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THINK PIECE

少女時代

日本のエンタメに活を入れる!?
無敵の『少女時代』を読み解く。

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photo: Satomi Yamauchi interview: Tetsuya Suzuki

2009年に発表された『Gee』の大ヒット以来、一躍スターダムに登場した韓国ガールズグループ『少女時代』。
今では韓国、日本のみならず、アジアや欧米へと徐々に活躍の場を広げている。
その『少女時代』をアイドルグループ以上の存在として見守り続けているクリエイティブディレクターの梶原由景と、
『少女時代』スタッフであるユニバーサルミュージックの団野健から聞くエトセトラ。

 

──
いつ頃から『少女時代』をチェックするようになったのですか。
梶原由景(以下: K )
「ちょうど2年くらい前、『GENIE』(注1)が耳にずっと残っていて、CDをいくつか買ったのですが、それに入っていたライブ映像が良くて。アイドルにはあまり興味はなかったのですが、『少女時代』の歌唱力やパフォーマンスのレベルの高さに衝撃を受けました。ちょうど日本で注目され始めてまだ数ヶ月でしたが、韓国での活動歴はすでに長く、結成された経緯やアジア戦略のためのメンバー構成、英語圏の帰国子女、日本語や中国語が話せる子がいたり、彼女たちの可愛らしさも含めて掘りがいが半端なくて(笑)」
──
『少女時代』は、パフォーマンスだけではなく、ブランディング、マーケティング戦略がプロフェッショナルかつ、合理的につくられているということですね。
K
「海外のオタク向けはともかく、日本のエンターテイメントを輸出することを想定してグループが結成されることって基本的にはなかったので、新鮮でした」
──
韓国国内のマーケットが狭く、アジアを含む海外へ向けてマーケットをつくる必要があったということですか。
団野健(以下: D )
「日本だと売れてから海外進出を計りますよね。例えば、宇多田ヒカルは国内で売れてから海外進出したり。韓国ではデビューする前から世界全体を視野に入れて準備をしています」
──
韓国と仕事をする中、ビジネスにおいて合理性を感じますか。
D
「まず、韓国と日本では打ち出し方に違いがありますね。掘りがいがあったと梶原さんが話していましたが、それは韓国での活躍のことで、あちらではバラエティ番組に頻繁に出演したり、各メンバーがバラバラで活動しています。逆に日本では、バラエティ性を一切排除した“アーティスト”としてパッケージ化されています」
──
日本と韓国では、『少女時代』の打ち出し方に違いがあるのですか。
D
「日本では高いクリエイティビティや高級感を出したかったということです。“老舗ブランド店が立ち並ぶ表参道“といったイメージとか。たとえば、テレビ出演の場合、画角やカット割りを細かく調整したり、S.M.ENTERTAINMENT(注2)(以下、SM)はメンバー9人をどのように画角に収めたら1番見栄えがするのかを徹底して研究しているので、それを参考にカメラアングルを調整します」
K
「現場でオーダーするということですか?」
D
「カメラリハーサルの時にiPadで撮影して、それを見ながらカメラ割りの補正を局サイドにお願いします。9人がV字に並ぶカットが多いので、画角全体を対称に左右の余白も均等にしたり、曲のサビになると普通はカメラを寄りにするところを9人の引きで撮影してもらったりしています」

 

K
「ということは、Mステはかなり忠実に撮影されているということですよね」
D
「Mステは生番組なのでクルーが慣れていて臨場感を演出するのが本当にうまい。プロフェッショナルだと感じます」
──
日本のアイドルグループと比較されがちでありながら、実は違う。例えるとすればアメリカのガールズグループに近いのでしょうか。
K
「アイドルグループとしての在り方は、世界的に初といえるのではないでしょうか。楽曲はほぼ海外でつくられていて、韓国のものは少数なのでK-POPではないのでは?」
D
「たしかに世界中から楽曲を集めますが、メインは欧米のダンスミュージックです。特にスウェーデンやノルウェーといった北欧の楽曲も多く、エッジでゴージャスな雰囲気のものが多いですね。リミックスも海外著名リミキサーが担当しています」
──
振り付けはどこで?
D
「SMのブレーンに、世界のダンスミュージックを研究している優秀な振り付けチームが多数あるので、ほぼそこで振付けを行っています」
──
梶原さんはK-POPびいきをしているというわけではなく『少女時代』を特別な存在として注目しているとのことですが、他の韓国アーティストとの比較さえもナンセンスという感じなのでしょうか。
K
「ヴィジュアルを重視しない楽曲が良いグループもありますが、それだとわざわざK-POPを聞く必要もないかなと(笑) 。『少女時代』の在り方が興味の発端でもあったので。思うに、本来ならば日本でもSMが持っているようなシステムを持って『少女時代』のようなグループを日本につくることができたのではないかとも思います」
D
「ビジネスにおいても韓国のSMは、SAMSUNG(注3)やHyundai (注4)といった一流企業と同じく上場しています。そういった意味ではその様な企業と対等だと思います」

 

(注1):韓国で2009年6月に発売された『少女時代』のセカンドミニアルバム『GENIE』に収録されたタイトル曲。日本では2010年9月にデビューシングルとして発売。

(注2):1995年に設立された韓国を代表するエンターテイメント企業のひとつ。事業内容は芸能事務所及びレコード会社、所属アーティストは『少女時代』『BoA』『東方神起』など。2000年よりコスダック上場企業。

(注3):韓国最大の財閥企業。総合家電をはじめ、電子・機械・科学・金融・建設などを事業とする。韓国のGDPはサムスングループに依存している割合が高く、グル―プの経済状況は韓国経済に直接影響を及ばすほど。日本では東京に日本サムスンとして本社を置き、横浜と大阪に支社がある。

(注4):韓国の旧財閥であり、1967年設立の韓国最大の自動車メーカー「現代(ヒュンダイ)自動車(Hyundai Motor Company)」を指す。2001年より日本市場に参入、2010年には日本乗用車市場から撤退している。