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THINK PIECE

Small Wonder World

小さなリアル
模型に見るワンダーウォールのデザインプロセス

10 12/17 UP

photo:Shoichi Kajino text:Kohei Onuki

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片山さんといえば、*A BATHING APE®(BAPE STORE®)のお店も数多く手掛けていらっしゃいますが、今回の展覧会ではBAPEXCRUSIVE™ AOYAMAと98年当時のNOWHERE(BUSY WORK SHOP® HARAJUKU)の2つの模型が展示されていますね。
「BAPE®とのはじめての仕事がNOWHEREなんですが、この仕事が出来たおかげで今の自分がいると言っても過言ではないんです。実は当時、デザイナーを続けるか否か迷っていたんです。その頃の僕は実績があったわけではないんですが、NIGO™さんが『一緒にやりましょう』と言ってくれたんです。ここでは『服が20着くらい掛かればOKです』という感じで、制約もありませんでしたね。NIGO®さんは僕を試しているつもりなんて全く無かったと思うんですけど、僕自身は色々な意味で試されていると感じていましたね。そこで一か八か、アトラクションのような物件を作ろうと。そして出来たのが当時のNOWHEREなんです。ファッション・ブランドのお店は通常、棚がこの方向で設置されて、フィッティング・ルームがいくつあってなど、色んなセオリーがあるんですね。けれど、このお店はとても自由にやらせてもらえて、その分悩むこともたくさんありましたけれど、本当に楽しかったです。今でも、『このお店のデザインを超えよう』という意気込みでやっているんです。今となっては実物のNOWHEREを見ることは出来ないので、こうして模型を眺めていると、とても懐かしいです。BAPEXCRUSIVE™ AOYAMAに関しては、NIGO®さんと話をして、『他で真似されないよう、あえて悪趣味ギリギリのラインを攻めよう』と、色々トリッキーなことをしましたね。1階の床と壁には真っ白いタイルが貼られているんですけど、これは模型も展示している98年にデザインしたNOWHEREからの教訓なんですよ。当時のNOWHEREでは、店内の通路に多くのお客さんが並んでいて、あまりのお客さんの多さに、通路の白い壁にお客さんのデニムの色が移ってしまったんです。人気の高いBAPE®ならではの悩みですね。その教訓から、BAPEXCRUSIVE™ AOYAMAでは、汚れ難いタイルを使用したんです。2階のスニーカー売り場にマルチカラーのカーペットを敷いたり、左右の壁にミラーを設けてディスプレイされたスニーカーが延々と連なるように見えたり、中央にベルトコンベアーが回っていたりとてんこ盛りです」
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今回の展覧会は、例えばデザイナーを目指している学生さんや若手のデザイナーさんにとって、片山さんのデザインプロセスを学ぶことが出来る貴重な機会になっていると思います。
「そう感じてもらえると嬉しいですね。模型という小さな世界を通じてデザインを検証していく。その時の『視点』を体感してもらえればと。勿論、インテリアの専門知識が無くても、楽しんでもらえる展覧会になるよう意識しています」
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会場で流れているサウンドと映像作品も面白いですね。
「サウンドはCORNELIUS小山田圭吾さんが制作してくれたもので、“Wonderwall”という言葉をモールス信号で発した音をモチーフにしているんですよ。そのサウンドとリンクした映像作品は、tha ltd.中村勇吾さんによるものです。物件写真をプログラムでランダムにサンプリングして"Wonderwall"のロゴを作るという仕組みなんです。ワンダーウォールのサイトから、スクリーンセーバーとしてダウンロード出来るようにもなりました。物件写真をカラーパレットにしているので、それぞれの物件で完成するロゴのカラーが全く違う。ワンダーウォールのデザインはプロジェクトによりその色を変える、ということを象徴してくれているような気がして、面白い作品です」
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展覧会ではさらに、新たな作品集も先行発売されますね。
「そうなんです。国内初の作品集で、1998年から現在に至るプロジェクトの写真をメインにコンパイルしています。作品集の最後の写真に出てくるロゴTシャツはKAWSがデザインしてくれたもので、展覧会でも販売しているんですけれど、こうして見てみると、内容盛り沢山の展覧会になりましたね(笑)」

 

WONDERWALL ARCHIVES 01

ワンダーウォール国内初の作品集。1998年から現在までのプロジェクトから約50のプロジェクトを厳選。竣工時の写真、プロジェクトの図面、ライブ感溢れる営業中の写真などを収録。片山正通による、多彩で、フレッシュな空間の数々を凝縮した1冊。12月1日全国一般発売。黒と白のダブルカバー仕様は、本展覧会場及びWONDERWALL WEB SHOPでしか手に入らない限定バージョン。

3,570円[税込]
PARCO出版
A4判変型/224ページ/オールカラー
アートディレクション・デザイン: groovisions (GRV2488)

 

『EXHIBITION OF WONDERWALL ARCHIVES 01
-10 PROJECT MODELS-』

東京会場
会場: ポーラ ミュージアム アネックス
会期: 終了(2010年10月29日~11月28日)

福岡会場
会場: 三菱地所アルティアム
〒810-0001 福岡市中央区天神1-7-11イムズ8F
会期: 2010年12月4日(土)~2011年1月4日(火)
※12/31~1/1のみ休館
時間: 10:00~20:00 (入場は閉場の30分前まで)
主催: 三菱地所/三菱地所アルティアム/西日本新聞社
[問]092-733-2050(三菱地所アルティアム)

Wonderwall 片山正通氏サイン会開催決定
受付時間:12月19日(日)16:30~16:45
会場: 三菱地所アルティアム
対象:Wonderwall作品集・グッズをご持参いただいた方
http://artium.exblog.jp/15139873/

名古屋会場
会場: パルコギャラリー
〒460-0008 名古屋市中央区栄3-29-1名古屋パルコ西館8F
会期: 2011年3月頃開催予定
時間: 10:00~21:00(入場は閉場の30分前まで)
主催: 名古屋パルコ
[問]052-264-8370(パルコギャラリー)

入場料: 無料
企画制作: PARCO
監修: Wonderwall
サウンド: CORNELIUS
映像: 中村勇吾/tha ltd.
制作協力: D.BRAIN CO.,LTD.