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THINK PIECE

少女時代

日本のエンタメに活を入れる!?
無敵の『少女時代』を読み解く。

13 2/6 UP

photo: Satomi Yamauchi interview: Tetsuya Suzuki

 

──
ビジネスと文化のベクトルの違いを言い訳のネタにしないということですね。
D
「例えば、J-POPのメソッドは、内面や自己との対話。SMはそれを超えた客観的な機能美や構造といったアーティストの存在感を重視したエンターテイメントを目指しているのではと考えます」
──
たしかに、国内マーケットが大きい日本では、世の中の風潮を気にしがちというか、「出る杭は打たれる」を嫌うというか、抜きん出た才能で人々を驚かせるよりも、人々から共感を得るというスタイルのアーティスト育成が90年代頃から未だ続いているのを感じます。比べて、韓国のようにグローバルな市場を意識するということは、異文化間でも通じる徹底的なプロフェッショナルによってつくられるテクニックやスキルといった客観的な“クオリティ”が必要で、それが『少女時代』だということなのでしょうか。
K&D
「まったくその通りだと思います」
D
「音楽は時として日本に来た黒船のようなもので、海外から入ってきたものが異質であればあるほど内在していた国内の問題が表面化してきますよね。今の音楽業界にいたってはK-POP、中でも『少女時代』はその象徴かと」
──
現在、日本の音楽業界は過渡期なのでしょうか。
D
「“なんとかしなくては”という意識の中で、僕を含め音楽業界で働いている人は皆、藻掻いている時といえます。みんながそうやって悩んでいる時に、クールかつクオリティの高い技能を持ち、強い精神力と大衆性がある『少女時代』が登場、完全に差をつけられて先を行かれてしまったような気がします。一連のK-POPを一時期のブームと片付ける人もいますが、このクオリティを今の時代の子供たちが体験することができるって本当にすごいことだと思います。僕たちの時代でいうと『YMO』の様な存在なのかもしれません」
──
梶原さんは、音楽、ファッション、アートなど幅広くコンテンポラリーカルチャーを体験されていますが、国内外も含め『少女時代』によってあぶり出された日本のカルチャーコンテンツは、音楽だけでなく他のカルチャーにも見受けられますか。
K
「“クールジャパン”(注5)といわれている、ポップアイドルとオタクがミックスしたようなグループとか、なかなか興味が持てないんです。エンターテイメントとしての“在り方”を垣間みることができる『少女時代』に面白みがある」

 

D
「音楽番組のリハーサルでトラックが流れはじめた段階から、他と比べても完成度が突出しているのが一目瞭然です。それを卓越した技術を持つ9人の女の子たちが踊るとなると、あきらかに違いがその場で伝わる。尋常でないプロ意識によってつくられたパフォーマンスは、シンプルかつインパクトが強いですよね」
──
逆に、日本の世界的には「ローカル」なアーティストたちの、その「ローカルさ」つまり、日本的なニッチな美意識こそが逆に世界に対する競争力になることもありうると思うんですね。だから、日本流のエンターテイメントを追求して行くことも結果的に世界にも通用する方法論となる、という論理は成り立つ可能性がありますよね。
K
「実は、どこに行っても感じるのは、日本人が持っている感覚こそ、世界が欲しているものなのではないかということ。ただ、カタチにするのはあくまでも私たちではなく彼らなのではないかと。ファッションで言えば、日本人は膨大なアーカイブをつくり上げ“アメカジ”というスタイルをつくり、今それがBAND OF OUTSIDERSといった海外のデザイナーにも影響している。同じように、“食”に関しても東京で山本宇一さんが展開しているようなことが、今NYのブルックリン地区で起こっています。でも、本当に見ていて切なくなってしまう。元ネタは日本なのに、それを日本人が、喜んで買っていくじゃないですか(笑)」
D
「今の話を音楽に当てはめると、先日、『サウンド&レコーディング・マガジン』(注6)(以下、サンレコ)の編集長との話に上がったのが、韓国のK-POPクリエーターたちはサンレコの韓国版をバイブルのようにしていたということ。そうやって日本の最新情報や技術などを学んでいたようです。例えば、今韓国の14、15歳の子たちがつくるトラックとか本当にかっこ良くて、ソフトウェア・シンセサイザーの技術レベルも高く、こんな音をベースに使わないだろと思うような音を使っていたり、日本人にはない発想が感じられます。スタジオとかでもスピーカーの置き方がズレてたり、彼らにとってそういうことは重要なポイントではないんですよね(笑)」
K
「韓国には、日本に存在する“一歩下がる気持ち”といったものがあまりないですよね。機器でいえばリミッターが簡単に外れてしまうような感じ(笑)。だから、共通言語や様式を取り入れさえすれば、欧米へも容易に参入することができるのでしょうね」

 

(注5):海外で評価を受けている日本独自の文化を指す。主にマンガやアニメ、渋谷・原宿のファッション、日本政府による対外宣伝としての用語のひとつ。近年では伝統工芸や最先端技術まで幅広く活用されている。

(注6):音楽関連の雑誌や楽譜、教育用ソフト等を取り扱う出版社、リットーミュージックから発行される音響・録音技術の専門誌。現在は日本語版のみを発行。

 

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