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THINK PIECE

NINA KRAVIZ

ロシア発、世界を席巻する才色兼備のDJ/プロデューサー

14 7/3 UP

photo: Ai Ezaki, Kenichi Yamaguchi (LIVE)
interview & text: Misho Matsue

ベルリンを拠点に世界を飛び回るDJ/プロデューサーのニーナ・クラヴィッツ。
その飛び抜けて美しい容姿につい目を奪われてしまいがちだが、彼女はハウス、テクノシーンでトップDJに数えられる
実力派であるばかりか、2012年に発表したアルバム『Nina Kraviz』ではディープでセンシュアルなトラックメイキングで
世界を驚かせた才能の持ち主だ。まさに「天は二物を与えた」と呼ぶにふさわしい彼女が5月、大阪・名古屋・東京を回る
ジャパンツアーを終え、渋谷の街でレコードハンティングする姿をキャッチ。

 

──
今回はDJツアーでの来日でしたが、ツアーの感想を教えてください。
「まず、また日本に戻ってこられたのがうれしいわ。大げさでなくツアーも素晴らしくて、どのショウもスペシャルな経験になったの。大阪や名古屋では寛げる雰囲気を味わえたし、東京では大きなイベントのインターナショナルなエネルギーを感じられたし、今回新たに出会えた人々のおかげで日本をもっとよく理解できたと思うわ」
──
滞在中はどう過ごしていたのですか。
「どの街を訪れる時もそうなんだけど、レコードショップでは長い時間を過ごしたわ。それからショッピングね!いつもその場所ならではのモノを探しているんだけど、ハイテクな現代性と伝統が共存している日本のユニークさは、レコードショップにも、レストランにも、ボタンがたくさんあるウォシュレット付きのトイレにも(笑)、それからもちろんファッションにも表れていると思うの。日本のファッションデザイナーはクラシックなスタイルをベースにしているけれど、ディテールにひねりがあったり、ミニマリズムを独自に進化させたり、モダンなインスピレーションに溢れていたり、私にとって日本のファッションの印象はシェイプ、テクスチャー、それからプリントなの。特にコム デ ギャルソンやジュンヤ ワタナベ、それにヴィンテージのケンゾーや、最近はトーガも大好き。私はストッキングのコレクターなんだけど、ユニークなデザインを探していた時に友人でデザイナーの(瀧見)サキにトーガに連れていってもらって以来、すっかりお気に入りよ」

──
いまファッションについて熱く語ってもらったように、スタイリッシュなアートワークやDJプレイの様子などを見ていても、こだわりの強さが窺えます。多忙を極める人気DJとして活動する傍ら、アルバムを発表したり、オリジナルトラックにご自身のヴォーカルを使用したり、PVにも出演するなど、セルフプロデュースマインドや美意識が徹底されている印象です。
「どの要素も私にはとても重要だから何でも自分が関わりたいの。コントロールフリークなのかもしれないわ(笑)。世界中の都市でDJをしているけれど、私のイメージするレベルで一緒に動いてもらえる人に出会えていないから、いまのところマネージャーも付けていないし。レーベルのスタッフをはじめ、もちろん周りには素晴らしい人々ばかりで、彼らにはとても感謝しているから悪い意味にはとらないで欲しいのだけど。自分の知らないところで何かが決まっていくなんて、ちょっと想像できないわ」
──
DJ活動とプロデュースワークとはどのようなバランスで成り立っているのですか。
「スケジュール上、スタジオに篭る時間はなかなか取れないけれど、時間を見つけて集中することがとても大切なの。曲作りとDJプレイとはお互いにインスパイアし合うものだから、2つで一つの円になっているというか。DJプレイ、トラック制作、そしてライヴパフォーマンスにも共通する素晴らしい点は、自分らしいエモーショナルな表現ができること。喜び、悲しみ、怒りなど、

 

その時の感情や本質がそのまま表れるの。音楽に接する上での両者の大きな違いといえば、作曲やリミックスではトラックは完成した時の私を表していて、なおかつクラブでのプレイによっても印象が変わるものだけれど、DJとしての私の役割は、一曲一曲にフィーリングを乗せて、いまそこにいる人々を“旅”へと連れて行くこと。その行き先は予測不可能で、どんなパーティーにおいてもその夜がどうなるのか、最初のレコードに針を落とした時にはまだわからないの。慌ただしい毎日だけれど、いまでも多くの時間を中古レコードショップで過ごしているので、夥しい数のレコードと向き合っているわ。まずはカバーを見て、それからサウンドを聞いて、さまざまな時代に作られた曲それぞれが表現する素晴らしい世界に浸るの。日々、そういった経験を自分でもしているから、時代やジャンルを折衷するように、同時に私らしさを表現するサウンドであるように意識しているわ」
──
EP『Mr Jones』について教えてください。また、Mr.ジョーンズとは誰なのでしょうか。
「2012年にデビューアルバム『Nina Kraviz』を発表しているけれど、このEPはこの春にリリースした日本向けの限定盤CDよ。タイトルトラックの“Mr Jones”は、2008年に私が初めて作ったトラックを進化させた曲。ちなみに、オリジナルバージョンもHome Listening Mixとして収録しているわ。それから新曲の“Desire”やデトロイトのアーティスト、ルーク・ヘスのスタジオで録った“Remember”、

そういったいまのフィーリングと音楽を作り始めた頃のパッションとのミックスがこのEPのコンセプトで、基本的には私の声をレイヤーで重ねていき、ヒプノティックなエフェクトをかけているわ。いまの時代、人々はどこへ向かうべきなのか、何を選択すべきなのかを模索しているでしょう?カバーの写真に顔が写っていないように、Mr.ジョーンズは誰かであり誰でもない存在。そして、誰かが迷いを感じる時に現れ、自分に正直であるかどうかを訊ねてくるの。こんなふうに、直感に従って自由な発想を形にできる時間は、私だけでなくすべてのクリエイターにとって大切だと思うの」
──
これだけ多忙かつクリエイティヴな日々を送る上で、仕事とプライベートのスイッチを切り替える瞬間はあるのでしょうか。
「そうね、もともと変化を好むカメレオンみたいなタイプだから、ナチュラルに過ごしているわ。それにこの仕事を心底楽しんでいるの。音楽で生活するようになる前には歯科医として働いていたけれど、もちろん人々の助けになる職業で素晴らしいとは思うものの、私にとっては広い視野を持てる仕事ではなかったから。特に一つの場所に留まるところが私には物足りなくて。音楽のあるところでさえあればどこへでも出かけ、いろいろなカルチャーや人々に出会うことにすごくワクワクするの。仕事の方向性やミッションと性格がリンクしているから、自分に何か強いることなくとにかく楽しんでいるわ」

 

Nina Kraviz「Mr Jones」

品番:KCCD-562
価格:¥1,543(税込)
取扱店舗:タワーレコード全店、TOWERmini全店、TOWER RECORDS ONLINE
Now on Sale

1. Desire
2. Mr Jones(Mix1)
3. Nina Kraviz & Luke Hess - Remember(Epic Moment Mix)
4. Black White
5. So Wrong
6. Sheer
7. Mr Jones(Original 2008 Home Listening Mix)
8. Nina Kraviz & Luke Hess - Remember

http://www.ksr-corp.com/label/discs.php?disc_id=425