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THINK PIECE

PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT

難波章浩がニュー・アルバムに込めた、"ポジティブ"な思い。

11 2/8 UP

text:Toshiya Ohno

'90年代日本のバンド・シーンを牽引し、海外でも積極的に活動していたHi-STANDARDのフロントマン、難波章浩。
バンドの活動休止後は沖縄に移住してTYÜNK、ULTRA BRAiN名義でテクノ・ミュージックを追求、
ソロ名義では「歌」を全面に押し出したテクノ/エレクトロ・アルバム『THE WORLD iS YOURS!』を発表するなど、
常に音楽を追求し続けてきた。その難波章浩が、11年振りとなるパンク・ロック・アルバム
『PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT』を発表。パンク・ロックを封印してきた経緯と新作制作に向き合った心境、
新作に込められたメッセージを聞いてみた。

 

──
ハイスタ(Hi-STANDARD)が活動休止になってからこの10年間は何を考えていたの?
「ハイスタの活動休止は自分にとっては衝撃的な出来事でしたよ。ハイスタが止まるとは想像していなかったですからね。しかも、あのピークの状態で『ここで止まるんだ?!』っていうのはショックでした。だからそのショックから立ち直るのに時間をかけたいなと思ったんです。自分にとってはハイスタがすべてだったので、それができなくなるとやることがなくなっちゃったんですよ。それで沖縄に行って、次にやることを探していた。ただ、一人でベース弾きながら歌うのって本当に切ないんですよ(笑)」
──
はなわみたいになっちゃうから。
「はなわですよ!(笑)それでアコギ買って奥田民生さんみたいになろうかなとも思ったけれど、ギターなんて弾いたことないから(笑)。模索してましたね。それこそ落ち込む時はとことんまで落ち込みましたけどね。ぶっちゃけハイスタの活動休止は地獄でした。「MY WAY」の歌詞にもあるんですけど、生きながらにして地獄を見てました。だけど、そこを乗り越えたのは、やっぱり音楽だったんですよ。AIR JAM 2000で3万枚即完だったのが、何もやることなくなっちゃうんですから(笑)。『あれ?!』って思って。このままだと酒飲んでるだけで終わっちゃう、ちょっと自分を見つめ直さないとまずいなと思って。で、沖縄に行ってそこでいろんなカルチャーも見たし、日本、東京を客観的に見れたのが大きかったのかな。それでレイヴ・カルチャーとかテクノに興味を持って、ロックができないのならそっちに行ってみようかなって思ったんですね。スゴいピースフルでしたし」
──
それでこの10年間、パンク・ロックを封印していたわけだけど、途中でやりたい気持ちは起こらなかったの?
「できるだけそういう感情は抑えてましたね。ハイスタが復活になったらやろうって思ってました。でもハイスタがここまで休止になるのは人生予想外だったので、これ以上待てないなってなったんですよ。ハイスタの活動復活を待つことを中心に生きてきたから、その『待つ』ということをやめようと思ったんですね。自分からみんなを触発できるような活動をどんどんやっていけば自ずと何か見えてくると思ったんですよ。今回『Hi-STANDARD 難波章浩、PUNK ROCK解禁!!』って言ってるんですけど、まさにそのつもりですね。Hi-STANDARDの難波章浩として、今持てるパワーで立ち上がったんです」

 

──
だけど、再びバンド編成でプレイするっていうのも、『THE WORLD iS YOURS!』の曲をライヴで再現するところから始まってるんだよね。
「やっぱりバンドが好きだったってことですかね! やったらあっという間に戻っちゃって。戻りっぷりがハンパない(笑)。だけど、テクノも好きですけどね。僕はロックやテクノっていう垣根を取り払いたいという気持ちもあったわけですよ」

──
バンド編成になってからパンク・ロックを解禁して曲を作り始めたわけだけど、どういう心境で曲作りをしていたの?
「やっぱりプレッシャーはありましたよ(笑)。これ、相当自信がないとできないですよ。ハイスタはスゴかったですからね。『THE WORLD iS YOURS!』の時はとことんまで『ソロってこういうものでしょ』っていうのをやりたくて、自分の本当に好きなことをやったんです。でも今回は徹底して人のことを意識しました。作りながらみんなの顔が浮かんだんですよ。オーディエンスの顔もそうだし、いろんな人の顔が。だから音楽って人と会話をするものなんだって改めて思いましたね。自分の中で形を作って、諦めないで続けていくと必ず生まれるんですよ。それはメッセージとして言いたいことでもありますね。僕の話って、ある形がなくなってしまうとか、自分の居場所がなくなってしまうとか、みんなにとってもよくあることだと思うんです。そこで、やっぱり『ポジティヴ』って言葉が出てくるのかな。何も見えない時も光を見つけて、未来に夢を持って前向きに生きる。今落ち込んでいて光も見えない人に聴かせたいですね。このアルバムにはそういうパワーがあると思うんです。過去の話だけじゃなくて、出口のことも言っているし、僕自身もこれを作りながら上がっていったんで」