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photo: Takehiro Goto
interview & text: Eiji Kobayashi
1990年代初頭に登場するやいなや、現代社会に生きる人間の孤独を独特のスタイルで描いて、世界にその名を轟かせた
台湾の映画監督・蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)。近年ではアートや演劇のフィールドでも活躍の場を広げる彼が
昨年のヴェネチア国際映画祭で「劇場映画として最後の作品」と表明した、『郊遊〈ピクニック〉』がついに公開される。
極限まで削ぎ落とされた台詞と、それ以上に雄弁に語る男女の顔、圧倒的な強度を持った画面の長回しのショットの
連なり……。デビュー作から主演を務めてきた李康生(リー・カンション)と彼の作品を支えてきた3人の女優、そして
常連スタッフが結集して作り上げた蔡明亮の集大成ともいえる驚異的な作品だ。その誕生には、
重要な舞台の一つとなっている廃墟と、そこに描かれたある壁画との幸運な出会いがあった。