Éditions M.R
生粋のパリジャンが提案する、エレガントなバッドボーイのアティチュード
16 6/21 UP
photo: Shoichi Kajino
interview: Tetsuya Suzuki
text: Ryu Nakaoka
- M
- 「誰かに対して無理に何かを伝えようとは思いませんが、私たちなりの表現をし続けることは重要だと思っています。ブランド自体まだ小規模なので、マーケットの中心にいられるわけではありませんが、Editions M.Rを理解してくれる人には少なからず着てもらいたいと思っています。また、Édition M.Rを着る際にも、コーディネートの一部として使ってもらって構いませんし、それがリアルでしょう。フランスでは我々のスタイルを理解してくれる若い人もたくさんいますよ」
- M
- 「パリでの顧客は25歳から50歳くらいまでと幅広く、建築家やデザイナーなど、主にクリエイティブな業界にいる人が多いという印象です。逆に、あなたは若者の世代に対してどのように感じていますか?」
- ──
- ヒップホップ以降のカルチャーを受けた世代の影響力が強くなっていると思います。結果、ストリートカルチャーから踏み出さない傾向が強い。
Éditions M.Rのイメージビジュアル(コンセプトブックより)
©Francois Rotger
シチリアで行われたマティユの結婚式(コンセプトブックより)
- M
- 「同感です。ストリートカルチャー、ヒップホップは若い世代にとても影響力が強く、オンライン上で圧倒的な存在感があります。私たちが好む古いカルチャーとは全く違う姿をしているので、少々驚きますが(笑)」
- ──
- その「古いカルチャー」のエレガンスは、ときにヒップホップよりも“キケン”なところがあり、同時にアーティスティックでクリエイティブでもある。そうしたことを伝えるためには、あなた方が影響を受けた本、映画などと一緒に紹介していく今のスタイルは効果的かもしれませんね。
- R
- 「その通りです。我々のアティチュードに共感してくれた方が、Éditions M.Rを手に取ってくださるのだと思います。重要なのはアティチュードで、それがあってこそ私たちの服が一層引き立つのかもしれません」
- M
- 「もちろんそれはプロダクトの完成度ありきです。幸運なことに、私たちは子供の頃から上質なものに囲まれて育ってきたので、手仕事で丁寧に作られたものを理解し、愛しています。ですから、自分たちが服を作る際にも、同じように美しく、丁寧に作られたものを継承していきたい。完璧に仕立てられた服であれば、床に脱ぎ捨てても、多少雑に扱っても、ずっと着続けることができるでしょう。今この瞬間のイメージのみに気をとられず、持続性のある洋服を作っていきたいと思っています」
- ──
- では、世の中から「良いもの」が減っていっていると思いますか。
- M
- 「二極化していると思います。一方は工業的に大量生産された商品。そして、高速な消費。しかしこれに対する反動も起きていると考えています。それが美と品質を追求したものづくりです」
- ──
- お二人が手がけるハイクオリティな服も、世の中から良いものが少なくなってしまった反動なのでしょうか。
- M
- 「私たちの場合、それは自然な流れだと思います。ただ、ハイクオリティな洋服の中でも、ラグジュアリーなものもあれば、カジュアルなものもある。数年前に上海に行ったことがあるのですが、街中がラグジュアリーブランドのみで埋め尽くされた様子を目にしたとき、どこか不自然さを感じました。それはパリの一部のみを切り取った世界であって、私たちが生まれ育ったパリではない。どちらも存在してこそ、本来のパリなのです。パリという場所で、カジュアルなファッションを上質なものづくりで表現しているÉditions M.Rは、ラグジュアリーブランドよりずっと歴史が浅く、規模も小さいですが、ゆえに現代的なビジネスとクリエイションができるのかもしれません」
- R
- 「フレッシュでクール、そしてリアルなパリジャンの姿を提案することができるのだと思います」
- ──
- その“リアルなパリジャンのライフスタイル”は、東京など他の都市でもリアリティを持てると思いますか。
マティユのファミリーリング、レミの家紋(コンセプトブックより)
- M
- 「パリジャンのアティチュードさえあれば、どんな場所でも、どんなアイテムを身につけても、成立するでしょう。たとえば今、私はアメリカ製の靴を履いていますが、全体としては私なりのパリジャンのスタイルとなっています。visvimでも、Saturdays Surf NYCでも、気に入ればスタイルを構成する一部分として取り入れます。大切なのは、自分自身のスタイル、主張を持つこと。他の人と同じであることは、その人は存在しないも同然なのです」
- R
- 「違ったアイデンティティを持つ多様なブランドを着ていたとしても、自身のアティチュードさえあれば、様々なピースを組み合わせてスタイルを構成することができます。私たちには選択の自由があるのです」
- ──
- お二人の考える「パリジャンらしさ」とは何なのでしょう。
- R
- 「どこまでもシックであること。働いているとき、道を歩いているとき、突然友と出会ったとき、夕日を見たとき、ロゼワインのグラスを手に持つときに、詩的な驚きを感じること。人生を楽しみ、ボヘミアンのようにあること」
- M
- 「ルールに縛られすぎないということ。パリの中心街はさながら小さな村のようなのです」
Éditions M.R/エディションズ エムアール
互いに数百年続くフランスの名家に生まれ、同じパリの大学で学んだMathieu de Ménonville(マティユ・ドゥ・メノンヴィル)とRémi de Laquintane(レミ・ドゥ・ラキャンターヌ)が2009年にMELINDAGLOSS(メリンダ・グロス)の名で設立。2016年秋冬コレクションより、ブランド名をÉdition M.Rに変更して活動を開始する。2015年にはオンラインメディア「Chambre 42」を立ち上げた。
Édition MR
www.editionsmr.fr
Chambre 42
www.chambre42.editionsmr.fr