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THINK PIECE

高木完 × 東京弐拾伍時

東京弐拾伍時、初のミニアルバムリリースを機に実現したレジェンド対談。

15 7/28 UP

photo: Kentaro Matsumoto
text: yk

現在活動を休止しているNitro Microphone UndergroundからDABO、MACKA-CHIN、SUIKEN、S-WORDの4名に加え、
DJ HAZIMEがA&Rプロデューサーとして参加している東京弐拾伍時。2015年7月22日(水)に初のミニアルバム
『TOKYO 25:00』をリリースしたばかりの彼らと、国内ヒップホップシーンを黎明期からリードし続ける
高木完に共通するのは、”いつまでも好きなことをやり続けたい”ということ。

 

──
“東京弐拾伍時”はもともとHAZIMEさんが昨年リリースしたミックスCDにエクスクルーシヴで収録されたトラックの曲名でしたが、今作の制作のお声掛けはHAZIMEさんからされたのですか?
DJ HAZIME「自分とManhattan Records側で、東京弐拾伍時のメンバーでまとまったものを出せば話題になるんじゃないかと話していたのが始まりですね。それで、みんなに訊いてみたら乗り気な返事をもらえたので、去年末くらいに正式にオファーをして、年明けから作品のボリュームやイメージを具体的に考えていったという感じです」
──
“話題になるんじゃないか”という狙いには、今のヒップホップシーンに対しての何かしらの意見や気負いが含まれているのでしょうか?
DJ HAZIME「そういうのはないです(笑)。個人的にはもっと単純に、いい曲を作って面白いことをやりたいというだけです。今の日本語ラップのシーンがこうだから、今の自分たちがこうだからとかは一切なく、みんなが面白いと思えることをぶちかましたいという気持ちだけですね」
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完さんは昨年”東京弐拾伍時”がリリースされた時からお気に入りだったそうですね。

高木「そう。パブリック・エナミーのチャック・DがやっているRAPstationというwebのラジオ番組があるんだけど、そこにアメリカ以外の国のヒップホップを紹介するコーナーがあって、それ用に日本語ラップの曲を紹介してほしいというオファーを受けたんだよ。”コンシャスなリリックでプログレッシブなサウンド”っていうハードルの高いオファーだったんだけど(笑)。それから色々聴き漁っていくうちに、知人からニトロのメンバーが新しいことをはじめたらしいよと聴かされたのが”東京弐拾伍時”。トラックもかっこいいし、リリックも今の東京の雰囲気をリアルに表現しているものだと思ったので、RAPstationで紹介させてもらったというわけ」
MACKA-CHIN「それ以来、俺のソロもかけもらっているみたいなんだけど、RAPstationのTwitterアカウントから頻繁にメンションがあるんですよ。で、この間ついにダイレクトメッセージがきて、それぞれの国の言葉のシャウトをジングル用に集めているから日本語版を録って送ってくれって。世界のラップが聴けるから、面白い番組ですよね」
高木「そうなんだよね。アプリもあって便利だし。RAPstationきっかけで東京弐拾伍時に出会って純粋にかっこいいと思っていたから、今回対談の話をもらった時は嬉しかったな。このミニアルバムもすごく良いしね。特にマイクロフォン・ペイジャーの”病む街”と同じネタを使っている” Lucifer's Out feat.AKLO”が良かった。あと、MURO君も参加してる” 時間ヨ止マレ feat.MURO&PUSHIM”も名曲だと思ったけど、あれはやっぱりDev Largeに捧げた曲なの?」

 

DJ HAZIME「MURO君のバースの部分に関してはそうですね。ただ他の部分は限定した誰かに向けて歌っているわけではないです。MURO君にはもともとトラックのプロデュースをお願いしていて、”こういうことを歌おうと思っているんです”と伝えたら、MURO君も昨年亡くなられたManhattan Records社長の平川さんに感謝の言葉を入れたいと言ってくれて。それでレコーディングまでの間にDev Largeが亡くなってしまったので、それも踏まえたバースになったんです」
高木「アルバム全体を通しての感想なんだけど、これを聴いていると90年代の中頃から後半にかけて、ヒップホップシーンが面白くなっていった東京の雰囲気がまざまざと蘇ってくる感じが
するんだよね。あと、前から気になっていたんだけど、そもそもなんで”25時”なの?」
S-WORD「90年代にマイクロフォン・ペイジャーが出した曲の中で”東京24時”っていうパンチラインがあるのですが、それから時代も変わって色んな意味で1時間くらいは進んだんじゃないか、ということで”東京弐拾伍時”にしたんです」
高木「なるほどね。実際90年代を知っている人間が聴いたら絶対にグッとくるアルバムだと思うよ。さんぴんCAMPは神戸の震災の後だったけど、このアルバムも3.11以降の情勢が表されていて、ある種リンクする部分があるよね」
DABO「自分たちもそういう部分は意識していて、サブリミナル的にその要素を入れ込んだりはしているんです」
S-WORD「あの頃と今が似ているのかは分からないですが、文化は20年周期で繰り返すと言われていますよね。今から20年前と考えるとやはり95〜96年の頃にあったものが、今また熱いのかなと」
高木完「さっきも話にでたペイジャーの”病む街”とかもそうだけど、当時の音は今聴いても色褪せないないものが多いよね。このアルバムはそれを更にアップデートさせたものだから、当時を知っている人はもちろん、知らない世代も楽しめる作品じゃないかな」