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THINK PIECE

STONED GREEN APPLES

SGAが考える「“ポップ”とは何か?」

09 4/30 UP

Text:Tetsuya Suzuki Photo:Kentaro Matsumoto

昨年、衝撃のデビューを果たした女性2人組バンド、STONED GREEN APPLES。彼女たちの何が衝撃かというと、「本当に」ギターとドラム、そして2人のボーカルだけでライブはおろかレコーディングもなされ、それが揺るぎない個性をともなった「ロック」として成立している、という点であった。付け加えるなら、キュート&スタイリッシュな2人のルックスも相乗効果を生んでいただろう。が、しかし。この2ndはさらに衝撃。なぜなら、歪んだギターと切れの良いドラムは一層の進化を遂げ、シンプルながら力強い、グルーヴィな「ロックバンド」として急成長を見せつけているのである。

 

──
まず、この2ndミニアルバム『Will You Marry Me ?』では、バンドとしてのグルーヴというかサウンドのキレが格段に良くなっていると思うのですが……
AYA(以下:A)
「それ、自分でも思う(笑)。でも、何か特別なことをやったり、意識したわけでなく、自然に音を出していたらこうなったんですよ。『もっとグルーヴを!』とかは特になかったんですが」
CASS(以下:C)
「なんか、単純に上手くなったんだと思う(笑)」
──
音が完全にロックバンドになっている。今回はそこが良いです。一枚目は、音楽としてのはっきりした姿がみえづらくて、やる方も聴く方もお互い遠慮しているみたいな雰囲気だった。結果、その緊張感が良かったけれど。
C :
「1枚目はとにかく『いじらない』でおこうとしたんですが、今回は曲によっては結構いじってる。コーラスの入れ方とか。それが良かったのかな(笑)。前作は素材だけで出していたのを、今回は少しドレッシングをかけているというか」
A :
「やっぱり、ライブから得たものも大きいと思いますし、レコーディングのなかでエンジニアの方から学んだものもありますね。ロック感を(笑)。一枚目のときはもっと構えていたというか、こうしなきゃ、ああしなきゃみたいなものがあったんですが、今回はどの楽曲ももっと自然な流れでできた。やっぱり1stを出して、そしてライブをやっていくなかで、自分たち自身でも『SGA的な音楽』というのがわかってきて、その『SGA的な音楽』というものが自然に出てくるようになったんだと思います」
──
SGA的な音楽とは?
C :
「なんだろう? 言うこと聞かない感じかな(笑)」
A :
「上手く言えないけれど、風船みたいにフワフワしているんだけれど、しっかりと支えている部分がちゃんとある、というか。その支えているものは何かと聞かれたら、それは『ポップ』ということなんだ思います」
──
SGA流のポップが感覚的に掴めた?
A :
「今回は頭で考えずにできたから、そうなのかも。自分でも凄く気に入ってるし」
C :
「SGAらしいユーモアがあるし」

 

──
ユーモアというのは自分を含めた回りの環境を客観的に見ることから生まれるものですよね
C :
「そう。だから、一曲目が『Girls don't marry』っていうのも、私たちのような女の子バンドだからできるユーモアだと思う。言葉自体はボリス・ヴィアンの小説から取ったんですけどね」
A :
「そう、私たちは『天然』とか言われがちなんですが(笑)、『天然だからよく分からん』とか言われちゃうんですけど、自分たちをかなり客観視しているつもりではあります(笑)」

──
その「客観視」という部分で言えば、自分たちのスケール感をはじめに限定したうえで作られたのが1stだった思うんです。女の子2人組、ギター&ドラムのツインボーカル、という部分を強調していたというか。
A :
「そうですね。先に『収める箱』を決めていたという感じはあった」
──
そう。もちろんその「箱」自体の新鮮さというか衝撃が前作にはあったんだけれど、今作では、そこからはみ出てくるものに魅力を感じます。たとえばゾンビーズの「二人のシーズン」のカバーに特徴的ですが、バンドの編成や演奏のクセを超えて、この曲の新しい解釈を提示している。言い換えればポップミュージックとしての完成度をキチンと備えている。
A :
「SGAをはじめた頃に『今一番アバンギャルドなことができるジャンルはJ-POPだよね』って話をしていたんですよ。ポップなフィールドものの方がアバンギャルドだよ、ていうね」
──
ようするに「定型」がハッキリしているものの方がそれを逆手にとることでインパクトのあるものを生むことができる、という……
A :
「そう、そう」