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THINK PIECE

屋敷豪太×大沢伸一

「今がこういう状況だからこそ、バンドをやりたい」

16 8/29 UP

photo: Shoichi Kajino
interview: Tetsuya Suzuki

O
「完全にそうですね。言ってしまえば、アマチュア時代のやり方だと思います。うちなんかはそもそもレコーディングしても、『どこからリリースするの?』という状況なので(笑)」
Y
「バンドならではのことかもしれませんが、ライブをやって初めて分かることも多いんですよ。お客さんの反応や自分達が演奏した感覚で、作った曲が思ったより良かったり逆に悪かったりして、それをもって曲を改善していくことで、ようやくバンドサウンドが完成するというか。それはリハーサルスタジオでやっているだけでは分からないことなんですよ」
──
AMPSのライブはオリジナルの楽曲がほとんどだと思いますが、どのように楽曲制作をされているのですか?
O
「もともとはリハーサルスタジオでできるものしかやらないというスタンスだったのですが、2回目のライブぐらいからはプリプロダクションの段階からみんなで作業するようになりました。当初から打ち込みなどでダンスの要素は取り入れていきたいとは思っていたのですが、それをいきなり現場でやるのは難しいので、プリプロの段階である程度予想して組み立てるという方法を取るようになりましたね」
──
その部分はDJ/トラックメーカー的な要素も含まれていますよね。
O
「そうですね。僕、本当はクラブでライブをやりたいんです。今のところ、ライブハウスのお客さんは僕らのライブを棒立ちで見ているんですよ。『何この変な音楽?』みたいに(笑)。その反応が正常だと思いますし、全く問題ないのですが、クラブのお客さんははじめから踊りにきているじゃないですか。だからそういう人達の前でAMPSがライブをしたら、どんな反応があるのかが気になっているんです」

Y
「僕も実はもともとライブハウスではあまりやりたくない方なんです。みんながステージをジーっと観て、曲終わりには拍手をして・・・というのではなく、踊っている人がいたりバーで飲んでいる人がいたり、もっとワイワイとした自由な空間でやりたいんですよ。そもそもドラマーになったのも、もっとみんなに踊ってほしいという気持ちからでしたしね」
O
「90年代には一瞬だけライブハウスもクラブ感覚というか、もっと自由な雰囲気があった時期もあったと思うんです。でも結局それはライブハウスのシーンには根付きませんでしたよね。僕がMONDO GROSSOで上京してきて最初にやったライブでは、あまりにお客さんが狂喜乱舞している様を見て、やっている僕らがびっくりしてしまったくらいでした。でもそれからbirdらをプロデュースするようになって、ライブする場所がホールになると、やっぱりそうはいかなかった。演者が観客を先導して手を振らせるような、コール&レスポンス的なことが求められる雰囲気があって、僕としてはそういうものが嫌になってしまったんです」

 

──
AMPSのライブはそういった要素が一切排除されていますよね。
O
「そうですね。今のライブは全体的にアットホームな雰囲気があるように感じるのですが、昔はライブってもっとシリアスでちょっと怖いものだったじゃないですか。結局、今求められているのは暖かい共感や共有なんですよね。でも僕らがやりたいことはそれではないし、そもそもAMPSの音で一曲終わった後に『今日はみんなありがとう~!』なんておかしいじゃないですか(笑)。僕ら自身も答えがあってやっているわけではないですし、みんなに理解してもらおうという気持ちもないんですよ。逆に『訳が分からない』と言われた方がいいですね。訳が分からないけどかっこいいものってたくさんありますし、AMPSもそういうものになれればいいなと思うんです。まだ、ただ訳が分からないだけのものですけどね(笑)」
Y
「”訳が分からないけどかっこいいもの”っていいよね。それに、観ている人もそれを解釈しようとしてくれなくていい。DUBOFORCEではいとうせいこうがポエトリーリーディングをするのですが、メロディがあるわけでもない彼の言葉に僕らが刺激を受けて演奏していくんです。観ている人はそれを全部理解する必要はなくて、家に帰ってからもいとうせいこうが発した言葉の一部分や、その時の場の雰囲気が少しでも頭に残っていてくれたら、それでいいと思うんですよ。全部理解しようとするから、取っ付きにくいものに感じてしまうんじゃないかな」

O
「今はもっと分かりやすくパッケージングされたものに慣れてしまっている人が多いんだと思います。音も、ライブの流れも含めて。ここでみんなで手を上げて、ここでジャンプする、みたいな(笑)。そういう文化のアンチテーゼとしてクラブカルチャーがあったのに、今やクラブすら同じ状況になってしまっている。それに対する反発がAMPSの活動に繋がっているのかもしれません。今も歓声をもらえればもちろん嬉しいですが、客席がシーンとしていても全然怖くないんですよ。僕らが表現しているのは”行き場のない怒れる魂”なので(笑)」
──
コマーシャルになり過ぎたものは、聴く人の心の何かを埋め合わせるような、本質的に共感できるものにはならないですよね。その点AMPSやDUBFORCEの音楽は、お二人の内側にある感情をシリアスかつピュアに表現されているものですよね。
Y
「コマーシャリズムの流れはどの時代にもあるものですが、エンターテイナーとアーティストは全く違うものですから。『お客様は神様です』というスタンスのエンターテイナーもそれはそれでいいですが、僕らがバンドをやっているのはまず自分にとっての刺激が欲しいから。それを好きだったらライブに来てくれればいいし、それで無理だったら無理で仕方ない。お客さんのためにやっているというより、自分のためにやっているんです。でももしそこに共感してくれる人がいたら、それほど素晴らしいことはないですね」
O
「僕らはライブでお客さんに対して親切なことはできないですが、来た人達がどうしたらまたライブに足を運んでくれるかなとは考えるんです。豪太さんもおっしゃったように、一回来て嫌だったら仕方ないですよ。でもすごくいびつなものだったけど、どこか刺激的だったなと感じてくれたらまた観に来てほしいです。これって何も珍しいことではなく、ライブってそもそも昔からそういうものじゃないですか」
Y
「そうだよね。大沢くんも僕も、きっと今がこういう状況だからこそバンドを、ライブをやりたいんだよね」

 

「CUE vol.2」

日時:2016年9月6日(水)
OPEN 19:00/START 20:00
会場:代官山UNIT
東京都渋谷区恵比寿西1−34−17 ZaHOUSE
料金:前売り4,000円(税込/1D別途)
当日5,000円(税込/1D別途)
前売り購入

出演:
■AMPS
SHINICHI OSAWA (G/Syn)
HARUHIKO HIGUCHI (Ba)
MASUMI SAKURAI (Dr)
MISUHARU KITAGO (G)
ANNE FUTAGAMI (Vo/G)

■DUBFORCE
GOTA YASHIKI(Dr)
AKIHITO MASUI(Trb)
DUB MASTER X(Mix)
SEIKO ITO (Poetry Reading)
WATUSI (Ba)
KAZUSHIGE AIDA(Gt)
EMERSON KITAMURA (Key)
AKIRA TATSUMI (Sax)
SAKI (Tp)