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THINK PIECE

HOTEL NEW TOKYO

明るすぎず、暗すぎず。センチメンタルでハッピー。
HOTEL NEW TOKYO “yes?”

13 7/4 UP

photo: Satomi Yamauchi text: Tetsuya Suzuki

都会的であること、ファッショナブルであることを軽やかに肯定する
スタイリッシュな世界観と音楽そしてサブカルチャーへの深い愛情。
ホテルニュートーキョーのニューアルバム『yes?』は、
圧倒的に新鮮なアーバン・コンテンポラリー・サウンドトラック。

 

──
新しいアルバム「yes?」、とてもいいアルバムだと思います。アルバムとしては前作の「2009 spring/summer」から引き続き、ジャズ──場合によってはヒップホップ~R&B──の要素を感じさせながら、コンテクストとしてはポストロックをさらに進化させたサウンドであるように感じましす。いろいろなジャンルを横断しているんだけど、ルーツにはロックがあるのかな、と。ただ、それ以上に、どういった経緯でこういう音楽を今のようなソロユニットの形態で作るようになったのかに興味があります。
「もともとは、ずっとバンドをやっていたんですが、バンドを組んでは解散というのを繰り返していて。バンドをやっているとどうしても解散してしまうんです。それで、解散しないバンドをやりたいというところからソロプロジェクトが始まりました。2003年にパソコンを買って。最初は、どうやって音を作っていいのかわからなかったんですよ。なので自分のヴィジョンを作るのに、けっこう時間がかかりました。宅録のスキルが上がるまでは、今とは全然違うものになっていったんですよ。だから、1stと今では全然印象が違うかも知れませんね。最終的には今みたいな感じになった訳ですが、1stは宅録の延長線上というか」
──
ホテルニュートーキョーは、インスト曲が中心ですよね。けれど、そのインスト曲もすごくコンセプチュアルに作られていると思います。たとえば、前作に収録された「マークジェイコブス」という曲は、やはりタイトルが物語るものが多分にあるわけですよね。
「普通にインストをやっちゃうとジャンル分けされやすい。僕が目指しているのはそういうものではなくて。自分が影響を受けた音楽は、やっぱり“カルチャー”の中にある音楽だったので。例えばスケートボードをやっている人の音楽だったり、バックグラウンドが見えてストーリーがある音楽だったので。そういったものが好きなのです。自分の中で、そういった人たちに聴いて欲しいというか。音楽だけでなくても、建築だったりファッションだったり、スケボーだったりそういったものと一緒にひっかかれば嬉しいなと思って、キーワードとして付けている部分もありますね」
──
ホテルニュートーキョーは、ファッショナブルである、スタイリッシュである、都会的である、といったことをストレートに肯定している感じがあるけれど、そういう姿勢って今の日本の音楽シーンには、あまり無いじゃないですか。そういったカルチャーが好きだからというのもあると思うのですが、ご自身のスタイリッシュであることへのこだわりは何かありますか。
「どうですかね、自分の育って来た環境が大きいと思います。バンドの先輩とか。そういった人たちがとてもカッコよかった。だから自分もそういう風になりたいと思っていました。憧れというか」
──
でも、ホテルニュートーキョーはスタイリッシュというより、“ホテルニュートーキョーというスタイル”を作ろうとしているのではないですか。
「そうなればいいですよね。でも以前の方がそういうのは強かったかも知れないです、自分自身。物販でもトートバッグを生地から買って作ったり、高いストールを作ったり(笑)。物販の会場に、わざわざマネキンを置いてTシャツをディスプレイしたりしてましたね」
──
それは、ファッションに対するアイロニーとして?
「いや、なんか他とは違うことがしたかったんです(笑)」

 

──
今回のアルバムでは、ホテルニュートーキョーのサウンドが確立されたのかなと思います。そういった自負、自身はありますか?
「最初はよく分からなかったんですけど、周りの人に聞いてもらうと良かったと言ってもらえるので。良いものが出来たんじゃないかなと感覚はあります」
──
作っている時は?
「作っている時は、聴き過ぎてよくわからかった。何とか人に聴かせられるようにするのに必死で。よくわからなくなっちゃうんですよね」
──
参加するミュージシャンは、曲の完成形のイメージができてからオファーしたのですか?
「いや、最近は最初からずっと一緒ですね。ミュージシャンも曲ごとにポッとお願いするのではなく。十年来の友達がメンバーをやっていて、僕のイメージを分かってくれるんです。ちょっとしたキーワードを渡しただけでわかってくれるので、その辺はもう固定してるんです」

──
なるほど。曲作りは参加したミュージシャンと作って行った部分が大きいのですか。
「鍵盤の人がいるんですけど、その人と主に。音楽ってリズムとコードだと思うんです。それが楽しいのか、暗いのか、あるいは、踊れるのか、踊れないのかを決めるというか。それで、僕は“暗くもないし、明るくもない。踊れないわけではないけど、めちゃくちゃ踊れる訳でもない”というとこに行きたくて。そういう意味でもコードが大事で鍵盤の人と作るというのはあるかも知れませんね」
──
要は雰囲気ですよね。ムードというか。
「そうです、雰囲気です。それだけが一貫して変らないことですね。ムードです」
──
音楽以外のものにも、そういった雰囲気を感じる作品ってあると思うんです。明るくもなく暗くもない、センチメンタルでありながらハッピーである、というような。音楽以外のジャンルで共感できるアーティストやクリエイターっていますか?
「最近はですね、ライアン・マッキンレイ。かっこつけた感じですが(笑)。美術手帳でインタビューを読んだのですが。彼が制作する上でのコンセプトを聞かれていて『冒険的で美しく、刺激的かつ反逆的』と言っていて、その言葉がスッと来て。色々なことやっているけど、自分の中ではルールがあって。それをムードで表現しているのかもしれない」