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THINK PIECE

What is "Pacemaker"?

開発者が語る、話題のオーディオプレイヤー
「Pacemaker」の真実。

08 7/11 UP

Photo:Hiroyuki Yamada Text:Hiroshi Yamamoto

僕らはあくまで音楽優先主義

──
お2人の会社はペースメーカー以外に、何か作っているのですか?
M :
「プロダクトとしては、ペースメーカーのみになります。ペースメーカーをベースに、ミックスを行うためのアプリケーション、そしてミックスした曲を投稿し、不特定多数の人々とシェアできる大きなラジオステーションのようなホームページもあります。もちろん、プラグインやポータブルスピーカー、バッグやプロテクトケースなどといったペースメーカー専用アクセサリーも作っていきたいとは思っています」
O :
「僕たちの会社は2006年の立ち上げ以降、ペースメーカーの開発に集中してきました。実際、2年という短期間で、これだけのクオリティの高い商品を生み出せたのは、僕らが15人程度の小さい会社だからです。より良いアイディアが出れば、すぐに対応できますからね」
──
ペースメーカーを作るというアイディアがでてから、そのための環境作りの経緯についても教えていただけますか?
M :
「当初は共に他の仕事を抱えながら、ペースメーカーの計画を進めていました。いざ、会社を立ち上げ、本格的に開発するために、融資してくれる会社を探したんですが、なかなか見つかりませんでした。こういったハードを開発することは、とてもリスクの高いことですからね。でも、僕たちはペースメーカーの可能性を信じていたし、諦めたくなかった。スウェーデンのベンチャーキャピタルへペースメーカーに対する情熱を伝えて、やっと出資を受けることができました」
──
1つのことに特化する、という意味でゲームに特化している任天堂のビジネスモデルと近いように感じるのですが。
R :
「それはとても面白い比較ですね(笑)。マイクロソフトのXbox360やソニーのプレイステーションとは違い、任天堂のハードウェアは人々を楽しませることへの情熱を強く感じさせます。僕らの音楽に対する情熱と、近い部分はあるかもしれません」
──
ペースメーカーを初めて見たとき、既存のオーディオプレイヤーとはまったく異なるプロダクトだと、直感的に感じました。
J :
「iPodやiTunesは、僕らにとってとても革新的なハードであり、ソフトでした。アップルに限らず多くの企業のことは、とても尊敬しています。ですが、僕らはあくまで音楽優先主義。だからこそ、ペースメーカーに音楽を楽しむための多くのことを詰め込むことができたんです」

 

会社の大小ではなく、ペースメーカーのユーザーを満足させたい

──
いずれ、子供たちがゲームを楽しむようにペースメーカーを手にするようになれば、今後の音楽業界が大きな発展をするような気がします。
O :
「確かにそうですね。ロックでいうギターのように、ペースメーカーはダンスミュージックというジャンルを飛躍させる鍵になってくるでしょう」
M :
「本当は多くの人々に無償で提供したいくらいなんです(笑)。多くの人が持ち、使うことで、どんどん新しい音楽が生まれていく。さらに子供たちが持てるようになれば、新たなムーブメントは必ず起こると確信しています」
──
将来的にはペースメーカーそのものを進化させたり、新しいミュージックデバイスを作ったりする予定はあるのですか?
M :
「それは企業秘密だから、多くのことは言えません。ただ、現在はソフトウェアを、ユーザーの意見を取り入れながら、定期的にアップデートさせています。一方で、ハードとしてのペースメーカーは、今すぐに進化させるつもりはありません。ペースメーカーは高価な物であるし、多くのエンジニアやオーディオのスペシャリストの意見を取り入れている。もちろん、現在の完成度の高さにも自信を持っています。だからこそ、新たなミュージックデバイスを作るのではなく、ペースメーカーを充実させるための周辺機器やアクセサリーを制作していきたい」
──
人と音楽との関係を深めるために、ペースメーカーをより多くの人々に広めていきたいのですね。結果、会社が大きくなれば良い、と。
O :
「もちろん。僕たちのアイディアは、音楽に対する情熱から生まれてくる。だからこそ、僕らのように音楽を愛する人々に、クオリティの高いプロダクトを提供していきたいと思う。ただ、音楽は常に進化していくもの。だから、僕らも常に革新的であるように努力し続ける必要がある」
M :
「僕らは常に音楽の環境の変化には、敏感に反応するようにしている。機能やデザインのみならず、音楽のデジタル売買など。すべてのことを知り、理解することで、次なる変化への準備をする。僕らは常に革新的でいるべきだし、そうあることで新たなアイディアも湧いてくる。会社の大小ではなく、ペースメーカーのユーザーやそのコミュニティにいる人々を満足させていきたいんです」
O :
「僕らが住んでいるスウェーデンの人口は、全国民合わせても東京の人口くらい。けれど、プロダクトのクオリティを重視する部分や、優れた物作りに対する意識は、とても日本と共通していると思うんです。そういった意識こそがスウェーデンの歴史であり、遺伝子でもある。是非、このペースメーカーを通じて、そういう部分を感じてもらいたい」