honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

Daisuke Kojima

等身大で「音楽」と向き合った最新アルバム
『I always think about you』

09 12/14 UP

Text: Tetsuya Suzuki

成熟と洗練を併せ持ったニューアルバム『Luminous Halo〜燦然と輝く光彩〜』が好評のポート・オブ・ノーツ。
そのギタリストである、音楽プロデューサーとしても活躍する小島大介’のソロアルバム
『I always think about you』が素晴らしい。自身のギターをメインとしながら、
ときにオルタナティブなサウンドを鳴らし、ときにメローな旋律を奏で、
さらに、シーンのカッティングエッジに漂うカオティックな気配をも捉えた実に多層的な、
それでいて親しみやすい音楽。実に聴きごたえのあるギターインストアルバムとなっている。
この傑作を引っさげて、畠山美由紀、井上薫、下田法晴、
そして藤原ヒロシらが参加するライブイベント『Fine Angle』も開催。
新たなステージに立った小島大介’が目指す「音楽」とは?

 

──
ポート・オブ・ノーツとしては、自分たちなりに「正統派のポップス」を追求したアルバムをリリースしたのに対し、一方のこのソロアルバムでは、そのポート・オブ・ノーツにも以前はあったオルタナティブなニュアンスや質感が色濃く反映されている気がします。
「ポート・オブ・ノーツの場合はやっぱり(畠山)美由紀ちゃんと曲を作るというのが前提になるし、そうするとポート・オブ・ノーツとしての世界観を優先させていくことになるんですね。だからこそ、やり甲斐もあるわけですが、やはり自分のソロでは今の自分の音楽が自然に凝縮されていく。なので、2つを分けて考えているというより、放っておくとこうなる、という(笑)。ただ、今回はポート・オブ・ノーツとソロの楽曲を同時期に並行して書いていたので、その対比は自分のなかでもハッキリしていたかもしれませんね。ポート・オブ・ノーツにはないアンダーグラウンドな要素、今言われたオルタナティブな部分というのが一気にこっちに来ちゃったような。とはいえ、メロディアスなギターインストもソロ作には多いと思うのでそのへんも含めて自分らしいアルバムだと思います」
──
今作に特徴的なのはクリスタルなトーンのサウンドによる清涼感のなかにロック的なパッションがほのかに香るグルーヴ感、だと思うのですが、思えば、小島さんは一貫してこの「音」を追求していたんだなと改めて認識しました。
「ちょうど、このアルバムを作り終えたときにkings of convenienceの新譜を聴いたのですが、自分と似てるというわけではないけれど、繊細さのなかの強さ。あるいは、クールで優しいんだけれど、その奥に熱いものが秘められている雰囲気。そこには惹かれましたね。多分そうした音楽が好きなんだと思います」
──
レコーディングはどのように?
「今回はドラムとパーカッション以外はすべて自分で演奏したんです。なので、ほぼ、ひとりで最初から最後まで作った感じですね。マスタリングまで自分でやりましたから。そんな風に一人で音楽をつくるということに関しては、このアルバムで極めたかな、と思います。自分だけだとやっぱり気が楽というか(笑)、すきなだけ突き詰めていけるんですよね。自分のイメージ通りに曲が仕上がるタイミングを一人で待つ、というか。最近、写真を撮るのも好きなんですが、なんかあるじゃないですか、良いのが撮れるタイミングって。狙うとこないけれど、忘れていると突然来る、みたいな(笑)。それと一緒で、なんか『良い曲できそう!』って閃いた日に曲を書いて、それで溜まった曲がアルバム1枚分になったという感覚。だから、以前に比べてソロアルバムを作ることに対して気負いがなくなったとは思いますね。マーケットがどうとか、トレンドがどうとか、一切気にならなくなったし、曲作りだけでなく、ライブも日常の延長にある感じで」

 

──
それは、自身のレーベルからリリースするようになってからですか?
「そうだと思います。今は音の出し方も変わってきて、前はリスナーの反応を予想するというか、そういう感覚もあったんですね。『もっと売らなきゃ』とか(笑)。今は本当に自分の好きな音を自分のタイミングで出している。今回は『別に売れなくても良いよね』って自分に言い聞かせて作ったら、今までで一番満足できるものが出来たという。分かってはいたんですけれど、今回はようやく吹っ切れた感じです」

──
音楽をより身近に感じる環境なり、それが作品に良い影響を与えたということですね。そして、その環境の変化がライブにも大きな影響を与えた。
「ライブに関しても、全部自分で責任を取るというのを意識していて、それがバンド編成であろうと、弾き語りだろうと、自分が考える良い音楽をお客さんに届けたい、という。それが、ゲストをたくさん呼ぶようなライブであったとしても、例えばmy spaceで自分のページをつくるようなもので、いろんな人達、つまり僕の『友人』たちに参加してもらったとしても、そのページを作るのは自分自身なわけで。それで、その『友人』同士が繋がって、お客さんとも一緒に繋がっている場所が作れれば、と思うんです」
──
それが、間近に迫った小島さんの主宰するイベント『Fine Angle』なわけですね。
「そうです。僕と関わっているミュージシャン、アーティスト同士が僕の企画したライブを通じて繋がることで、ジャンルを超えた、それこそオルタナティブなものが表現できたらいいと思うんです。それは別にアンダーグラウンドなシーンを作りたいというようなことではなく、とはいえ、いわゆるポップスでもない、ロックとかダンスミュージックといったカテゴライズもできない、でもそこにいる皆が幸福感を味わえるような、そんなイベントにしたいですね」