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THINK PIECE

WITHAM × Jean Jullien

ファッションブランドWITHAMと、
グラフィックデザイナーJean Jullienによるコラボレーション

16 2/29 UP

photo: Masaki Sato
text: Ryu Nakaoka

新進気鋭のファッションブランド「WITHAM(ウィザム)」と、フランス出身、ロンドン在住のグラフィックデザイナー
Jean Jullien(ジャン・ジュリアン)がコラボレーションし、アパレルプロダクトを発表。
これを記念して、渋谷のギャラリー「アツコバルー」で、3月4日(金)から6日(日)にかけて展覧会を開催する。
パリ同時多発テロの際に発表した「Peace for Paris」が世界中の共感を呼んだ
Jean Jullienとは、一体どのような人物なのか。インタビューを敢行した。

 

──
WITHAMとのコラボレーションの経緯を教えてください。
「パリで私が開催したPETIT APPETITというシリーズの展覧会にダイスケ(WITHAMプロデューサーの佐々木大輔)が来てくれて、作品をとても気に入ってくれたのがきっかけです。そこで意気投合し、一緒にプロジェクトをはじめることになりました。WITHAMは横浜にショップを構えていて、横浜は歴史ある港街であることから、貰ったテーマはアートに開かれた港=”ART HARBOUR”。私の作品も全ての人に開かれていますし、アートは世界をつなぐものとして考えているので、とても面白いと思い、喜んで引き受けました。描き下ろしのグラフィックをWITHAMの服に提供し、そのグラフィックを中心に展覧会を開くという企画全体が今回のコラボレーションです」
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コラボレーションによるグラフィックには、“NO FISHING”という言葉が繰り返し使われています。この言葉にはどのような意味が込められているのでしょうか。
「これは私の勘違いがはじまりなんです。横浜の港から着想を得た”ART HARBOUR”というテーマを聞いたときに、私は”漁港”をイメージしました。しかし実際のところ、横浜港は漁港ではなかった(笑)。だから、『NO FISHING(釣り禁止)』をキーワードにしたんです。ナンセンスなユーモアを感じるところがいいですね。アクシデントから生まれたものは人を驚かせる働きをするので、とても好きです」

左「WAVE」 右「KISS」

Tシャツ 各¥6,500/WITHAM

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Jeanさんのグラフィック作品はユーモラスで、世界中の人に届くキャッチーさがあると思います。このような作風になったのはなぜでしょうか。
「もともとはアニメーションやコミックを作りたいと思っていたのですが、行きたい学校に入ることができず、ブルターニュの小さな学校でグラフィックデザインを学びました。そこでの素晴らしい教師たちとの出会いが、今の作風に直接的な影響を与えています。レイモン・サヴィニャックやポール・ランド、ソール・バスといったコマーシャルな業界で活躍したグラフィックデザイナーたちのことを知り、クリエイティビティはカルチャーやアートといった分野のためだけにあるものではなく、ビルボードやポスター、商品のパッケージといった商業的な世界でも力を発揮するものだとわかって、感銘を受けました。また、私が得意とするのは、美しい絵画というより、メッセージを人の心に響かせてコミュニケーションを生むようなグラフィックを描くことだと気づいたのです。それ以来、アートギャラリーでも街中でもTシャツのプリントでも、あらゆる場所で人々のイマジネーションとクリエイティビティを喚起させる、イメージの驚くべき力に魅了され続けています」

 

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パリ同時多発テロの直後にInstagram上に発表されたピースマークとエッフェル塔を重ねた作品「Peace for Paris」は、インターネット上で大きな共感を呼びました。
「あの作品は事件の報道を見て即興的に描いたもので、正直あそこまでの反響は予想していませんでした。普段の私の作風とは違うものであり、あまりに急速にシェアされたので戸惑う部分もありましたが、今になって思うのは、優れたイメージは、翻訳なしで世界中の人々とコミュニケーションをする力があるということです。あのとき、グラフィックに込めた平和に対する願いが一瞬にして理解され、世界中の人々の琴線に触れて、気づかぬうちに国籍や文化や年代や育った環境などを超えて伝わりました。イメージは素晴らしくパワフルであるということを、身をもって体験しましたね。思いやりがあれば、感じたことを誰かに伝えるのは、社会に対してポジティブで建設的な意味を持つと思っています」

「Peace for Paris」