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THINK PIECE

AMI Alexandre Mattiussi

自身の名前の略語であり、"友人"という意味の名を持つブランド
"AMI"のデザイナー、アレクサンドル・マテュッシ

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photo: Shoichi Kajino interview & text: Misho Matsue

いま、間違いなくメンズファッションシーンで、最注目ブランドの一つとして人気を博しているパリブランド、
AMI Alexandre Mattiussi (以下AMI) この冬、複数のセレクトショップで同時多発的にAMIのイベントが開催され、
そのために来日したデザイナーのアレクサンドル・マテュッシにインタビューを敢行した。その動向に世界から熱い視線を
送られる立場でありながら、驚くほど気さくなキャラクターとユーモアを持つ彼のパーソナリティは、
ブランドの魅力の一部をよく体現している。

 

──
AMIを立ち上げる前に、ディオール オム、ジバンシィ、マーク・ジェイコブスでキャリアを積まれていますが、ブランド設立のいきさつを教えてください。
アレクサンドル・マテュッシ「21歳の時、エディ・スリマン時代のディオール オムで“30 Montaigne”のラインのデザインチームで働き始めました。とはいえ直接エディと働いていたわけではなくて、もう少しクラシックなコレクションの担当でした。まだ若かったですし、ディオールで過ごした時間は自分にとって“観察”の時間だったと考えています。一年契約だったためディオールを離れた22歳の時には、すでにAMIをスタートしていました。Tシャツとシャツからなる小さなコレクションで、2年間続けましたね。それから24歳でジバンシィに移り、約5年を過ごしました。すなわち、デザインの基盤を学んだ“実験”の時です。いわば裏方として、さまざまな経験を積むことができたと思います。その後、2008年にマーク・ジェイコブスのメンズチームに加わったことで、経験を“まとめ”ることができました。これが本格的なAMI誕生までの10年間の道のりです」
──
わかりやすくまとめて下さり、ありがとうございます。インタビューが始まる前に、2014-15秋冬コレクションで発表されたばかりの、カシミアのようにソフトな手触りのイタリアンウールの魅力を教えていただきました。このような素材やディテールへのこだわりと、手に届きやすいプライスとの両立について教えてください。

「ラグジュアリーブランドでの10年間で見てきたもの、触れてきたものがまずベースになっています。その上でクオリティとプライスの正しいバランスはどのポイントにあるのか、私なりの現実的な視点で見極めようとしているのがAMIなのです。AMIはフランス語で“友人”を表す単語であると同時に、“Alexandre MattiussI”、このように私のイニシャルと最後のアルファベットから取った3文字でもあります。実は子供の頃からスケッチをしたり、メッセージを書いたりする時に自分のサインとして使っていたなじみ深い言葉なので、友人たち、そして自分自身にとっても着やすいコレクションであることは大前提でした。レッドカーペットを歩くセレブリティにしか着こなせないゴージャスなデザインなんて、まったく頭にありませんでしたね」

 

──
確かに、プレゼンテーションでのモデルたちの顔ぶれにしても、テーマに合った理想の男性像を表現するというよりは、さまざまな人々を思い描いているように見受けられます。
「その通り。友人たちも同じようなタイプばかりではありませんから。国籍も年齢もさまざま、多くの人に開かれていることを意識しています。単なる服だけではなく、最終的にはアティテュードや個性にフォーカスしたものづくりをしたい。着るものは自分らしさの延長、そしてその表現であり、服が人を決めるのではない、と思っています」
──
さっそくですが、今シーズンは空港を舞台にしたプレゼンテーションを発表されました。行き先は「太陽」だとか?
「そうですね。“ヴァケーションへの旅”がテーマです。いつもプレゼンテーションにはアイデアを凝らすようにしていて、前回はメトロの駅だったので、今シーズンは空港かな、と。人生は人との出会いによって成り立っていると思うので、私は人々が出会う場所が好きなのです。デザイナーとしても、自分の殻に閉じこもって黙々と作業するより、ストリートからのインスピレーションを大事にするタイプだと思います。空港はバケーションに向かう人や、バケーションから戻ってくる人、それ以外にも背景にさまざまなドラマを抱えた人たちがすれ違う場所です。50~60年代のパンアメリカン航空の機体のシートをイメージしたちょっとレトロな色使いで、着飾って旅に出る人々でごった返す空港の雰囲気を表現したいと思いました。それからミリタリーの要素については、空港で見かける軍人の多さに着目し、取り入れてみたのです。もしかしたら彼 (写真: 左) はデニムでバケーションに向かい、現地のフリーマーケットで手に入れたトロピカルプリントのパンツで戻ってきたところかもしれないし、あるいは一見バラバラのスタイルの彼らが空港を出た後、メトロに乗るため同じ列に並んでいてもおかしくはありませんよね」