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THINK PIECE

DEXPISTOLS『LESSON.8 “TOKYO CULT”』

国内シーンを牽引するDJバンドによる、LESSONシリーズ最新作。

14 4/7 UP

photo: Shoichi Kajino
text: yk

プロデューサー/リミキサーとして活躍するDJ MAARと、デザイナーとしてもキャリアを続けるDJ DARUMAによる
2ピースDJバンドDEXPISTOLS。国内ダンスミュージックシーンを代表する彼らが発表する"LESSON"シリーズは
常にシーンに多大な影響を与えており、前作からの2年間もその新作が多くのファンによって待ち望まれてきた。
そして遂にリリースされた『LESSON.8 “TOKYO CULT"』では、既存のトラックをDEXPISTOLS流にジャックした
"Lazy Edit"を中心に、彼らにしか作ることのできない"異物感"にまみれた作品となっている。

 

──
前作「LESSON.07 "Via"」をリリースしてからの2年間はDEXPISTOLSとしてはもちろん、ソロとしての活動も目立ちましたね。
DJ DARUMA(以下:D)
「僕はカルチャーとしてというより、音楽ジャンルとしてのヒップホップに改めて面白さを感じています。サウスのムーブメントがトラップやダブステップの流れと融合してUSのマーケットが盛り上がっていて、いわゆる本筋のヒップホップが面白くなりました。Tyler, the Creatorが出てきた時に個人的にもグッとヒップホップに惹き付けられて、A$AP MOBが出てきたしたことで、さらにまた何か新しいことが始まるぞという感覚がありましたね。そのヒップホップやトラップの融合を自分の中で一つにできるという思いがあったのですが、韓国のDEADENDというクルーがまさにそれを体現していたのには驚きました。彼らの影響もあって、それを日本でもやろうとしているのがここ最近の個人の活動ですね」
──
DEADENDは以前来日した時は原宿のUCでプレイしていたクルーですよね。
D
「そうです。韓国ではCakeshopという箱を中心にで活動しているのですが、DJ達がヒップホップとエレクトロニックミュージックの行き来を"普通に"するんです。それでお客さんがガッツリ盛り上がるというシーンを築き上げていて、本当にかっこいいんですよ」
──
ヒップホップが盛り上がっているという現状は、DARUMAさんにとっては新しいものであると同時に、ある種の懐かしさを感じさせるものではないですか?

D
「いや、A$APなどのスクリューの流れやトラップなどサウス以降のサウンドに関しては真新しいという捉え方しかしていないですね。ただJoey Bada$$やFlatbush Zombiesのような、ヒップホップの中でもまた違う文脈には懐かしさを感じる部分があります。彼らのサウンドは完全に90'sのヒップホップからの影響が感じられて、かつファッション的な部分は超2010年代のもので、若いヘッズ達はそこがフレッシュだと感じているではないですかね?それとTyler, the CreatorにはかつてN.E.R.Dがでてきた時の異物感を感じて面白かったんです。で、そこに加えて最近の日本語RAPの盛り上がりとポストダブステップ以降のエレクトロニックミュージックとのリンクを図ることで、新しいヒップホップの流れを日本で作ろうとしてきたのがここ2年間の活動で、それは今回のミックスでも取り入れられている部分ですね」

 

──
その一方でMAARさんはちょうど2年前からSupermaarという新しい名義をスタートさせましたよね。
DJ MAAR(下記:M)
「今のDARUMA君の話の流れで言うと、KANYE WESTがDAFT PUNKを使ったりSwizz BeatzがJUSTICEを使ったり、A$AP ROCKYがSkrillexをフィーチャリングしたりという、メジャーシーンが常にアンダーグラウンドから面白いものを探してフックアップするUS的なスタンスは面白いですよね。ただ一時期それが行き過ぎて、アンダーグラウンドな人達がメジャーを見出すようになったことで、ラップや歌を抜いただけ、もしくは中途半端なものが乗っただけの曲が増えてしまったんです。僕はそこでベースミュージックに対する興味が少し薄れてしまいました。そんな時にたまたまRaft Tokyoというパーティに遊びに行ったら、ゲストがアンダーグラウンドなアーティストだったにも関わらず集客の面でも内容の面でも完全に成り立っていて、それがきっかけになってSupermaarをはじめたんですよ。それをこの2年間やって、自分としてもDEXPISTOLSとしても、また違うタームに入ってきているように感じます」
──
お二人がそれぞれで培ってきたものをDEXPISTOLSとして落とし込むことに苦労はありましたか?
D
「ここ最近は特に感じないのですが、二人の中でDJが良かった時、悪かった時が必ずしもお客さんのリアクションと比例しているわけではないので、出演するパーティにもよるのかなと思います。でも基本的にはどんなお客さんの前でも安定的に良いDJができていると思っているんですけど、どうですか(笑)?」
M
「いや、そうだと思うよ。もちろん世の中の気分みたいなものがあって、それによって世界観や空気感が変わってきますが、パーティの規模やお客さんの数ではなく、継続的に良いプレイをすることはできていると思います」
D
「だから、自分たちが良かったと思ってもお客さんの反応がイマイチな時はあるんですよ。そういう時は"良かったんだけどなぁ"とかぶつぶつ言いながら帰るんですけど(笑)。お客さんの反応を見てそれに合わせることもありますけど、自分たちでもどこへ向かっているのか分からないでヒヤヒヤするようなDJが好きなんです」」
M
「それはすごく分かる。きっと僕らだけではなく、日本人ってジャーニー感があるDJや音楽が好きなんだと思うんですよ。四季や喜怒哀楽を作品に色濃く反映させる人が多いし、なんだかんだ言いながら個人的にもそういうものが好きです。東京という都市自体も、それこそどこに向かっているか分からない、渦みたいなものですよね。うかつに踏み入ると巻き込まれてしばらく出てこられないという(笑)。僕自身、渦に巻かれ続けた2年間でした(笑)」