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THINK PIECE

恋の渦

恋心と下心が交錯し、本音と嘘が渦巻く群像劇。
大根仁監督インタビュー

13 9/13 UP

photo: Takehiro Goto text: Chiho Inoue edit: Madoka Hattori

 

──
逆に、店員さんもびっくりしていませんでしたか?
「ルミネの地下のお店の紙袋を両手いっぱいぶら下げて、『あなたの洋服を上から下まで一式ください』なんて、とんだ変態ジジイですよね(笑)」
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スタイリング、すごくよかったです。「シュシュをつけている女の子はなんだか裏がありそう」みたいなキャラクターの味つけも絶妙でした。
「実はそのへんの小物は自前なんですよ。下着もいろいろ持ってきてもらった中から選ばせてもらいました。本人たちはまったくギャルじゃないんですけどね。ギャルは普通、役者を目指さないでしょ」

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そうですね。でも最初は彼女たちのことを見下したりとか、女の子を働かせて男はプー太郎かよ! とか、なのに男の子たちが偉そうですごく嫌だなぁ……なんて腹を立てたりしながら観ていたのに、だんだん自分や自分の周囲の人間関係、卑しい下心とオーバーラップしていくところがあって、実は身につまされる人も多いのではないかと思います。
「そう、女子は特にねぇ。恋愛における関係性の面白さですよね。もともとの戯曲がそうですけど、観察視点でみていたのに、いつのまにか自分も中に入っている。キャラクターに自分を重ねたりはしなくても、別れ際にぐずぐずしてしまうところだったり、連絡が取れずにモヤモヤした時間を過ごしたり、逆に電話が鳴っても『出なくていいや』って思ったりすることは彼らじゃなくても普通にあることで、人間らしいこと。最後のひとことが素晴らしいですしね」
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見事ですよね。全編を通じて、重ねている言葉がJ-POP的な響きを持っているじゃないですか。掛け合う言葉が逐一薄っぺらくて笑っちゃいそうなんだけれど、本人にとってはものすごく重たいことで。
「『電話つながらない』とか『なんで返信こないの』とかね、西野カナの歌っぽいですもんね。そんなに歌い上げることかと思うんですけど、いまの恋愛事情においてはとても大事だという」

 

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そこを逆手に取ってエンターテインメントにしているところが、この作品は面白いですね。
「映画ファンとかマニア的なシネフィル層だけじゃなくて、普段は邦画を観ないような人たちも楽しめる映画になっていると思いますけどね。そういった意味でのJ-POP性は『モテキ』のときも多少意識はしましたけどね」
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『モテキ』と同様に、小道具が凝っていますよね。壁にべたべた貼ってあるAKBのポスターとか。空間に対するリアリティを追求なさっているようにみえました。いまの邦画はファッションも部屋もどうしても嘘くさくなりがちだなって気がします。
「そうですね。特に若者が暮らす部屋だったら、なんでもっと汚さないんだろうとか思うことはあります。とはいえ『モテキ』の幸世の部屋はやりすぎでしたけどね、ほぼオレの私物ですけど(笑)」
──
今回は大根監督の私物は投入されているんですか?
「オサムの部屋のグラビアはほとんどオレのですね。ずーっとスクラップして大量に取っておいてあったんですけど、まさかこんなところで使えるとは思わなかった」
──
ハニカムブログでもときどきお目にかかれるグラビアですね。撮りたい女優さんって、いらっしゃったりするんですか?
「沢口靖子さんですかね。『あまちゃん』で薬師丸ひろ子さん演じる鈴鹿ひろ美って、エキセントリックなキャラクターなのにもう本人が鈴鹿ひろ美にしか見えない。やっぱりとんでもない女優さんだって気付いたんですよ。それと同じ匂いを沢口靖子さんに感じるんです。ただ、オレは自分から企画を発信するタイプではないので、撮ってみたい人も描いてみたいテーマも特にないんですが、いつかやりたいなと思っているのは日本のパパラッチもの。週刊誌の芸能班の人たちの話は興味があります。みんなスキャンダル大好きなのに、見下されてしまう職業じゃないですか。知り合いの記者に話をきくと、スキャンダルを撮るまでのミッションってもうスパイ大作戦並みで(笑)、実に面白いですよ」

 

『恋の渦』

監督:大根仁
原作・脚本:三浦大輔
制作:山本政志
出演者:新倉健太、若井尚子、柴田千紘、後藤ユウミ、松澤匠、
上田祐揮、澤村大輔、圓谷健太、國武綾、松下貞治
配給:シネマ☆インパクト、SPOTTED PRODUCTIONS
2013年/138分

オーディトリウム渋谷、福岡 KBCシネマほかにて公開中。
以降、横浜ジャック&ベティ、松本CINEMAセレクト、
大分シネマ5ほかにて順次ロードショー。

http://koinouzu.info/