honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

Fragment Design×written by

カラフルなスカーフに映し出された
時代を象徴するアイコンたち

15 2/17 UP

Photo: Shoichi Kajino
Interview: Tetsuya Suzuki
Text: Akiko Taniguchi

 

F
「自然にですか。好きなものが1つとは限らないし、僕自身色々なものが好きだから。このスカーフも、僕はこうなったけど他の人がやっても面白いと思いますよ。バッグの中身を全部並べたりとかはよくあるけど、それをスカーフにするっていうのがいい。ただ選び方も、ある程度の著名人はイメージが先行するというか、演技して選んじゃう感はあるかもね」
──
好きなものを好きなように作ることと、何かの使命感から表現しようとしたときのアウトプットのされ方は、やはり本質が違うな、と思うのですが、山縣さんは、その両方を持ち合わせていますよね。
Y
「僕は色々な方から学びたい感覚があって、どんな方でも、その人なりの格好良さと価値観が見えてくる。それをじっくり聞くと、その意見に納得できるんですけど、一方で、全く別の意見にも納得してしまったときに、結局のところ何なのだろう、みたいな感覚に陥ることはあります(笑)」

F
「でも、やっぱり山縣くんのいいところは、色んな人から学ぶ姿勢とか、僕からも影響を受けたと言ってくれる一方では川久保さんも好きで、でも自分から出てくるものが全くの別物。それがやっぱりいい」
Y
「ただ、それが謎のアウトプットになることはあります(笑)。やっぱりファッションである以上、格好良さってすごく大事なことだと思っているので不安になります。大丈夫かな?これ、って(笑)。常にそこは自問自答しながらですね」
──
格好良さっていうのは、ポピュラリティを意識することでもあるのですか?
Y
「うーん、ポピュラリティ……ないかもしれないですね。ポピュラリティというより、僕がかっこいいと思っている人に受け入れられたい気持ちですね。共感が生まれるかどうか」

 

──
ヒロシさんでいうと『The Broken Arm』の店員がPOOLの帽子を被っている事実が、ジェネレーションや地域を越えて、様々な人に自分の好きなことが共感されている実感になるのではないですか?
F
「自分が好きなことかどうかは分からない。みんなが好きなものを僕が好きとも言えるし、その人たちが好きになるであろうものを先に好きだということの方が大きいかな。自分が好きだって押したものよりは、みんながなんとなく好きになってくれるものを僕が見つけられる感覚」
Y
「究極的に自然体ですよね。若い頃は、みんなどこかでそうありたいと思うじゃないですか。でも、ある時期に、あれ?できない、と思ってしまうんです。周囲の空気を読んでしまうというか。

この歳になったら周りも変化していって、もっと大人にならなきゃいけないとか、なかなか好きなことだけというのが難しくなりますから、強い何かがないと絶対にできないと、いつも思います」
──
ヒロシさんも、そういうことを心配した瞬間はありましたか?
F
「あったかもしれないけど、そうこうしている間に時間が過ぎて行った(笑)。別に、受け入れられたいと思っていたわけでもないと思うし。受け入れられなくても、みんな幸せそうじゃないですか。自分の好きなことをやっている人たちは」
Y
「僕の場合は、心配しても、どうしようもないな、みたいな感覚はありますね。というか、僕はもともと少しズレていたので、うまくコミュニケーションがとれずに過ごしてきたから、合わせようという気があまりないんです。自分自身で行くしかない、ということを10代くらいのときに感づいていたというか、でないとダメになる。合わせちゃダメみたいな。普通になろうとしてしまうと、絶対にうまくいかないと思っていました」
──
先程、経済のシステムについてのお話がありましたが、山縣さん自身、どうしても経済活動には参加しなければならない部分もあるじゃないですか。そこの葛藤みたいなことも、このフリーマーケットシリーズには表現されているのでしょうか?

 

Y「僕の割合って100%葛藤ではなくて、葛藤もありつつ一方ではそれを全く考えていない部分もあって、色々なものが交ざって、結局、仕方ないじゃんって思っているところも正直あります。色々なものがカオスに交ざり合っているところで、ちょっとしたアイロニックや極端な感じを中に織り交ぜながら、はっきりとした答えを作らないことが僕の表現にはあるのかなって。ひとつの象徴として作りたいというか、ブルーシートのように極端にイメージのあるものを使いたくなるんです。例えばラグジュアリーを象徴する分かりやすいものとか、駄目なもの、良いもの、悪いもの、色んなものをクロスさせた表現がしたいと思っています。ですから、はっきりとした主張を持っている感覚は、僕もないですね。主張することの危うさみたいなところを感じるときでもあるので」
──
そういう暗い世相の緊張感も、ブラックユーモアとも風刺ともつかない、ヒロシさんと山縣さんの持っているセンスによって風通しのよい気分になれますよね。
F
「そんな大それたことは思ってないよ(笑)。ただ、自分からの明確な主張がないから余計にできるんだと思う。主張があったらできない。本気になっちゃって」
Y
「色々なモノを受け入れた結果、自然に主張がなくなること自体が、あまり他にはないものになっていることには興味があります。そういうものをクリエイションとかで表現したいなって」

F
「特に日本だからできることだったりするのかもね。そんなに本気で考えてない。それが面白いと僕は思うんだよね」
Y
「そうですね。僕は、日本のカルチャーがどのように作られてきたかということにも興味があって。そういう意味では、藤原さんもカルチャーを作られた方だと思うので、自然体であることが日本の表現として面白いカタチになっていると思います」
F
「でも、日本として、とか、日本を世界に、とかは一切考えていない。そういう時代じゃないと思うんだよね。個人で頑張る時代。日本からきたミスター・ヤマガタではなくて、ミスター・ヤマガタは日本人だったっていうくらいの方がいいと思う」