろう”という考えは、デビュー時から変わらず今もあります。今、それこそダンスミュージックがボッブス化したEDMというのが、めちゃめちゃマスになっている。そうなると僕としては、いわゆる歌モノに興味がなくなってくるんですよね。とはいっても、10CCの「I’m not in love」をサンプリングに使えるというきっかけで、今回も歌モノを手がけました。でも、いわゆる四つ打ちにはしたくなくて、BPM130を半分に割ってゆるいバラードにしました。こういう感覚は以前もあったけれど、方向性が逆だったんですよ。僕がデビューした時は今から思えば、世の中的にCDセールスが絶好調の時期だった。そんなか、トリップホップ的なアブストラクトで重いサウンドとポップスが接近していたわけですが、当時の世の中の気分と流行の暗い音楽の落差に違和感があって、だったら、という思いで“FPM”っていう“おしゃれ”なスタイルをジョークとして作っていた部分もあるんです。もちろん、ジョークといってもクオリティは本気だし、ジョークです、ギャグです、っていう説明もあえてしないでいたけれど。その後、思いがけずラウンジブームに乗っかっていって、なんか、そういう方面に祭り上げられて居心地悪くなって、ラウンジっぽいのは止めたわけです。じゃあ、次は四つ打ちのハウスでメロディアスなものにしようと思って、2001年に「Beautiful」というアルバムをリリースしたわけですが、そういう音楽も現在の日本の音楽シーンで決して珍しいものではなくなっていますよね」