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THINK PIECE

MASH HD MEETS EXPERIMENTAL JETSET

エクスペリメンタル・ジェットセットが描き出す
マッシュホールディングスのビジョン

15 12/25 UP

photo: Kentaro Matsumoto
text: Kohei Onuki

スナイデル、ジェラート ピケなどのファッション・ブランドをはじめ、フード、デザイン、ビューティーなど、
様々な領域で、野心的なビジネスを展開するマッシュホールディングス(以下: マッシュHD)。
そのマッシュHDが今年、「ウェルネスデザイン」をコーポレート・フィロソフィーに掲げ、
新たなCI(コーポレート・アイデンティティ)を発表した。その新たなCIを手がけたのがアムステルダムの
デザイン・ユニット、エクスペリメンタル・ジェットセット。デザイン先進国であるオランダ、
そして世界的にも評価の高い彼らがマッシュHDのCIに込めた想いとは。

 

エクスペリメンタル・ジェットセット

マリエケ・ストーク、アーウィン・ブリンカーズ、ダニー・ヴァン・デン・ダンゲンの3名により、
1997年、アムステルダムで結成されたデザイン・ユニット。シンプルで力強いメッセージ性のある作風が特徴。
代表的な作品に、アムステルダム市立近代美術館、ホイットニー美術館のCIなど。

http://www.experimentaljetset.nl

 

──
マッシュHDが今年、「ウェルネスデザイン」というコーポレート・フィロソフィーを掲げ、CIを刷新しました。エクスペリメンタル・ジェットセットの皆さんが今回、新しいCIのデザインを手がけることになった経緯を教えてください。
ダニー・ヴァン・デン・ダンゲン(以下: D)
「マッシュHDより新CIのデザイン制作依頼をいただいて、私たちは先ず、マッシュHDとはどのような会社なのか、を調べました。そこで、マッシュHDはファッションをはじめとし、オーガニック・フードなどの食やビューティーなど、多岐に渡るビジネスを展開していることを知りました。今回マッシュHDは『ウェルネスデザイン』というフィロソフィーに掲げて、CI変更をしたわけですが、オーガニック・フードへの取り組みなど、マッシュHDの提案するライフ・スタイルに、私たち自身、共感できる部分が非常に多く、今回のプロジェクトに参加させていただくことになりました」
──
マッシュHDが今回のプロジェクトをなぜ皆さんにお願いしたのだと、ご自身では思いますか。
アーウィン・ブリンカーズ(以下: E)
「マッシュHDが世界中の数あるデザイン・オフィスの中から私たちを選んでくれたことは非常に光栄です。

マッシュHDの今回のプロジェクト・チームに、以前から私たちの活動を知る人がいたこともあると思いますが、2013年にニューヨーク・ホイットニー美術館のグラフィック・アイデンティティを私たちはデザインし、そのプロジェクトは目を引くものでもあったので、マッシュHDが社内のプロジェクト・チームで私たちの起用を考えてくれたのだと思います」
──
新しいCIを作る中で、最終的なデザインに至るまでの流れを教えてください。

 

D
「デザインを行う前のテーマ設定をする際、先ず“MASH”という社名から“MIX”という言葉を私たちは連想しました。その“MIX”という言葉をテーマにスケッチアウトを始めました。また、私たちのデザインはメタボリズム(1959年に黒川紀章や菊池清訓ら日本の若手建築家、都市計画家グループが開始した建築運動。社会の変化や人口の成長に合わせて有機的に成長する都市や建築を提案した)から大きな影響を受けているのですが、マッシュHDの新社屋もまさにメタボリズムの思想を受け継いだ建築でしたので、新しいCIにもメタボリズムの考え方を反映させました。“MIX”というテーマとメタボリズムの考え方がデザインのポイントです」
──
マッシュHDはファッションやフード、ビューティー、スポーツなど、様々な部門が有機的に交わり合い、そして拡張していく。という意味が新しいCIに込められているのですか。

D「まさにその通りです。メタボリズムには、様々な要素が有機的に結びついて拡張していく、という考え方があります。そのメタボリズムの概念とマッシュHDのあり方とに、私たちは共通する部分を見出しました。新しいCIでは、いろいろな方向を向いた矢印などがある一定の規則に従ってデザインされているのですが、それはマッシュHDの様々なビジネスの展開、というものが表現されています。一見するとカオティックに思える部分もあるかと思いますが、同時に一定のルールに則ったデザインがなされています」
E
「“MASH”の文字などを見ていただくと、少し幾何学的な構造になっていますが、これらの書体は全てカスタム・フォントです。今はその書体に名前が無いので、『マッシュ・フォント』と名付けなければいけないですね(笑)」
──
デザインをする上で、3人の役割分担はあるのですか。

 

マリエケ・ストーク(以下: M)
「3人がそれぞれ異なるアイディアを出して、その中から、デザインとして強固なもの、普遍的なものをディスカッションして選び、デザインを詰めていきます。3人で多数決を取り、2人以上が賛成した案でデザインを進めていきます」
D
「アイディアを選ぶときは『そのデザインが普遍的なものになりえるか』ということをテーマに議論を重ねていきます。実際のデザイン作業と同様、デザインの土台となるテーマやコンセプト設定にも多くの時間を割きます」
──
確かに新しいCIを拝見すると、一見カオティックな印象がありながらも、シンプルでいて、普遍性を感じさせます。
M
「また、今回のデザインでは『CIが今後も拡張する余地を意図的に残している』というのもポイントです。というのは、通常私たちがCIなどのデザインをする際は、細かな部分まで自分たちでコントロールする場合が多いのですが、マッシュHDには、社内に優秀なデザイン・チームがあるので、ベースのデザインは私たちが作り、

以降のデザインの展開については、マッシュHDのデザイン・チームに委ねる形にしています。そのため、デザイン・チームの皆さんの手で、ベースとなるデザインが今後どのような広がりを見せるのか、非常に楽しみです」
──
CIのデザインを通じて、「ウェルネスデザイン」というフィロソフィーのもと、ファッション、フード、ビューティー、スポーツなど、様々な事業を行うマッシュHDという会社、そして組織自体のビジョンが明確に形作られているような印象を受けます。
D
「私たちはデザイナーですが、デザインを通じて、またデザイン、グラフィックというある種の『言語』を通じて、マッシュHDの今後のビジョンを明確にするお手伝いをしている、という思いでいます。また、そのようなお手伝いをできることがデザインの付加価値だとも思います。今回、近藤社長はじめマッシュHDの皆さんとこのプロジェクトを行い、デザインを通じ、とても良い形でマッシュHDの今後のビジョンを示すことができたのではないかと思います」