honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

SHINICHI OSAWA

隠れた傑作「仕事」集とネクストを予感させるDJ MIXの2作品を同時リリース。

13 2/25 UP

photo: Satomi Yamauchi interview: Tetsuya Suzuki

洋邦問わず、他アーティストへの提供作、プロデュース作、リミックス楽曲など、
職人的な「仕事作」を集めた「大沢伸一の仕事 2008-2012」と
上村真俊とのDJユニット、OFF THE ROCKERによるリスニング仕様なDJ MIX「SOFA DISCO」の
2作品を同時にリリースした大沢伸一。オリジナル作品が待たれるなか、
大沢の「NEXT」を予感させるエポックなアルバムについて、自身が語る。

 

──
リミックスやプロデュース作を集めたコンピレーションと上村真俊さんとのユニットであるOFF THE ROCKER名義でのMIXCD「SOFA DISCO」の2タイトル同時リリースは、何か意図するところはあったのですか?
「それが全く僕の意図するところではないんです(笑)。いろいろな都合が重なって、たまたまこうなったといいますか。でも、SOFA DISCOに関してはとにかくこういった(クラブ的ではない)パーティがやりたかったので、まずはDJ MIXを。今はトラックができたからといって、すぐにリリースするという感じでもないので、こういうちょっと強引なタイミングを使って」
──
OFF THE ROCKERがDJの現場からのアイディアである一方、「大沢伸一の仕事 2008-2012」は、ー特にDisc1に関してはー 大沢さんの中でも特にコマーシャルな部分が表現されていますね。
「そうですね。こういう仕事もしているんだ、と驚く人も多いかもしれませんね。意外と働いているんだね、と(笑)。確かにDisc2の方はDJするときに使ったりするんで日常的に触れるんですけど、Disc1はその時々で完結すると言いますか、聴き直す機会もあまりないので、今回、改めて聴き返して、自分がこんなにいろんなことやっていることに我ながら驚きました。昔のアルバムの写真を眺めるような気分になります。それが一瞬を切り取った写真ではなくて、時間をかけた音楽制作なのでその時の生活感みたいなものまで蘇りますね。この時こんなことを試そうとしていたんだな、こんなアプローチがしたかったんだな、とか、その頃の自分のライフスタイルも含めて思い出します。レコーディングの日に着ていた服のことまで思い出しますよ(笑)」
──
どんな仕事でも入りこんでいくタイプ?
「そうだと思います。アレンジやプロデュースの仕事も、他人事だとは感じられなくて。アレンジといっても自分のサウンドをちりばめて音の出口を示すのは僕なので。無責任にしたくないし、最終的には自分の仕事です」
──
「大沢サウンド」に特徴的なのは音楽それ自体へのアプローチ、あるいはフォーカスの仕方ではないかと思います。音が尖っていると言うより、音楽への姿勢、向き合い方がエッジィなのではないかと。
「そのつもりでやっています。それがなかったら、音楽をやっている意味ないとすら思います。どんな仕事でもそうですけど、向き合い方です。気というか、気持ちの込めようですね。音に命を吹き込むわけですから」

 

──
けれど、大沢さんの「スキルと知識」が欲しいという人もいるのではないですか。
「いますね。そういう人とはぶつかります。与えられた物に対し、自分として最大限の僕の答えをぶつけないと気がすまないから。それが求められていたものと違う場合は時間がかかるんです。全部コラボレーションだと思っていますから、相手が喜ぶことするというのとは、ちょっと違いますね。プロデューサーといってもクリエイターなので。なので、全部お任せしますっていうのが一番やりにくいんです。ぶつけないといいものは出てこない」
──
例えばMEGさんの場合はいかがでした? コンテンポラリーな大沢サウンドが彼女に上手くマッチしているように感じます。
「岡村さんからの最初のラフなデモを聴かせてもらったら、メロディからのイメージを引き出すことができましたね。実はMEGさんは作詞に手こずっていたようなのですが、僕のアレンジによって歌詞が出てきた、と言われて嬉しかったですね。アレンジだけを頼まれまたわけですが、僕は曲から彼女らしさを出してあげられたと思っているんで」
──
逆にもう出来上がっている、有名な曲のリミックスに関してはどうですか。どれだけ原曲を裏切るか、という感じでしょうか。
「そうです。つまり、曲の再定義ですよね。それで言うとglobeのリミックスは、僕自身も気に入っていて。ドラムが入ってきそうでなかなか入ってこないところとかね(笑)」
──
ところで、いまさらながらの素朴な疑問なのですが、邦楽のコマーシャルなシーンと洋楽の、それもカッティングエッジなダンスミュージックのシーンを同時に見るって本当に可能なのかなって思うんです。
「普通そうですよね。コマーシャルなDisc1と僕のDJプレイに近いDisc2を並べると、改めて自分は特異な場所にいるんだなって自分でも思います。一方、DJの方でも、メインとしてはヨーロッパのダンスミュージックシーンと連動しているわけですが、そういう意味ではやはりOFF THE ROCKERのこのMIXCDもその“アザーサイド”になってくるんですよね」