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THINK PIECE

マイケル・アリアス × PLAID

映像のための音楽、音楽のための映像。

12 1/18 UP

photo: Kentaro Matsumoto text: honeyee.com

──
お互いの共通認識を深めて、映像と音楽が制作段階から相互に作用し合ったことで、素晴らしい作品が生まれたのですね。
A
「間違いないね。制作期間中、お互い離れた場所での作業だったとはいえ、常にコミュニケーションは欠かさなかったし、意見を押し付け合うことなく、一緒にアイディアを練り上げていったんだ」
M
「どちらの作品も、始まりから終わりまで常に音楽が鳴っていて、一般的な映画と比べて音楽が占める割合が非常に多いのですが、僕の作品の世界観を正確に観ている人に伝えるためには、どうしても彼らの音楽が必要だったんです。最近の映像、特にアニメーションは画に合わせた音楽を使うことが少ないので、逆に新鮮だったのではないでしょうか」
──
マイケルさんの映像とPLAIDの音楽には、センチメンタルで透明感のある美しさ、という共通した世界観がある気がします。
M
「鉄コンに関しては、誰も経験したことがないはずなのに、それでもどこか懐かしい、センチメンタルでノスタルジックな世界観を演出しました。現実世界ではない、パラレル・ワールドでの話にも関わらず、そこに気持ちがコネクトできるような作品です。ヘブンズ・ドアも、ファンタジーのストーリーをリアルな手法で描き出したもので、鉄コンと共通する部分があると思います。この世界観を表現する上で、PLAID以外の音楽は考えられなかったんですよ」
A
「僕らの音楽に関してはセンチメンタルというより、メランコリックという表現の方が正しいかな。センチメンタルというほど、僕らはポジティブじゃないからね(笑)。でも、別世界にコネクトする世界観というのは、お互いに共通するフィーリングかもしれないね」
──
マイケルさんは過去に、チームドラゴンfrom AKB48の「心の羽根」という作品のプロモーション・ビデオを監督されていますが、PLAIDとのコラボレーションとは逆に、音楽のために映像作るという感覚はいかがでしたか?
M
「ポップ・ミュージックは一定のテンポで進行していくものなので、あのビデオを手がけた時は、歌詞からイメージをふくらませていきました。SF感のあるビデオ、というイメージを伝えられた以外は、自由にやっていいという素晴らしいオファーだったので、自分が歌詞から感じた世界感をそのまま描き出しました。ただ、僕は2時間前後であればOKという劇場映画の世界で活動してきたので、曲の尺にピッタリ合わせたものを作らなくてはいけないということが大変でしたね。考えたストーリーを決められた尺に合わせるというのは、編集、演出面においてチャレンジングなことでしたが、得たことは多かったです」

 

──
音楽と映像のコラボレーションは、時に非常に効果的である反面、どちらかのバランスが少し崩れてしまうだけで、作品全体の世界観を損なってしまう危険性もあると思うのですが、皆さんが考える、優れた映像と音楽のコラボレーションとはどんなものですか?
A
「映像のために音楽を作る時は、その映像の邪魔になってしまうようなミックスは避けなくてはいけないね。曲の制作はもちろん大切なんだけど、最終的なミックスダウンも非常に重要になってくる。シーンのテクスチャーやバックグラウンドを正しく読み取って、最適の音量を設定しなくてはならないんだ。ミュージシャンとしてはどうしても音楽を目立たせたくなってしまうけど、登場人物の会話が聞こえなくなってしまっては、本末転倒だからね。映像も音楽も、お互いに主張し過ぎず、相互に作用し合うことで、最終的に優れた作品になるんじゃないかな」
E
「主張し過ぎないという意味では、ミニマリズムの精神も重要かもしれないね。映像、音響、セリフに加えて音楽が加わると、あまりにも情報量が増えてしまう。もちろん、状況に応じて派手なアレンジが必要になる場合もあるんだけど、洗練された音色と、なるべく少ない音数で映像を引き立てることで、映像と音楽のコラボレーションの本当の効果が発揮されるのだと思う。マイケルとの仕事で学んだ引き算的な制作方法は、”Scintilli”でも活かされているんだ」
M
「エドの言った通り、映像は俳優の動きや言葉、シーンの画、色、グラフィック、サウンドエフェクト、音楽といった、10以上の異なる事象が同時進行しているので、それらをまとめあげるのは至難の業です。その中でも、音楽は特に重要な要素を占めているのですが、映像と音楽の完璧なバランス、というものはまだ私も探し続けているところです。ただ、音楽と映像に限らず、他人とコラボレーションをする時は、自分の制作と同じくらいに、お互いのコミュニケーションに力を入れることが重要なのだと思います。私とPLAIDもコラボレーションの度に、より良い結果が生まれていますからね」
──
今後のコラボレーションの予定はありますか?
A
「今はまだ水面下での構想段階なので何とも言えませんが、また近いうちに一緒に仕事ができればと思っています」
E
「僕らはとにかく、次のアルバムまでまた8年もかからないように頑張らないと(笑)。今回のツアーを通して次のアルバムの構想が生まれたから、早く制作に取りかかりたいんだ。ライブの完成度も上げていきたいし、やることだらけだね。そこで更に力をつけて、タイミングが来たら、またマイケルとコラボレーションできればいいな」

 

PLAID 「Scintilli」

Warp Records / Beat Records
BRC-305
2,200円[税込]
発売中

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