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HIBANA

廣木隆一監督、主演の林遣都、波岡一喜が語る
ベストセラー小説『火花』のドラマシリーズ。

16 6/13 UP

photo: Aya Yamamoto
Interview&text: Aika Kawada
stylist: Yonosuke Kikuchi(Kento Hayashi),Masahiko Kuroda(Kazuki Namioka)
hair&make-up: SAYAKA(Kento Hayashi,Kazuki Namioka)

又吉直樹のベストセラー小説『火花』が全10話のドラマシリーズとなって、190カ国にむけて常時ストリーミング配信された。
漫才の世界に身を投じ、「お笑い」を追求する2人の若者の師弟関係を描いた本作は、
夢にかける純粋な情熱とその儚さ、2人をとりまく人間関係の変化を描く。原作に加筆されたエピソードも含め、
4Kの映像技術を駆使した映像美と大胆なカメラワーク、フレッシュなキャスティングが功を奏した
魅力的な出演陣により、原作の世界観からさらに一歩踏み込んだ奥行きのある映像作品になっている。
ストリーミングの封切りにあわせ、廣木隆一監督、主演の林遣都と波岡一喜にインタビュー。

 

──
ハニカムでは、Netflixの L.A本社取材 もさせていただき、オリジナルドラマシリーズの規模感や配信の形態がいわゆる日本のテレビドラマとは違うと認識しています。廣木監督は、Netflixの作品を撮影されてみて他のドラマの撮影現場とどんな点で異なっていると感じましたか。
廣木隆一(以下HR)
「一番の相違点は尺ですね。作中に一切CMが入らないですし、『一話◯◯分以上』という条件があるだけで、きっちりと一話における長さが決められていたわけでもありませんでした。そこは作品のクオリティを優先できるので、やりやすかった部分ですね」
──
4Kでの撮影とのことで、映像に映画のような深みを感じたのですが、何か手応えがあったのでは。
HR
「細部まですごくクリアに映るので、全体的にデジタルなテクスチャーではなくて、映画的なフィルムルックな画にしました。4Kは繊細な風合いも出してくれるので助けられたとも思いますし、何より撮影していて楽しかったです」
──
10話を通して演者さんのキャラクターがあまりに素で、ドキュメンタリー性があるようにも感じました。林さんと波岡さんをキャスティングされた理由を聞かせてください
HR
「まず、関西弁ができることですね(笑)。これは、著者の又吉さんにも『出演者は関西弁が話せる方でお願いします』と頼まれました。芸人さんのオーディションも吉本興業さんに協力していただき、ぴったりな人を選ばさせていただけました」
──
林さんは、関西弁が喋れるということをアピールして主役の徳永役を掴んだと伺いました。
林遣都(以下HK)
「実は……舞台挨拶でみんな面白いことを言うから、なんか言わないといけないなと思ってオーバーに言っただけなんです(笑)」
波岡一喜(以下N)
「ものすごい大きく見出しに取り上げられていたな(笑)」
HK
「実際、そんなアピールできる場所もないので……。でも腹の中ではずっと、『俺、関西弁喋れる』とかなり強く思っていましたけど(笑)」
N
「滋賀県やけどな!」
HK
「まあそうなんですけどね」
──
関西の方にしか分らない言葉の違いはあるのですか。

 

N
「いや、ほとんどないです。大阪が滋賀を上から見ているっていうだけですね(笑)。僕は、まさに今回の撮影のロケ地のすぐ近く、大阪の天王寺というところが地元です」
──
作中のカリスマ芸人神谷は強烈なキャラクターですが、ご自身は芸人になりたいと思ったことはありますか
N
「何度か芸人を勧められたことはあります。大阪にいた中学生の頃から俳優になりたいと思っていたんですが、親にも『大阪やったら吉本があるから芸人になったらええやん』と言われていました」
──
林さんは念願の徳永役だったわけですが、この役を掴みたいと思った理由はどこにあったのでしょう。
HK
「まず、日本中で話題になり多くの人が原作を読んだ、誰もが知っている作品に参加できる機会はなかなかないので、なんとしても掴みたいと思いました。それに、原作を読んで徳永という人物を他人だとは思えなかったんです。自分も夢を持って東京に出てきて、その中でいろいろな苦労や喜びがあったからだと思います。自分の経験したことを、この役を通して表現したいと感じました」

(c)2016YDクリエイション

 

──
林さんはお笑いコンビ「井下好井」の好井さん、波岡さんは「とろサーモン」の村田さんと、それぞれ作中でコンビを組んでいました。お二人が漫才に挑戦するにあたり、本職である二人から何かアドバイスはありましたか。
HK
「もちろん漫才をするのは初めての経験でしたが、かなり早い段階で、お笑いを習うくらいの姿勢じゃないとやっていけないなと気付きました。そこからは密にコミュニケーションを重ねて、時間の許す限り練習しました。好井さんに僕の家に来てもらったりもして。好井さんと村田さんが純粋に面白くて、この人たちの話を素直に聞いていれば、面白いものができるんじゃないかと思いました」
N
「芸人になりきろうと、相方の芸人さんを信じて、頼って、尊敬して、神のように崇めていましたね。右といえば右、左といえば左。僕の場合、村田が『波岡さんこれどうします? どっちがいいですか? 』って結構聞いてくれたんです。でも、『逆に村田はどっちがいいと思う? 』って聞き返して、『こっちです』と言ったら、『じゃあそっちで』と。俺にとっては村田がすべて。遣都にとっては好井がすべて」
──
笑いを引き起こす場面がいくつもありましたが、好きなシーンはありますか。
HK
「僕も試写で全話を通して見ましたし、家でも何回か見直したんですけど、やっぱり最後。神谷がいきなりおっぱい入れているところは、めちゃくちゃ面白かった(笑)。ただでさえどうしようもない状況なのに、巨乳のおじさんがいるだけで、『なにやってんだよ』っていう。あそこが好きです」
N
「それを遣都から聞いて、僕は面白くしようと思って演技をしなくてよかったな、と思います。ただどんどん落ちていく神谷、駄目になっていく自分にだけに向き合って演じていたので。結果として面白くなったのなら、良かったな」
HK
「あのシーンは撮影の終盤で、乗り越えなければいけない大変なシーンだったんです。あれは二人だけの世界の話で、二人だけの涙でもあったので、すごく集中して演じました。やり切ったときに大きな達成感がありました。でも映像で観たときに、周りの人たちはケタケタ笑っていて。一生懸命やってよかったなって(笑)」